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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第5部【モノカラーの神編】 - 第10章 ラストジャッジメント
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コント・ラスト(1)

 紅い炎に蒼い氷の鎧。

 純粋な白と黒を対に成す翼。


「あらためて、こんばんは。一人の神様」

「…………」


 生の神と死の神。

 それぞれの脅威を身をもって知ったオレだからこそ、はかりかねる。二つの力を併せ持つヘルが如何様なのか。

 まずは実力の距離感をはかる必要がある。


「……んぬッ」


 円を描くように両腕を交差させる。空気が燃え凍てつき、サーカスで獣がくぐり抜けるような炎と氷の輪っかを生み出した。

 手のひらを合わせ、突き出す!


 ボォォオオッ、ビュビュビュッ!!


 火炎弾と氷弾が互いを嫌い合い、いっそう力強く飛んでいく。

 対して、


「おやっ……」


 カチーーッ


 ヘルは死の神の権能である『時を止める力』を行使した。散弾が宙で動くことをやめた。

 オレはすぐさまウシオの能力で『時止め』の力を使って時間停止を解除した。

 だが、ヘルは軌道から外れるように体をずらし、息を吹き返した散弾は空を切って消えていった。

 ぱちぱちと拍手するヘル。


「そっかそっか。ウシオくんは煉獄で先生と戦って時止めを攻略してたんだっけ。すごいねぇ、ボクなんか死の神見習いなのに最後まで習得できなかったよ?」

「……ちっ」


 嘘をついているわけではないのだろう。

 今しがた時止めを使えたのは、煉獄でデスパイアの権能を半分奪ったからだ。この様子じゃ、死の神の権能どころか生の神の権能も使いこなせるかもしれない。

 デスパイアが使えたのは、『時を止める力』に『未来を視る力』、『感情をエネルギーに変える力』の主に三つだ。

 生の神となったアミが使っていたのは大体『絶対零度の冷気』『エネルギーを付与する力』の二つだった気がする。

 状況をみるに、レイヤという死装束の女の能力も奪っているかもしれない。『物理的な力・エネルギーを吸収・放出』できたはずだが、これは神の力を持つ今のオレにはほとんど効かない。

 神の力に神の力は通用しない。

 とはいっても、厄介なことに変わりないな。


 カチーーっ


 オレが時をとめたとしても同じように時止め返しされるだろう。だが、不意をついてなら話は別だ。


「……おや?」


 認識と解除までの一瞬のラグが勝敗を分ける。

 オレは鎧の出力を上げ、塔の上から見下すヘルのもとへと一気に距離を詰めた。ヘルが時間停止を解除した時にはすでにこちらの間合いだ。

 胴体の中心に狙いを定めて拳を捻り出す。


 パキパキ……ッ


「……ッ!?」


 一瞬の判断だった。

 全身の筋肉が悲鳴をあげるが、オレは拳の軌道をずらし、その勢いを利用しヘルから遠ざかった。

 何をしているのだろうとヘルが不思議にこちらを見やる。

 炎を宿す右側の鎧がーーーー凍りついている。

 なるほど……蒼紅竜鎧の出力でも生の神の絶対零度には及ばないってわけか。


「こりゃ思った以上に強敵だな」

「光栄だね。なんの取り柄もないボクが強敵だなんてさ。先生、妖精の女の子、なによりレイヤには感謝しなくちゃ」


 …………。


「ボクが強くなることに意味なんてないんだけど」

「……なんでそいつに手をかけたんだ?」


 祭壇で静かに横たわる女。皮肉にも死装束が似合うことになる末路を辿るとは。

 彼女の胸元には刃物で刺したような傷跡があるが血液などは一滴たりとも流れていない。争った形跡のない綺麗な遺体だ。

 ヘルの目的が天魔の神になることなら、死装束の女に手をかける必要はなかった。女の能力を奪うためなら分かるが、強くなることに意味が無いならなおさら理解できない。


「愛だよ」


 ヘルは端的に、考える間もなく言った。

 

「ボクはレイヤを愛してる。だから殺したのさ」

「……ッ」


 ヘルとの距離感が無限に広がった気がした。

 何を言ってるんだ? 大切な人がいて愛しているから、命を奪った?

 大切な人は、守るべき者であり隣に並ぶべき者であり、手を繋ぎたいものだろう?

 オレが今戦う理由も、愛する人を救うため。

 だからヘルは殺した?

 無数に分岐する可能性を辿るが、殺すという理由には絶対に至らない。

 脳は混乱し身体の自由が奪われる。


「いなくていいよ。ボクを理解してくれる人は、さ」


 ブゥワーーッ!!


 天使と悪魔を思わせる翼を反らし、大きく薙ぎ払う。急加速する大気の流れに乗った絶対零度の羽がオレを襲う。

 あの羽は蒼紅竜鎧であろうとも耐えられないかもしれない!


 ババババッ!


 印を組み、


氷炎陣(ひょうえんじん)の術ッ!!」


 防御に徹する。

 炎を纏った氷が絶対零度の羽に削られていく。車のフロントガラスに銃弾の雨が降ったときのほうがまだマシだろう。

 翼の振りかぶりが甘かったおかげで助かった。氷炎陣だけで防ぎ切る。


「…………」

「ーーーー」


 火ぶたは切って落とされる。









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