ファッションショーの開催について(3)
「……それでお前らは、どうしてファッションショーなんて言い出したんだ……?」
新たな旅の概要をひとまず話し終え、息抜きとしてリュウがそう切り出した。
最終的にアクションショーみたいになっちゃってたけど……。僕も、それは気になるな。
答えを知っている女の子たちの中で、ハナちゃんが胸の前で上品に手を挙げた。
「私たちの服装を、新しい旅に合わせて変えようと思ったのです」
「新しい旅に合わせて……?」
いったいどういうことだろう?
別に、このままでもいいと思うけどなぁ。
「変える必要ってあるのか? オレはこのままでいいと思うけど……」
僕と似た意見を持つシオンが口をはさむが、ハナちゃんは首を振ってみせた。
「違いますわ。わたしたちには”ランクアップ”が必要ですの」
「「「らんくあっぷ……?」」」
予想だにしなかった解答に、僕ら男子はアホな顔つきになった。
一方で、女の子たちは知っているといった様子だ。
し、しかし……。
「そ、その、”らんくあっぷ”ってなんなの……?」
聞いたこともない概念だったため、僕は疑問を投げかけた。リュウも同じようにして頷いている。この世界の王であるシオンですら、首をかしてげる始末だ。
ハナちゃんが答えようとすると、リコちゃんが間に入って「はい!」っと元気よく説明し始めた。
「”ランクアップ”とは、冒険者さんの『心』が成長することによって、その人の特徴が変わるという現象です!」
「ですわ」
やり遂げた感MAXでむふーっと鼻息を荒げるリコちゃん。非常に可愛らしいんだけど、今の説明ではイマイチ理解できない。
「あのぉ……もうちょっと具体的に教えてくれたりする……?」
「え!?」
申し訳ない気持ちでリコちゃんにお願いしてみたものの、残念ながらリコちゃんは言葉に詰まっていた。もしかすると、さっきの説明が全力だったのかもしれない。
ご、ごめんよリコちゃん……。
うぅっと口に手をあてていると、横からイッちゃんがフォローに入ってくれた。
「えっとねっ。具体的にいえば、忍者のコーくんが”ランクアップ”すると、”花屋さん”になれるかもってことっ!」
「え、えぇ……?」
ますます分からなくなってしまった。
「イネ……そこは”侍”などのほうがわかりやすいのでは……?」
「あっ、えっ!? ご、ごめんねコーくんっ!」
「だ、大丈夫だよイッちゃん!」
ハナちゃんの例えで、ちょっと理解できた気がする。
「……要は、もっと強力な能力を得るってことだろ?」
「そうなりますわね」
リュウが要約し、ハナちゃんはうなづいた。
なるほど。修行なしに、一気に強くなれるわけだね。
「でも、よく”ランクアップ”のことを知ってたねハナちゃん」
「あたしもそう思います! これはごく少数の人たちにしか知れ渡っていませんよ?」
「…………」
リコちゃんに見つめられ、ハナちゃんはそっと顔を背ける。
「……たまたま知っていただけですわ」
その口調は、いつもの彼女とは異なっていた。大人びた声色のなかに、どこか深い悲しみが入り混じっているような。
「ともかく、変身できちゃうんだよ~! フォフォフォ……」
「……まぁ、この話とファッションショーとはまったく結びつかないがな」
「あれはその時のノリでなっちゃったんだよ~!! も~っ!」
「……いてっ。叩いてくるなって」
ナツミちゃんとリュウのやりとりに、その場の空気が和む。
もう付き合っちゃえよ、ペッ。
「それでは、ランクアップショーですわー!」
向日葵のような輝かしい調子で、いつものハナちゃんが始まりを告げた。
本人がそう思うなら……深く立ち入るのは野暮、だね。
「よっしゃー! じゃあまずは僕からいくねー!」
旅が始まる前の、せっかくの機会なんだ!
楽しめるときに楽しんどかないと損だよね!
それに、僕が”忍者”から”何”にランクアップできるかワクワクだし!
そんなこんなで、新たな旅に向けての最後の準備が幕をあけた。




