優しさに甘えて。
「ねえ君は、どうしてほしい?」
目尻を下げ、先輩は悲痛の声でこう言う。
「どうしたら、信用してくれる?」
そんな優しい問いかけも、私には苦しいばかり。嘘でもいいから信じたい。そんな気持ちはあるのに私の過去が邪魔をするんだ。
「わかんない」
これがどうしようもない現実。
生きる糧だった唯一を失った私の真実。
「わかんない。でも、もう裏切られるのは嫌。信じたい、信用したいのに......どうしても、心がじゃまをする」
いつの間にか零れた涙と震える唇。信じたい心と信用できない心がお互いに強く主張しあって体の中をぐるぐるしてる。信じてるって言葉が胸の奥でつっかえて、なかなか出てきてくれそうにない。
昔の事をうだうだ引きずって、なんて情けない奴なんだっていうのは自覚してる。そして、先輩がそのことを知ってるからって甘えてるのも分かってる。分かってるけど......やっぱり私は甘えてしまう。
ひっくひっくと嗚咽を漏らして、まるで子供みたいだ。
「ごっごめっ......ひっく......ごめんなさい」
どうしていいのかわからなくなって、ただただ謝罪の言葉を口にした。こんなことに意味がないのはわかってる。でも、ぐちゃぐちゃになった感情をどこかに吐き出したくて仕方がなかった。
「大丈夫。謝らなくていいから そんな 、ね。君を追い詰めたかった訳じゃないんだ。少しずつ......少しずつでいいから距離を縮めていこう」
先輩は優しいから、私のペースにあわせようとしてくれる。でもそれじゃ、ことじゃきっと私は変われない。優しさだけじゃ人を変えることなんて、できないんだよ。