表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二部開始】転生令嬢は推しキャラのために…!!  作者: 森ノ宮明
第二部 王都から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/120

38.推しキャラは走る


 古書店のある路地裏から出れば、そこはシェノバ通り。

 ここは大きな通りだが、店先でもないこの場所に馬車を留めおくのはさすがに邪魔だろう。

 レオネルはダムド家の家門の付いた馬車に近づき、馬の面倒をみているクリストフと、馬車の護衛をしているラムに声をかけた。


「クリフ、悪いが少しの間この辺りを流しててくれないか? ラムはこっちの護衛に回ってくれ」

「了解しました」

「はい、わかりました。どのくらいの時間にしましょう」


 ラムが敬礼をし、クリストフは馬の首を撫でて頷く。

 レオネルは少し悩んだ後、口を開いた。


「そうだな……。半刻後にまたここに……」

「……レ…………様!!」


 悲鳴ような声が聞こえた瞬間、レオネルは瞬時に踵を返し、路地裏へと駆け戻った。

 少しの間だった。

 三分もない距離、離れていただけ。

 古書店に関しては事前に念入りに調べていた。

 特になんの変哲もない店である事は間違いない。

 貴族の後ろ盾があるわけでもなかった。

 店主とも話をしたが、本の収集家である店主が集めた品を自分で写本し、それらを売っているだけの善良な店だった。

 店自体も不自然なところがないか調べ、準備は万端に整えていた――はずだった。


「セルディ!!」


 レオネルがこじ開けるように店に入れば、そこには謝りながらチエリーを必死で掴んでいる女が居た。


「レオネル様! お嬢様が! カザンサ侯爵令嬢と奥に!!」

「わかった……!」

「ああ! 待って! ダメ、行かないで!!」


 チエリーの言葉に、二人を押しのけて店の奥へ向かおうとしたレオネルだったが、それをチエリーにしがみついたままの女が阻んだ。

 女はなりふり構わずにレオネルの外套までも掴み、奥へ行かせまいと妨害してくる。


(クソっ! 通路が狭すぎる!)


 レオネルが苛立ちながら無理やり女の手から逃れると、後を追いかけてきたラムの姿を見つけ、叫んだ。


「ラム! ここは任せた!」


 ラムはすぐに状況を把握し、チエリーにしがみついたままの女に手を伸ばす。

 レオネルは先を見届ける前に奥へと進んだ。

 周囲にあるのは本だけ。

 セルディの姿は見つからない。


「んんーー!!」


 そこに、くぐもった声が聞こえてきた。

 レオネルがその声の元へたどり着くと、本の山の間に居たのは縛られた老齢の店主。

 レオネルはやや強引に彼の猿ぐつわを解いた。


「店主、ここに少女が来なかったか!」

「う、裏口! 裏口から出て行っちまった!」

「裏口?」


 そんなものは見ていない。

 レオネルが眉間に皺を寄せると、店主が続けて言った。


「そこの本棚だ!」

「は?! んでそんなとこに裏口なんて作ってんだよ!」


 苛立ち紛れに店主が顎で指し示した本棚へと近づく。

 すると、そこは確かに他の本棚とは違ってやや浮いており、本棚ごと開け閉め出来るようになっていた。


「こんなもんわかるか!」


 レオネルはこめかみに血管を浮かせながら外へと出る。

 扉は細い路地に繋がっており、馬車一台くらいなら通れそうな幅があった。

 すでにそこには誰もいない。


「クソがッ!!」


 そこら辺の壁を殴り壊したい気持ちになりながら、レオネルは必死で考える。

 あの侍女を尋問している時間があるか、この道がどこに繋がっているのか……。

 そして少しの間考え込んでいると、鳥の羽音が聞こえてきた。

 レオネルが勢いよく顔を上げる。

 そして、一匹の烏がレオネルの肩に乗った。


「お前は……」


 その烏の足にはいつものように手紙が括り付けられている。

 レオネルは奥歯を噛み締めながらその手紙を抜き取り、中を見た。

 小さな紙には地図が書かれている。

 この地図の星のマークが付けられた場所に、セルディが連れていかれたのだろう。

 ご丁寧に徒歩での最短ルートまで書かれている。

 レオネルは呻いた。


「あんのクソ野郎……ッ!」


 ここまでわかっていたという事は、セルディが誘拐される事を事前に把握していたということになる。

 影の護衛としては間違った行動ではないとわかっていても、レオネルの苛立ちは抑えきれない。

 そこには、守れなかった自分自身への怒りもあった。

 だが、この手紙が送られてくるということは、ヤニクがきちんとセルディを守っているという証でもある。

 レオネルは冷静になろうと大きく深呼吸した後、足早に古書店の中へと戻った。

 店主の縄を解いてから店を出ると、店の前には女を拘束したラムとチエリーがいた。


「お嬢様は!?」

「どうやら連れ去られたらしい」

「そんなっ!!」

「大丈夫だ、護衛はついてる」


 ショックを受けるチエリーを宥め、レオネルは拘束されながら泣いている女を馬車に放り込んだ。

 そのままチエリーにはクリストフと共にダムド家のタウンハウスに戻るように言う。


「わ、私も一緒に行かせて下さい!」

「ダメだ。足手まといになる」


 チエリーは、レオネルの言葉に悔しそうに唇を噛み締めた。

 目の前でセルディを誘拐されたのだ、責任を感じるのも無理はない。


「敵が何人居るかもわからん。チエリーとクリフはうちの騎士達にその女の尋問と、応援を頼んできてくれ」

「……承知致しました」


 いかにも渋々と言わんばかりだが、チエリーも自身の役割はわかっている。

 大きく息を吸い込むと、すぐにクリフと共に御者台へと乗り込んだ。


「ラム、この場所はわかるか?」

「……ここは、富豪だった商人の家主が妻に殺された屋敷ですね。買い手が付かず、長く空き家になっていた場所です」

「あそこか……」


 ラムの言葉に、レオネルもすぐに思い出した。

 王都でもそれなりに大きな屋敷だと言うのに、殺された家主の亡霊が出ると噂が立っていた。

 どうやらその屋敷はブルーノが購入したようだ。


「はっ、あの爺、残った個人資産で大きな買い物をしたようだな……」

「私も場所がわかりました。すぐに応援を頼んできます」

「頼んだぞ」


 話を聞いていたクリストフも場所がわかったのだろう、頷くとすぐに馬車を走らせた。

 ラムと共に馬車を見送ると、レオネルはラムと示し合わせたように走り出す。


(バーニーも連れてくるべきだったな……)


 走りながら、レオネルはそう考える自分に苦笑した。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!

続きが気になる方はブクマや評価、リアクションなどして頂けると嬉しいです!


次回予定日は1/19月曜日20時予定になるので、よろしくお願い致します!

更新が遅れる場合はX(旧Twitter)にてお知らせします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ