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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第5部【モノカラーの神編】 - 第6章 血に染まる氷の世界
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小さな勇者は生まれ変わる(3)

「どうしてウチ、あんたみたいな男に抱かれてるの⁉ え、もしかしてそういうことなの一線越えちゃったの! ひゃあ、大人になっちゃっあああああ‼」


 目を覚ました十五歳前後の少女は僕の知っているアイスちゃんそのままだった。

 獣人しかいない村の出身で、色々な場所を旅して回っていたこと。とある街で獣人に対する差別を受け暴走してしまったこと。

 自我を失った彼女を、僕たちが助けたこと。

 何一つ変わらない。

 幻獣に進化したことを除いては。


「嘘……ウチ、幻獣になれたの?」

「ロック鳥だっけな。すごい吹雪を生み出せて、とにかく強かった」

「そうなんだ――――その力さえあれば、もしかして……」


 微かに耳に入ったアイスちゃんの独り言に僕は違和感を覚えた。

 何が気になるのか分からずモヤモヤしているうちに、話が終わりアイスちゃんとお別れをする流れに入る。


「ほんとに助かったわ。今は急いでるから難しいけど、この恩は必ず返すから」

「恩だなんて大したことしてないよっ。気を付けてね」

「うん。ほんと――――」


 ――――ありがとね。



 違和感の正体かは分からないが、大事なことを思い出した。

 そう。この後アイスちゃんは自分の故郷に戻って――――殺されてしまうんだ。


「それじゃ、ウチはこれで」

「待ってアイスちゃん!」

「え?」


 つい夢中になって呼び止めてしまったが、僕はその先の言葉を続けられなかった。

 視界の隅のイッちゃんに意識が移る。


「コーくん……っ?」


 このまま引き止めて史実を違えてしまえば、あのときのみたいにイッちゃんの首が落ちてしまうかもしれない。

 けれど、アイスちゃんが行けば史実通り殺されてしまう。

 またこれだ。

 人の命を軽々と弄ぶ世界が、選べない選択肢を突きつけてくる。


「ねえ、何が言いたいの? ウチ、急いでるんだけど」

「いや、その……」


 喉が干上がって上手く口に出せない。

 全身の毛穴から嫌な汗が噴き出す。

 イッちゃんが死ぬか。

 アイスちゃんが死ぬか。

 僕は、僕は――――――――、


「寂しいんだろ、お前?」

「――――え?」


 第三の選択肢を与えたのは、イッちゃんでもアイスちゃんでもない。

 レンゲだった。

 適当な調子で彼はうそぶく。


「まあ分からんこともないぜ。いくらハイネがいるとはいえ、華のある女の子と別れるのは寂しいもんな」

「れ、レンゲ? 何言ってるの?」

「恥ずかしがり屋のお前の気持ちを代弁してやってるのさ。感謝しやがれ」


 い、意味が分からない。

 まったく理解が追いつかない!

 混乱する僕を置いてけぼりにして、レンゲは大統領ばりに演説する。


「いいか、アイス。この馬鹿はちんちくりんに見えてちゃんと男なんだ。お前みたいにまだ幼い子供でもお喋りしたいと思うんだよ」

「ウチ、もう大人だもん! おっぱいも出てきてるもんっ」

「おっと、オレとしたことが言葉を間違えたぜ。お前みたいな美少女とお喋りしたい年頃なんだよ、このボケは」

「ねえさっきから何言ってるのさそれに僕のこと罵倒しすぎじゃない⁉」

「美少女……」

「アイスちゃんも騙されちゃダメだからねっ⁉」

「――――コーくんっ?」


 殺気だ。

 大蜘蛛よりもロック鳥よりも恐ろしくて足が震え出す殺気を隣から感じる。ダメだ、今目が合ったら殺される。

 ふふふっ、と不気味に笑うイッちゃんのプレッシャーで僕は身動き一つ取れなくなった。

 だからさと、レンゲはこう締めくくった。


「お前さんの村に、オレたちも連れて行ってくれよ」

「ウチと一緒に来たいの……?」

「オレたちもちょうど街を探してたところでさ。見知らぬ場所に立ち寄るより、知り合いがいるところのほうが何かと都合がいいんだ」

「ふーん。なるほどね……」


 事態は思わぬ方向に進んでいく。

 史実とは異なる展開に僕は内心ドキマギするが、下手なことを口にするとイッちゃんの身に何か起こりそうで、とりあえず成り行きを見届けることにした。

 アイスちゃんはしばらく考え込んだ後に、


「……ウチみたいな獣人がたくさんいる村だよ?」


 消え入りそうな声で、そう言った。


「構わねえさ。むしろアイスみたいなら安心だろ」

「あんた、本気で言ってるの?」

「万が一襲われそうになったら、こいつを犠牲にして逃げ出すさ」

「僕を犠牲にするな!」

「いいだろ、お前強いんだし」

「――――わかった」


 アイスちゃんは少し不安そうな面持ちで――ちょっぴり口元をつり上げ――頷いた。

 ついてきなよ、と僕たちに背中を向ける。


「ただし、時間が惜しいから近道するよ。先に言っとくけど、けっこう険しい道のりだから」

「おう、任せとけ」


 レンゲは間髪入れず、そう答えた。

 こうして僕は史実とは異なる別ルートの未来を歩むことになった。

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