ファッションショーの開催について(2)
”冒険者”である僕たちは、この世界でならどんな衣装にでも変身できる。例えばだけど、この忍者服から寝間着にだって着替えられる。頭で想像して、「変われ!」と思うだけで一発だ。
ファッションが好きな女の子にとっては、夢みたいな話だろう。
…………だからって…………。
「じゃ~んっ! 怪獣に変身してみました~!!」
「わぁっ、強そうっ!」
「バルタ○星人とは……わかってますわね」
どうして、怪獣のアクタースーツに変身するんだ…………。
両手がハサミの宇宙忍者になりきったナツミちゃんは、「フォフォフォ……」とか言ってリコちゃんに襲いかかった。
「きゃーっ、食べられちゃうですー!!」
「フォフォフォフォ……」
「でも、意外と可愛いいですわね……」
「クリッとした目がちゃーみんぐだねっ」
女の子に好評のバルタン☆人は、ハサミの中からちょろちょろと水を発射する。水をかけられている女の子たちは、きゃーきゃーわあわあーと楽しそうに叫び始めた。
どういう原理なんだ、アレ……?
呆然とその様子を眺めていた僕ら男子陣は、お互いに目を合わせてコソコソと話し合う。
「いったいコレは何事……?」
「……いや、俺に聞かれても……」
「オレたちはただ、冒険に出るよって告げただけだもんな……」
想像だにしなかった女の子たちの奇行に、僕らは頭を悩ませた。
「どうしたの、三人とも~? 一緒にファッションショーしよ~よ!」
と、リコちゃんに水をかけながら、そう誘われる。ファッションショーなのか、これは……? 僕からすれば異星人が幼い少女をさらおうとしているようにしか見えない……。
ファッションとは、いつからこんなにも前衛的になってしまったのだろうか。
困り果てる僕たちの中で、一人、動きを見せた者がいた。
シオンである。
「シ、シオン……?」
真剣な面持ちに、僕はつい心配になった。
ただし、心配の方向性は違う。
コイツのこの顔……――――
――――必ず何かやらかすぞ……ッッ!!
次の瞬間だった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
シオンの身体がピカリと輝きを放ち、まばゆい光に包まれていく。
クル……ッ!
「変形合体……完了」
消えた輝きの中から現れたのは、各パーツごとに色が分かれたスーパーロボットだった。レッド、ブルー、イエロー、グリーン、そしてピンクというスーパ○戦隊に出てきそうな色合いだ。
その場の注目を集める中、ロボットスーツを身に纏ったシオンが決め台詞を放つ。
「変形合体……略してへんたいッッ!!」
「そこは略しちゃダメだろ!」
ス○パーヒーロータイムの時間帯だぞ! 子供と一緒に見ている早起きしたパパをドキっとさせないで!
「さぁ、いますぐ助けてやるぞお嬢さん!」
「助けてですー!」
「フォフォフォ…………」
ずぶ濡れのリコちゃんを腕の中に収めて、戦闘ロボットと向き合うバ○タン星人。これ終わったらすぐにリコちゃんをお風呂にいれなきゃ。
ボケーとしながらそう思った。
五色のロボットが両腕を突き出し、宇宙忍者がその大きなハサミを開いた。
コイツァ、アツイ展開になってきましたぜ!
ロケットパンチとバルタンビームがぶつかり合う!!
目を閉じた瞬間だった。
「やめてーーっ!!」
二人の間に、一人の天使が舞い降りる。
「イ、イッちゃん……?」
その人は、紅色の髪をしたイッちゃんだった。
彼女は目をキツくつむりながら、天に届きそうな勢いの声量で叫ぶ。
「もうやめてっ! こんな争いからは何も生まれないよっ! お互いを傷つけあうなんて、悲しいだけじゃないっ!!」
彼女は涙を流しながら、力尽きたように膝から崩れ落ちた。
胸の前で手を組みながら、ポツリと、
「……も、もうやめて……っ」
そう、願った。
……イッちゃん。
「違うんだイッちゃん。彼らはね、戦う宿命なんだよ」
「でも、でもそんなのってっ!」
無情すぎる現実を叩きつけられてもなお、イッちゃんは折れない。
けれど、僕は首を横にふった。
「ど、どうして……っ?」
「理屈じゃないんだ。ただ、彼らが戦わなければ、日曜日が始まった気がしないんだ」
僕はイッちゃんの手をとり、ゆっくりと立ち上がらせる。
にらみ合う戦士と怪獣を、外から二人で見つめながら、
「戦わなければ生き残れない」
僕はそう、真実を伝えた。
「……ファッションショーじゃなくて、アクションショーの間違いじゃないか……?」
「いいえ、何もかもが間違っていますわ」
外野からリュウとハナちゃんの、冷たい一言が放たれる。
……ですよねー。
結局、ビシャビシャになったリコちゃんをお風呂にいれた後、僕らは今後についての話をしたのだった。




