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【二部開始】転生令嬢は推しキャラのために…!!  作者: 森ノ宮明
第二部 王都から

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27.手紙を受け取ります


 研究所に訪問してから三日後、フォーナットは無事に仕事を再開したらしく、グレニアンからお礼の手紙が届いた。

 もちろん持ってきてくれたのは郵便屋ではなく、王からの使者である。

 セルディは突然の訪問に飛び上がって驚いた。


 慌てて手紙を見てみると、どうやらフォーナットは順調に魔石の研究を進めているらしい。

 セルディが思いついた魔石の砂との合金による魔力伝導率の実験も複数人の研究者が始めたとの事。

 もしこれが成功すれば使用魔石の量を大幅に削減できるかもしれない、とやや興奮気味の字で書かれていた。


 セルディは自分がグレニアンの期待に応えられた事を喜びはしたものの、まさか国王陛下直筆の手紙が送られてくるとは思っていなかったため、返事をどうするのか多いに悩んだ。

 いっそレオネルから返事をして貰おうかとも思ったが、チエリーにこれも経験だと鼓舞され、結果、いつもより何倍も丁寧な字で返事を書く事になった。


 貴族特有の飾り文字がプルプル震えているのはご愛嬌。

 もう一度書けと言われても無理だったため、そのまま使者の方にお渡しした。

 これで自分の仕事は終わっただろうと思って安堵している中、今度は別の手紙が差し出される。


「お嬢様、アウレリア様からのお手紙です」

「レリアから!?」


 セルディはさっきとは違い、気軽な気持ちで手紙を開いた。

 王都に来てから、セルディはアウレリアと何度も手紙のやり取りをしている。

 基本的には好みの本の話や感想だが、今回は違った。


「チエリー! レリアが一週間後に王都に来るみたい!」

「それは何よりでございます」


 セルディの喜びように、チエリーも表情を緩めてそう言ってくれる。

 どうやらアウレリアはカザンサ侯爵の用事に付いてくるらしい。

 その際にお茶会に参加する予定なのだが、セルディも一緒に参加しないか、と書かれていた。


「チエリー。フェルミエ伯爵夫人のお茶会に誘われているんだけど、どう思う?」

「フェルミエ伯爵夫人ですか……」

「手紙によると、夫人と子供が中心のお茶会をするみたい」


 貴族名鑑には、フェルミエ伯爵家の事は、領地は持たず、王城に勤める文官を多く輩出している家だと書いてあったが、社交活動をしていないセルディにはその人となりまではわからない。

 謎に詳しいチエリーに聞いてみると、チエリーは少し考え込んだ後に答えた。


「昔から中立派で有名なお家ですので、セルディ様が参加されても構わないと思います」

「本当!?」

「ただ、レオネル様には一度相談なされた方がよろしいかと……」

「あ、それはそうね」


 セルディは頷くと、その日の夕食時にレオネルに話して見る事にした。


「……フェルミエ伯爵夫人の茶会か」


 レオネルは少し考えた後、そのお茶会がどのような趣旨で行われているのかを教えてくれた。

 フェルミエ伯爵家は古参の貴族家の一つで、夫人は貴族家が減った現状を憂い、子供達を中心とした社交を積極的に行っているのだとか。


「夫人は子供に優しいと聞くから、セルディが一人で参加しても大丈夫だろうが……」


 レオネルが言い淀む。


「ダメ……ですか?」


 アウレリアに会いたい気持ちも勿論あるが、セルディは一人での社交というものを経験してみたかった。

 王族の婚約者だというのに社交活動に慣れていないのは大問題だと、アウレリアと接して気付いたのだ。

 苦手だからと諦めていては、レオネルの立派な婚約者にはなれない。

 セルディはこのお茶会を社交活動に慣れるための第一歩として参加したいと考えていた。


「ダメ、ではなけどなぁ……」

「レオネル様がダメだと言うのなら諦めます……」


 大分情勢が安定してきたとはいえ、まだまだ油断はできない状況だと聞いている。

 レオネルがダメという事を無理に通すつもりのないセルディはがっかりしながらもそう伝えた。


「いや、ダメという訳じゃない! ……いいぞ」

「いいんですか!?」


 セルディがあからさまに落ち込んだからだろうか、レオネルは焦った様子で否定すると、少しの間の後に許可をくれた。

 何か含みのある言い方だったが、許可は許可だ。

 セルディは喜びに目を輝かせた。


「……ああ」


 念のための問いかけにも肯定が返ってきた。

 これは大丈夫という事だ。

 アウレリアも一緒とはいえ、初めての一人での社交。

 失敗しないように頑張らなくては……。

 セルディがそう内心で気合を入れつつ、切り分けた魚のムニエルを食べていると、レオネルはさらっととんでもないことを言った。


「ただし、浮気はしないようにな」

「え?」


 何かおかしな言葉が聞こえた気がしてレオネルに顔を向けると、レオネルは真剣な表情で話を続けた。


「フェルミエ夫人は子供達の友好を広げる場として茶会を開催しているが、実際は自身の息子の婚約者を選ぶために子供達を集めているとの噂だ」

「な、なるほど……?」


 つまりフェルミエ伯爵夫人のお茶会は、集団でのお見合い会場になっているってこと?

 そんなところに婚約者のいるセルディが参加して本当にいいんだろうかと悩んでしまうが、折角アウレリアが誘ってくれたのだから、参加したい気持ちはある。

 そんなセルディの気持ちを察してか、レオネルは再度参加してもいいと言ってくれた。


「本当にいいんですか?」

「ああ。……だが、俺の婚約者として参加して欲しい」

「はい、それは、もちろん……」


 セルディは当たり前の事を何故言うのか、分からないまま頷いた。

 言葉としては嫉妬のようにも聞こえるが、レオネルの表情的に、念のための言葉にも聞こえる。


(うーん……。婚約者がいない人間だと勘違いされないように、って事かな?)


 セルディはとりあえずそう納得すると、食事を再開しているレオネルに合わせ、自身もムニエルを口に運んだ。


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