4-俺が手に入れた能力!?
「な、なあフェア、さん」
「んー。ボクのことはフェアでいいよー!」
「じゃ、じゃあフェア。君はなんでも願いを叶えられるんだね?」
「ある程度の範囲内でならね!それで?お願いは決まった?」
なんでも、か。
別に俺は、今の生活が嫌なわけじゃない。もちろん平凡な「自分」には飽き飽きしてるけど、平凡な「日常」は願ったり叶ったりだ。自分は今みたいな日常を、のんびり暮らしていくのが楽しいと思ってる。
だから、今の日常にちょっとだけ夢を与えてくれる、そんな能力が欲しいと思った。
コミュ障を治す?それもいいけど、それは努力次第で何とかなるはずだ。自分から変わろうとしているってのも大きいと思う。
それよりも、もっと大切なこと。
…自分を変えてしまった原因に対して。
「ああ、願いは決まった。…俺は!」
─────!
「ほんとにその願いでいいんだね?それじゃあ、照岡輝さん、キミの願いは聞き届けられました」
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「キミに神の加護があらんことを…」
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「っ!」
目が覚めると、俺は自分のベットで寝ていた。
「ゆ、夢?」
さっきまでそこにあったような、そんな昨日の出来事。
アレは夢だったのか?
…というか、夢だったのだろう。
あそこまで非日常的な出来事だ。
アレを現実だと思うのは少し無理がある。
「俺も、少しは楽しい夢を見させてもらったよ」
起きようとすると、体のあちこちが痛む。
「き、昨日の喧嘩は夢じゃ無かったのか…黒歴史が一つ増えちまったな」
あの喧嘩も夢なら良かったんだけどな。
…くよくよしていても仕方ない。今日は休日、のんびりアニメとラノベとマンガ鑑賞だ。
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俺の休日の朝は遅くはない。5時半には起きている。できるだけ起きてる時間を増やして、趣味に時間を割くためだ。
夜遅くまで起きてるよりは、早く起きてなにかをするタイプだ。俺の数少ない財産の1つ、健康を守るためにね。
たまに、昼まで寝てたとか自慢げに言ってるやつがいるけど、理解できない。
確かに寝ているのも楽しいけど、もっと楽しいこともあるだろ?
まぁ人の好みは人それぞれ、か。
俺の朝食はパン。ご飯派の人からすると、そんなんで腹が膨れるのか?という代物らしいけど、俺には充分だ。6枚切りのパンをきつね色になるまで焼いて、バターを塗って食べる。パンのお供には牛乳を。
これが俺のいつもの朝食だ。
しんぷるいずざべすとぉ!
「ご馳走様でした。母さん。あれ、父さんは?」
今日は土曜日。父さんも休みのはずだけど、朝食の席に姿が見えない。
「言ってなかったかしら?今週は出張で帰れないみたいよ?」
「そうなんだ。いや、なんとなく気になってさ」
俺の家は1人っ子。父さんはごく普通のサラリーマン。
サラリーマンってのも大変だよな。夜も遅く、朝は早い。休日も家に居れないことがあるなんて大変だ。
そして、思い出した。
夢での出来事を。
『キミには相手のステータスが見える能力をさずけます!自分が視認している相手に向かってこう唱えてね!───』
「母さん…『力を提示せよ』」
「なにそれ?またアニメのなにか?ほどほどにしなさいよ?」
…変化、なし?
「か、母さん?なんともない?なんか、体に変化とか」
「もう、何も無いわよ。今日もどうせアニメばっか見る予定なんでしょ?いつも言ってるけど、ちゃんと勉強もしなさいよ?」
や、やっぱり、ただの夢だったのか…
「う、うん、分かったよ、母さ──」
その時、俺の頭に声が響いた。
『呪文、認証。個体名、テルオカヒカル。能力、力を提示せよ』
「っ!?」
男性でも女性でもない。抑揚のない、「声」。いや声ではあるが声ではない、なにか。
…コイツ!直接脳内に!?
さすがに声には出せないけど、ついやりたくなるよね。
あまりの出来事に頭が追いついてこない。ついでに言うと、俺程度の頭、では。
だから、こんなくだらないことを考えるのも無理はないさ。
現実逃避!バンザイ!