1-俺の物語の始まり!?
その日、俺は、「レベル」が見えるようになった。
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俺の名前は、『照岡 輝』。平凡な高校2年生だ。非日常とは程遠い、平穏な日々を過ごしている。テストは常に平均点。運動は苦手ってほどじゃないが、得意って程でもない。趣味と言える趣味もなく、得意なこともない。強いて言うならば、アニメとかラノベとか、そんな感じのが好きだ。その程度なんだよな。
え?誰に話してるのかって?今時の厨二病から抜けきれなかった奴なんて、心の中でだいたいこんなことしか考えてないのだよ。
みんなだって暇な時は、こんなこととか、曲がり角でバッタリ美少女と出会いたいなぁー、くらいしか考えてないでしょ?え?やらない?君たちの真の厨二病への道は長いようだね。
今日は金曜日、そしてホームルームも終わった。休日、長くはないが、平穏を味わうことが出来るって訳だ!溜めておいたアニメとラノベと漫画を消化するとしよう。
そんな小さな幸せを感じている俺の耳に、笑い声が聞こえてくる。
誰かが近くで笑っていると、つい自分が笑われているように感じるっていう人はいないだろうか?ちなみに俺はそのタイプの人間だ。しかも、
「……普通…」「……な…へいぼ」
なんて聞こえてきたら、なおさら自分ではないかと焦ってしまう。
クソッ!普通すぎる自分に悩んでいるっていうのに…。俺は、2人の会話に聞き耳をたてる。
「照岡くん、さようなら」
「!!」
こ、この声は…
「さ、さ、さ、さようなら!『霧島』さん!」
「…?さようなら」
喋りかけられるのに慣れてないから、完全に挙動不審な人になってしまった!
…自分で考えててなかなか悲しくなってきたな。
『霧島 霞』さん。あまり多くはない、俺に声をかけてくれる人間の1人だ。
成績優秀でおしとやかな彼女は、透明さを感じさせる。「可愛い」と「綺麗」の混ざりあったその容姿は、独特の雰囲気を醸し出している。銀髪のロングヘアーは、誰をも魅了する輝きを放っている。聞いたところによると、家事も得意らしい。家のしつけが厳しく、幼少の頃から様々な体験をしていたことが影響しているのだとか。
平凡な俺とは正に、正反対の人間だ。どっかのお笑い芸人が、可愛い、性格がいい、料理が得意、そんな女はいない!的なことを言ってたけど嘘だね。だって目の前にいるんだから。
実は、俺は彼女と少し付き合いが長い。と言っても、コミュ力の乏しい俺から話しかけることは少ない訳だが。家はそこそこ近い…というか2軒先。学校は小学校から同じだ。普通すぎて固定の友達がいなかった俺(だんじてボッチじゃない!)に、「私…今日友達が風邪で休んでて…2人1組の相手がいないくて…もし照岡君がよければ…組んでくれませんか?」
って。一撃だった。
いつも組む人がいなかった俺は、この言葉にとても救われた。こんな俺でも話しかけてくれる人がまだいたんだと。もともと気になってはいたけど、ここまで破壊力があるとわ。
今でもその時の想いは変わっていない。まぁ、クラスでも1目置かれている彼女は、俺なんかは眼中に無いってわかっているけどね。
おっと、話題が逸れてしまったな。話を戻そう。
話していたのは同じクラスの女子2人。よく聞いてみると…最近ネットやらSNSで噂の七不思議についてらしい。完全な被害妄想だ。
俺も、七不思議については少し聞いたことがある。夜、家庭科室からアズキをとぐ音が聞こえるとか、夜、プールからピアノの音が聞こえるとか。やたらとホラー要素が強いものが多いけど、それ以外のもある。
例えば彼女たちが話している
『平凡の誘惑者』とか。なんでも、平凡な者のもとに現れて、願いを叶えてくれるらしい。
「異世界に飛ばしてくれー!英勇になりたい!って頼んだら本当に異世界に飛ばされた!なんて噂もあるみたいなの。」
「えぇ〜なにそれぇ〜どこ情報よ〜。それよりさ!来週の遊びの話なんだけど…」
どうやら彼女たちの関心は、別の話題にそれたようだ。
『平凡の誘惑者』、か。俺も、この噂には興味がある。平凡な俺を生まれ変わらせてくれる、そんな淡い夢を抱かせるものだったからだ。
以前、この噂を耳にし、気になった俺はネットで検索してみた。信憑性なんてありゃしないが、平凡な人間と甘い物にが大好物なんだとか。それを読んで以来、俺はポケットに常にカント○ーマアムを忍ばせている。べ、別に、噂を信じた訳じゃないんだからね!//も、もしかしたらって思っただけなんだから、勘違いしないでよね!//
まぁそんな噂でさえ、あまりにも平凡な俺には無縁のようだ。結局そういうのに願いを叶えて貰えるような奴は、平凡でもちゃんと個性があるんだ。もしラノベだったら主人公とかやってるんだろ?あぁ、自分で考えてて悲しくなってきた。帰るとしよう。
たかがJKの会話でダメージを負ったよ。
俺は、自宅へ向かう。ちなみに俺は、女性と話すのが苦手だ。というかできないといってもいい。数少ない話すことのできる霧島さんですら、いざ話すとなると挙動不審になってしまう。校内活動とかでどうしても話さなきゃいけないときでさえ、全く言葉が頭に浮かんでこない。俗に言うコミュ障って奴だと思う。なんでみんなは女子とあんなに気軽に話せるんだ⁉︎俺には超級クエストだよ…
男だったらどうしても話せないって程じゃないんだけどな。まぁ極力話さないようにはしているが。この弱点はいつか克服したいと思ってる。
だって…女子と気軽に話すことも出来ないようじゃ…あ、あの人と……話すことさえできないからな。
「おい!どこ見て歩いてんだ!」
気がつくと下の方から声が聞こえる。
「おい!聞いてんのかよ!」
な、なんだぁ?このガキ?パッと見中学生。タンクトップにジャージ素材の短パンを履いた、スポーティーな格好の少年。
「ど、どうしたのかな?」
「は?お前が俺にぶつかってきたんだろ?いい度胸じゃねぇか。」
どうやら考え事をしていて気づかずにぶつかってしまったらしい。
「ご、ごめん。か、考え事をしていて気づかなかったんだ。こ、今後気をつけるから許してくれないかな?」
「は?ごめんで済んだら警察はいらねぇんだよ。」
お前はいつの悪役だ。今時そんなこと言ってる奴作り話の中くらいでしか見たことないぞ?と、とにかく年下相手だ、穏便に済ませたい。と思っていたら、
「クッソついてねぇ。普通の極みみたいな奴にぶつかられた。普通がうつったらどうするきだよ!」
「⁉︎」
なんなんだこのガキ!?
言ってることが無茶苦茶である。
それに…年上に対してこの態度はどうなのだろうか。
「おい、ガキ。さっきから黙ってきいてればなかなか酷い事を言ってくれるな!」
確かに少しイラッとしたのは否定しない。
それでも…少し心配なのだ。
「は?普通な奴に普通って言ってなにが悪いんだよ?」
うっ、痛いところをついてきやがるな。
それでも、年齢の怖さを教なければならない。
「そ、それでも、世の中には言っていい事と悪い事があるんだ。それを教えてやるよ。ついてこい。」
「俺に挑んでくるとはいい度胸だな!いいぜ、その喧嘩かってやる。」
もちろん、年齢は絶対じゃない。
それだけに囚われるのは愚かしいことである。
だが、年齢が絶対な世界が存在することも事実なのだ。
それは、自分が一番知っている。
身をもって体験した自分が。
「着いたぞ。」
俺が連れてこられたのは、川の橋の下の人目につきにくいところ。
まるで、何度もここに来たことがあるような、そんな足取りだった。
不安がないと言ったら嘘になる。
目的だって、完全にお節介であり、自己満である。
ケンカなんかしたことすらない。
体力に自信もない。
そもそも年下に手なんか出さない。
「よし、ガキ。かかってこい。」
「ふん!後で吠え面かいてもしらねぇからな!」
決まり文句しか言えないのか、なんて現実逃避する。
どうしてこうなった…と。
ただ、自分勝手を突き進む俺にとって些細なことだ。
この状況も、ほとんど自分が選んだ結果だ。
自分と同じ道を歩まないでほしい。
ただその一心で。
だけど、そんな事を考えてる余裕は無かった。