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ジャレスお悩み相談室

ジャレス視点に

 ジャレスがアメーヌの学校を訪れて、二日目を迎えた。


 机の上に、鉄の茶瓶と人数分のカップを用意する。カゴにはクッキーなどの焼き菓子を入れて。


「何をやっているの、アンタ?」

 呆れ顔のエステルが、「しょうがない聞いてやろうとばかり」に尋ねてきた。


「見りゃあ分かるだろ? 進路指導だよ」


 個人的に悩み相談所を作ったのである。


「こんなご時世だろ? 冒険者でもロクナ仕事がない。『マジで冒険者で終わっちゃうのボクちゃん!?』って考えているヤツだっていそうだろ?」

 自分を抱きしめながら、ジャレスはふざけた。


「進路指導ってお茶が出るの?」


「オレ様が飲みたいんだよ。おまえらにやるのはついでだ。ついで」

 味見と称して、ジャレスは焼き菓子とお茶をたしなむ。

 我ながら上出来だ。酒をフレーバーにできれば、もっとよかったが。


「冒険者になりたくない人なんて、いるわけないでしょ。冒険者は一定の需要はあるわよ。つまらなくても、誰かの役に立っているわ」


 根っからの冒険者気質なエステルは、ジャレスの発言に否定的だ。彼女はこれでいい。


 ただ、他の連中はどうだろう。そこまで意識が高いかどうか。


「そう思える奴だけじゃねえ、ってワケよ。人間は心が弱いからな」

 ジャレスもジャレスなりに考えている。


「相談に乗って欲しかったら来ればいい。できれば、こんな相談所なんて利用しない方がいいけどな」


 一人一人面談を行うため、他のメンバーはグラウンドで自習を許可した。


「行きましょマノン。付き合っていられないわ」

 エステルが、マノンの腕を引く。


 マノンは何か聞きたそうだったが、エステルが強引に連れ去ってしまった。


 気が変わったら、相談しに来るだろう。


 お悩み相談者の第一号は、なんとリードだった。

 リザードマンの男子生徒は何を聞きたいのか。


「はいはい、お名前をどうぞー」


 知っているが、一応名乗ってもらう。



「リード・レーゼンビーだ。生徒相談所だって?」

 ドシッと、リードは腰を下ろす。



「おうよ。進路だけじゃなくていいぜ。恋愛相談でも何でも聞いてくれたまえ」


「仮にも魔王クラスのモンスターに、恋の悩みなんて打ち明けるヤツなんていないだろ?」


 それもそうだ。


「よくオレ様に相談しようと思ったな。てっきり、敵対すると思っていたぜ」


「前まではな。けど、アンタはオレの太刀筋を読んで、被害を最小限にしていた」


「気づいてたのか」


 リードが斬りかかったときは、まずいと思った。

 近くにいた生徒になるべく当てまいと、ふざけたフリをしてリードの注意をそらしたのである。


「オレはあのとき、気にも留めてなかった。ケガする方が悪いんだって、威張っていた。だが、アンタの戦い方を思い出して、考えを改めた」



「そういうお前さんは、相談があって来たんだよな?」



「ああ。実はな」

 リードは、机にバンと両手を突く。




「冒険者が儲からないって聞いて!」



 この手の質問は、来ると思っていた。


「ああ。増えすぎなんだよなぁ。冒険者が」


 今や冒険者は、数が増えすぎている。

 それだけではない。質も悪くなってきた。


 ロクに訓練を受けない粗悪な冒険者が、依頼主に迷惑をかけるといったコトも度々起きている。


 いつぞやのマノンのように。

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