表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二部開始】転生令嬢は推しキャラのために…!!  作者: 森ノ宮明
第一部 王都で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/120

58.推しキャラは癒しを求める


「ふう、とりあえずはこんなものか」

「そうですね。詰められるところは詰められたと思います」


 セルディ達との話し合いの後、執務室へと戻ったアレンダークとグレニアン、そしてレオネルは大きなテーブルに書類を広げて再度話し合っていた。

 当初は洞窟の話を詳しく聞き、調査を入れる程度だったはずが、思いも寄らない提案を次々にされてしまったため、予定を調整せざるを得なくなったのだ。


「まさか調査をする方法まで提案してくれるとはな」

「私だって考えていたじゃないですか」

「死刑囚を先頭に立たせて調査なんて出来るか!!」


 叫んだグレニアンに同調するようにレオネルも頷く。

 アレンダークの発想も悪いわけではないのだが、そのやり方は物騒過ぎる。

 ただでさえ前王弟のせいで今は王家の心象はよくないのだから、死刑囚を使った実験を行ったなどと国民にバレたら今度こそ民からの反乱が起きるだろう。


「はぁ、一番楽だと思いますけどねぇ。もし死んだら執行人へ払う給金が減らせるじゃないですか」

「恐ろしいことを言うな……」


 頭が痛い、とグレニアンは額に手を当てる。

 レオネルも心の中だけで何度も頷いた。


「それで、アレンダークから見てセルディ嬢はどう見えた?」

「とても頭の良い子だと思いましたね。私も年の割に落ち着いた子供時代を送りましたが、セルディ嬢のような発想力はありませんでした」

「ああ。あんな子供、そうそう見つけられるもんじゃないだろう。いっそ俺の妃候補にしても……」

「おい」


 扉の横に黙って立っていたレオネルもこれには口を挟んだ。


「人の婚約者に手を出すな」

「ふん、まだ仮だろう? デビュタント前の子供との婚約など俺の権限を使えば……」

「民からだけじゃなく、側近からの信頼も失いたいのですか?」

「冗談だ」


 レオネルがわざとらしく敬語を使って微笑んでやれば、グレニアンは降参とばかりに両手を上げる。

 まったく、性質の悪い冗談だ。

 レオネルは口をへの字に曲げた。


「それで、婚約者だと明言したということは、セルディ嬢から了承してもらえたという事で良いんだな?」


 にやりと笑ったグレニアンの顔を見て、もしかしたら聞きたかった事はこれなのかもしれないと、レオネルは内心で辟易する。

 何せ実家から帰ってから何度もそれとなく聞かれた内容だったからだ。


「……俺でいいらしい」


 照れもあり、普段よりもぶっきらぼうで小さな声での返しだったが、グレニアンには聞こえたらしい。


「そうか! よかったじゃないか!」

「目出度いですねぇ、羨ましい限りですよ」


 にこにこと笑って言うアレンダークの発言は何故だか素直に受け止められない。


「……まさかここにきてシル伯爵の話が出てくるとはな」

「本当に。あの娘は今はどうしているのでしょうねぇ、そろそろ子供が生まれる頃でしょうか」

「……まだ生きているのか?」

「さぁ」


 酷い別れ方だったとはいえ、過去に婚約者になっていた女に対してこの反応。

 アレンダークの血は自分たちとは別の色をしているに違いない。


「私にもセルディ嬢のような聡明な婚約者が欲しいものです」

「くっ……」


 アレンダークの言葉にレオネルは思わず笑ってしまった。

 あの子供は聡明というには少し抜けすぎている。

 読書は好きなようだが、割とお転婆で、気になると木にまで登ろうとするような、そんな子供なのだ。


「婚約者殿は何を思い出して笑っていらっしゃるのやら」

「ふっ、いやなに、普段の姿を思い出すと聡明とはほど遠いものでな」

「おやおや、レオネル様はやはり幼女趣味が」

「なんでそうなる」


 睨み合うように会話を続けていると、グレニアンが話を打ち切るように手を叩いた。


「二人の仲がよくて何よりだ」

「……」


 これはセルディとレオネルの話ではなく、アレンダークとの話なのだろう。

 レオネルもアレンダークも、それがわかっているから、何も言わずに沈黙で返した。

 仲が悪いわけではないが、良いと言われるのも嫌だ。


「それで、シル伯爵にはお前から話を持って行くつもりか?」

「ええ。未だに婚約者も出来ない私のことを申し訳なく思って下さっているのであれば、きっと良心的な価格で場所を貸して下さるでしょう」

「……そうか。それならばよろしく頼む」


 笑みを絶やさないアレンダークは恐ろしい。

 グレニアンもそう思ったのか、もはや何も突っ込まなかった。


「よく鳴く動物に関しては動植物の研究をしている者が研究所にも居るはずですので、一度問い合わせをしてみます」

「ああ、その返事がくるまでの間にフォード領の守りは固めておこう。騎士団への連絡はレオネルに頼んだ」

「わかった。口の堅いものを選出するよう言っておく」

「……大丈夫なのか」


 心配そうに聞かれ、レオネルは肩を竦めて軽い口調で返した。


「なるようにしかなんねーよ。さすがに陛下の命令を無視する事はないだろうしな」

「そうだな。もし無視するようであれば、今度はお前が王都の騎士団を纏め上げろ」

「はぁ……、俺は今のままで十分なんだがなぁ」

「いつかは将軍の跡を継ぐことになるだろう、その前の練習だとでも思えばいい。お前以上の騎士を俺は知らないしな」


 グレニアンの苦笑いを見ながら、レオネルはため息を吐く。

 最近、レオネルは王城の守護を担当する第一騎士団長との相性の悪さに悩まされていた。

 最初はお互いに敬意を持った対応をしていたはずなのだが、どうもレオネルの方が爵位が上で、しかも父親は北の前線で将軍職に任命されていて、更には模擬戦でレオネルが勝ってしまった事から、相手の妬みを買ってしまったらしい。

 ここのところ、何かを頼むと嫌味を言ってきたり、自分達は近衛と違って忙しいんだと文句をつけたり……。

 自分の地位が脅かされると思っているのだろう。

 レオネルは戦時には父の跡を継いで将軍という職には任命されるかもしれないが、最終的には辺境伯になることが決定している。

 第一の騎士団長になりたいとは考えてもいないというのに……。


 近衛隊長と第一騎士団長の二人がそんな感じになってしまったものだから、近衛と第一騎士団の間までピリピリするようになってきてしまった。

 出来る事ならあまり関わりたくはないのだが、これからはフォード領の事も含めて話し合う機会は絶対に増える。

 騎士というものは時に話し合いにも力技が必要な事もあるから、文官に伝令を任せてばかりいる訳にはいかない。

 用事がある度に第一騎士団長の嫌味を何度も聞かなければならないのかと思うと、今から憂鬱になる。


「とりあえずそっちの方は頑張ってくれ」

「……了解」


 さっき別れたばかりだというのに、レオネルはセルディに会って癒されたいと強く思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「人の婚約者に手を出すな」 「……俺でいいらしい」 ……素敵なデレにキュンとしました。 セルディに伝えたい!w [気になる点] 王都の社交がどのようになるのか、今からとても楽しみです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ