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【二部開始】転生令嬢は推しキャラのために…!!  作者: 森ノ宮明
第一部 王都で

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65/120

65.暴露します


 セルディの贈り物を各自連れてきた使用人に渡し終わって席に戻った頃、集められた人々はニーニアが一度たりとも席から立ち上がらなかった事にようやく気付いた。

 なんとも言えない緊張感がじわじわと広まっていく。


「ふふ、話題を全部セルディ様に奪われてしまいましたわね」


 ニーニアは静まり返った空気の中、にこやかにそう言うが、目は決して笑ってはいなかった。


「申し訳ございません。こういう場に来るのは初めてなものですから、勝手がわからず……」

「気にしないで、今回は交流を深めるのが目的で開かれた会ですもの。まさかあなたのようなお小さい方がここまで注目を集めるとは思ってもいませんでしたが」

「まぁ、お恥ずかしいですわ」


 子供はすっこんでろ、と遠回しに言われたが、セルディはニコニコと笑って返す。

 まだ勝負はこれからだ。


「あら、少し遅れてしまったようだけれど、本日のお菓子がようやく届いたみたいね」


 ニーニアが視線を向けた先にはたくさんの使用人達が各自トレイを持って並んでいた。

 その上には綺麗なケーキやお茶が乗せられている。

 セルディはさっとレオネルと視線を合わせた。

 レオネルも周りに気付かれない程度に軽く頷く。


「本日は今王都で人気が出ているパティスリーから取り寄せましたのよ」

「まぁ、繊細な飴細工……。とても綺麗ですわ……」

「もしかしてあそこじゃないかしら、もうすでに半年先まで予約がいっぱいだって言う……」

「ブランデーケーキもご用意させて頂きましたので、お好きな方をお取り下さい」

「さすがカラドネル公爵家だ」


 皆が目の前に置かれるケーキに夢中になり始めた時、セルディの横に立った侍女が動いた。


「あっ」


 そんなわざとらしい声を共に、トレイの上のお茶をセルディの方へと傾け――。


 ――バシャ


 カップ共々、中身はセルディが座っていた椅子へと落ちた。

 しかし、セルディはすでにその椅子の上にはいない。


「セルディ、大丈夫か?」


 セルディの身体は紅茶がかかる前にレオネルによって助け出されていた。

 一瞬すぎてセルディにも何が起こったのかはわからない。

 それぐらいの速度で気づいたらレオネルの膝の上に乗せられていたのだ。


「あ、だ、大丈夫デス……」


 こういう事が起きるだろうというのはチエリーによって予想されていたので、もしもの時にはレオネルに助けてもらうよう言われていたのだが、まさか助けられた先がレオネルの膝の上だとは思いもしなかった。

 セルディの頬はまた赤くなる。


(普段だったら絶対にこんな事をしないレオネル様が、こんな触れ合いもしてくれるなんて……)


 セルディが天にも昇れそうなほど感動している姿を横目に、ニーニアの目は鋭く尖っていく。


「も、申し訳ございません!!」


 ふと見れば、侍女は土下座をしていた。

 その土下座の方向がセルディではなく、ニーニアなのは何故なのかセルディはちょっと聞きたくなったが、事を荒立てても仕方がないと口を閉じる。


「わたくしの侍女が申し訳ないことを……。ドレスにお茶はかからなかったかしら、もしよければ休憩室で……」

「レオネル様が助けて下さったので大丈夫ですわ」


 ニーニアの台詞を途中で遮り、セルディはきっぱりと誘いを断った。

 二人を分断させて、本当に何をするつもりなのだろう。

 どうあっても二人の距離を離そうとする行いに、セルディは絶対にレオネルとは離れないぞ、と決意を新たに拳を握る。


「そうですか……。あなた、椅子を取り換えてきなさい」


 お茶を零した侍女はニーニアの指示に、さっとセルディが座っていた椅子を持って去って行った。


「申し訳ありませんが、少しの間立ってお待ち頂いてもよろしいかしら?」


 これもまた意地悪だ。


(いつまでも戻ってこないやつだコレ!!)


 コルセットを嵌めた貴族令嬢は貧血で倒れやすい。

 そうでなくても普通の子供であればいつまでも立たされていたら疲れて癇癪を起こしてもおかしくない。

 ニーニアはどうあってもセルディに何か失敗をさせたいようだった。


「それには及ばない。セルディは私の婚約者だからな、このまま一緒の席に座っていても問題ないだろう」


 ざわり。

 ニーニアとのやりとりに耳を欹てていた貴族たちはレオネルの言葉にどよめいた。


「ま、まぁ、レオネル様がとうとうご婚約者を?」

「ということはサイロン様も婚約されたのかしら……」

「しかし、正式な発表はされていなかったはずだが……」


 ざわざわと収まりがつかなくなり始めた場を、ニーニアはパシリと扇を叩いて静まらせた。

 こういう手腕はさすがは高位貴族。セルディは素直に感心した。


「レオネル様、わたくしもそのようなお話、今日初めて聞きましたわ。いつの間にそのようなお話に?」

「そうだな……。フォード子爵がポンプを陛下に献上した後くらいだったか。陛下がどうかと提案して下さってな」


 そう話すレオネルに、また周りの貴族たちはこそこそと話し出す。


「そんな頃から……」

「さすがは陛下だ。ご慧眼がある」

「レオネル様は忠義に厚いお方ですから断れなかったのでしょうね……」


 純粋に驚く者、陛下に賛辞を送る者、同情する者。

 ここでも色々な話が聞こえてくるが、レオネルは気にせずに話を続ける。


「その後、母にも顔合わせをしてもらったが、セルディは年齢以上に賢く、母にも気に入られてな。話を進める事にしたのだ。正式な発表はセルディが成人してからになるが、心に留めて頂けると嬉しい」


 だからもう余計な縁組は持ってくるな。

 レオネルが内心で呟く言葉をセルディはしっかりと聞いた。

 どうも近衛の執務室にまで見合い用の絵画を持ってくる人間がいるらしく、セルディを婚約者として紹介するという話をした時、本当に良いのかと心配するセルディに対してレオネルが自分の利点として挙げた事の一つだった。


『これで仕事に集中できるようになるはずだ』


 そう言ったレオネルは清々しい表情をしていたが、セルディは思う。


(今度は私くらいの子供の絵画を持ってこられる事になるかも……)


 そのセルディの勘は後々当たる事になるが、その事をレオネルはまだ知る由もなかった。


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