7-俺が人助け!?
「なぁ、太田。ちょっといいか?」
「なんだ、照岡か。なんか用か?これから野球があるから急いでるんだけど。」
「ああ、なら手短かに済ませる。」
善は急げ。まあ善だとは思ってないが。思っちゃいけない。これは俺が勝手にやりたくてやってることだから。
「それならいいけど。珍しいな、オマエが話しかけてくるなんて。」
「まぁちょっとな。」
コイツは今悩んでる。そして俺はそれを知っている。ヒーロー気取りみたいで好きじゃないが、困ってるのを知っててほっとくのも好きじゃない。
それに、今なら、少しは助けになれる気がするんだ。
「太田ってさ。」
…ここで、言わなきゃな。
「や、野球辞めたいんだろ?」
「っ!」
この反応は、当たってるのか?
「さっきの話がちょっと聞こえてて、俺も助けになれたらなーっと思ってさ。まぁあんまり関わりないヤツがなんだって話だけどさ。」
ほんと、柄にもないな。こんなこと。
「ま、待ってくれ。な、なんでそう思った。俺は確かにツライけど、野球がキライとは思ってないぞ?」
ああ、知ってる。お前の「野球に対する思い」の数値を見たからな。
ただ、
「お前は、卓球の方がやりたかったんじゃないか?」
「なっ!?」
そうこいつは、野球が好きだ。けど、それ以上に卓球が好きなんだ。
「お前の両親に何言われたか知らないけどさ、自分の思いはちゃんと伝えた方がいいと思う。」
卓球だって有名なスポーツだ。でも、親の勧めでやらせた野球で上手くいっているのに、子供が卓球をやりたいなんて言い出したら、親としては否定したくなる気持ちも分からなくもない。聞いた限りじゃ厳しすぎるとは思うけどね。
「…そうだな。あの2人も俺の両親も、俺が卓球の方が好きだなんて知らないからな。ありがとう、今度こそ、本当に吹っ切れたよ。」
「そうか。それなら、良かった。じゃあな。」
「お、おう。じゃあな。」
これ以上はお節介が過ぎるな。こっから先はアイツの力だ。あ、あと───
「友達はちゃんと選べよ。」
「は?」
…ほんとに、柄にもねぇなぁ。
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「友達を選べ?よく分からんが気をつけておくか。」
「…アイツ、なんで俺が卓球好きなの知ってたんだ?俺が卓球やってたのなんて、小学校の低学年位までだったのに。アイツ俺と小学校違うよな?」