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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第4章 王宮の手触り
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ハロー、アンダーワールド(2)

「……ライオネル?」


 王宮の地下の牢屋へと閉じ込められていたリュウは、廊下をはさんだ反対側の部屋に連れてこられたマッチョを見て驚愕する。隣にいるナツミは、顔を曇らせたままで気づいていないらしい。

 リュウは彼女のことを気にかけながらも、鉄格子のそばまで歩み寄った。


「……おい。あんた、ライオネルなのか?」

「おっ!? おまえさんは囚人のリュウじゃねえか!」


 回復した身体の調子を確かめるように手先や上体を眺めていたライオネルが、こちらに顔をむける。そのダンディなチョビヒゲに、間違いはない。

 ここでリュウは、改めて目の前の人物が、行方不明だったライオネルだと認知する。

 ライオネルもライオネルで、リュウのことを認識したようだ。

 しかし、以前とは違うリュウの雰囲気に表情を一変させた。


「お前、囚人じゃなくなってるじゃねえか! なんだその服!? その怪しいお面といい、完全に怪盗だぜ!?」

「……ま、まあな」


 リュウは指さされた顔無しのお面に手をやりながら、俺たちも成長したんだよと、”ランクアップ”を含めた今までの経緯を話し出す。

 話を聞いたライオネルはチョビヒゲをつまみ、にっと豪快な大人の笑い声をあげた。


「俺たちと別れたあと、まさかそんなことになっていたとはなぁ。ガハハハッ! やっぱりおまえさんたちはおもしれぇ!」

「……お前に言われちゃあ、しまいだがな」


 二つの鉄格子越しに、二人は皮肉を言い合う。

 するとライオネルは、リュウの奥側に視線を移した。

 彼の瞳には、『出荷に怯える牛』が映っている。


「おい、リュウ。暗闇で震えてる探偵っぽい少女はいったい誰だ?」

「…………」


 リュウは何も言わずに立ち上がり、再びナツミの肩に寄った。

 遠い故郷を思い出すように、リュウはポツリとつぶやく。


「……ここにいるのは、ただの女の子だ。決められた運命に抗うことを許されなかった、ただの……な」


 彼の言葉を耳にしてから、ライオネルはしばし黙り込んだ。

 それに続き、リュウも口を閉ざす。

 冷たい檻の中に、嫌な空気が漂う。

 思い出したくもない死の香りが、リュウの鼻孔をくすぐった。どうしようもない吐き気が、湧き上がってくる。リュウは無意識に、ナツミの肩を抱き寄せた。

 ややあってから、ライオネルが声をかけてくる。


「なぁ、ふと疑問に思ったことなんだが。一つだけ、いいか?」

「…………なんだ?」


 弱々しい声に、無理やり芯を通す。

 と、次のライオネルのセリフに、リュウは素っ頓狂な声をあげることになる。


「おまえさんたちは、なんでこんなとこにいるんだ…………?」

「…………は?」


 リュウは心の中で、さっき説明したじゃねえかと全力のツッコミをいれた。頭のほうがちょっと弱いライオネルは、ポリポリとこめかみをかきながら申し訳なさそうに言う。


「いやぁ、すまねえな。俺、昔からどうにも理解するのに人一倍頭をつかわなきゃいけないんだ」

「……いやいやいや! 前々から俺たちに指示を出してくれてたじゃねえか!?」


 リュウは過去の経験から、『ライオネルはおバカ説』を否定した。

 しかし、ライオネルは首を振る。


「あれは全部、イーグルの作戦だ。俺はただ、シャイボーイなイーグルの代弁をしていたに過ぎない」

「…………マ、マジかよ」


 軽くショッキングな真実に、リュウは言葉を失った。意外といえば意外だけど、正直納得できてしまう。ライオネルはいかにも脳まで筋肉、つまり脳筋そうだから。

 はぁっとため息をついたリュウに、ライオネルが手を合わせこんでくる。


「頼む! もっかい説明してくんねえかな、おまえさんたちがどうしてこんなところにいるのかを。できるだけ詳しく!」


 イメージとは違うライオネルの姿に、リュウはもう一度ため息をついた。


「……わかった。ちゃんと聞いとけよ?」

「おう!!」


 快活な返事を聞いて、リュウは三度目のため息をもらしたのだった。

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