聖夜の後のお楽しみ(5)
「それじゃあ最後は、わたくしですわね」
そう言って、ハナちゃんが前に出てくる。
ハナちゃん大好きシオンは、犬のように即座に反応した。
「ハナ! オレにプレゼントくれるの!?」
「あなたから受け取ってしまいましたからね。仕方なくですわ」
「いィィィィィやっっふゥゥゥゥゥゥゥ!!」
ちゃんとプレゼントをもらえることを知り、まるで宝くじの一等から三等までをすべて当選しちゃったかのように大喜びするシオン。
「はやくはやく!」
「その前に。……シオン」
「ん?」
「お手」
「ワンっ!」
命令された瞬間、ゴールデン・レトルバー並みの賢さでお座りしお手を繰り出した。
なんて従順なんだ。もはや美しさを感じる。
「いい子ですわ。ほらっ、プレゼントです」
「バウっ!」
差し出されたそれを、シオンは餌に食らいつく野生の獣のようにもぎ取った。
無駄のない動きで箱を開ける。
「…………(ガタガタガタ)」
取り出したそれを見つめて、シオンはガタガタと小刻みに震え始めた。
感動したからだろうか?
いや違う。
それはもっと、悲しみ、絶望、死に近いものだ。
絶句する僕とリュウは、シオンに声をかけることができなかった。
静まりかえる場の中、ハナちゃんがこう言った。
「あ、あなたにお似合いだと思ったのでプレゼントしたまでですよ? よ、よけいな勘違いはしないでくださいっ」
と、何も知らずに聞けば、好きな男の子にプレゼントを渡したツンデレのように思えるが、そういうわけにはいかなかった。
シオンはかすれた声で、尋ねかえす。
「この枯れ葉が……オレにお似合い……?」
「ですわ」
もう見てられなかった。枯れ葉があなたにお似合いですと好きな女の子からプレゼントされたら、間違いなく発狂ものだ。
「シ、シオン。元気出して……ね?」
「……そ、そうだぜ。修行でもして忘れよう」
そう慈しみの声をかけたのだが、シオンの様子はどこかおかしい。
なぜだか笑っているようだ。
「くくっ、聞いたかお前ら。オレって、枯れ葉の舞う夜に生きる白いフクロウみたいだって褒められたぜ……ッ!?」
「「うぅ…………っ!!」」
悲しい! 悲しすぎるよっ!!
僕とリュウは耐えられなくなって、シオンを修行へ連れ出すことにした。
しかし、そこで再び呼び止められる。
「ま、待ってくださいですわっ! それは冗談なんですっ!」
慌てて居間の中に戻ったハナちゃんは、新しい小包を持ってきた。
「こ、これが、本当のプレゼントですわ」
「ほえ?」
可愛らしく包装されたプレゼントを、シオンは困惑しながら受け取った。
「こ、これって……?」
「い、いいから開けてくださいなっ」
「う、うん……」
状況がいまいち飲み込めないシオンは、首をかしげながら開封した。
「……ブレスレット?」
ハナちゃんのプレゼントは、金色の腕輪だった。デザインはシンプルだが、白い宝玉が一つ埋められている。とても作り物とは思えなかった。
「これを……オレにくれるの? 枯れ葉じゃなくて……?」
「枯れ葉は冗談ですってばっ! ……き、気に入らなきゃ、捨ててくれて構いませんわっ」
「んなことするかよっ! ありがとうハナ!!」
「きゃっ!?」
珍しくシオンに優しいハナちゃんに、シオンは涙を浮かべた。
勢い余って抱き着いてしまう始末だ。
「ちょ、調子に乗らないでくださいなっ!!」
「ゥ……ッ!!?」
挙句の果てには、シオンの息子にクリティカルヒットをくわえられた。
完全にお陀仏だ。
「い、いきましょみなさん!」
プンスカ頬をふくらませたハナちゃんは、女の子たちと一緒に居間に戻っていった。これで本当に、クリスマスイベントは終わりだろう。
「僕たち、いいプレゼントをもらったねっ! クリスマスってのも悪くないよ!」
「……あぁ。アイツらには感謝しないとだな」
「ウゥ…………」
何気ない会話をしてから、僕たちはドアノブに手をかけた。
「それじゃ、僕たちもいこっか!」
「……だな」
「マ、マッテェェ…………」
股間をおさえこむシオンに肩を貸しながら、僕たちは勢いよく外へと飛び出す。
昨日の晩とはうって変わって晴れ晴れとした天気に、僕たちは顔をしかめた。
が、すぐに慣れてしまう。
「ふぅ…………やるか……ッ!」
その日のシオンは、無敗を誇るほど強くたくましかった。




