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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第5部【モノカラーの神編】 - 第4章 蒼炎はやむ
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蒼い空を奪い盗む(3)

 蒼竜鎧そうりゅうがいの術。

 フリーダに流れる『海の神』の力を受け取ることで発現した炎龍鎧の究極形態。試してみなければわからないが、少なくとも身体能力は飛躍的に上昇している。

 失われた右腕を補完するように蒼炎が手の形を成す。


「この力で『蒼炎ジャッジ奪盗メント』を使えば、アミの心臓付近にむき出しの核を取り

除くことができる」


 今の俺なら絶望を希望に変えられる。

 この姿でいられるのも時間の問題。フリーダから受け取ったエネルギーが底を尽きる前に、終止符を打つ。

 

 ザーーーーッ‼


 大地を蹴り、アミのもとへと一直線に駆け出す。蒼炎が残影を描き、蒼い閃光が軌道を彩った。全盛期以上の速さ。

 これなら、間に合う。


「そうはさせないわ……ッ‼」


 アミへと続く道なりに生まれる白い影。

 再び顕現したのはデスパイアの半身だ。

 白い女は気だるげに黒い女に顔を向けた。


「ワタクシを二度呼ぶだなんて、相当まずい状況のようね」

「いいから、なんとしてでもその男を止めるのよ‼ このままじゃワタクシの計画が破産してしまうわっ‼」

「ふうん。それは……いただけないわね」


 白い女から一切の遊びの色が消える。

 目つきが変わった。

 白い女から死の匂いが漂い出す。


「詳しいことはわからないけれど、もう一人のワタクシを追い詰めるなんて只者ではないわね。いつぶりのことかしら」

「そこをどけ。お前に構っている暇はない」

「乱暴なのね。ゾクゾクする」


 空気が張り詰める。

 互いに出方を伺う。

 選択肢は無数に存在した。樹形図のように何本も分岐する選択肢の中、勝利につながるルートは果たしてどれだけ存在していることか。

 慎重に選ばなくちゃいけない。

 だが、悩んでいる時間はない。

 選択肢を間違えたのなら。


「そんときに考えりゃいい……ッ‼」


 もう一人の馬鹿が言いそうなセリフに緊張が緩和した。

 蒼炎を燃え上がらせ、死の神に挑む。

 低い軌道で一気に詰め寄る。蒼炎の剣を生み出し真下から寸分の狂いなく切り上げた。対して、白い女は軽い足取りで半歩後ろへ下がると、剣が最後まで振り上がるのを見届けて反撃へと躍り出る。石ころを蹴り飛ばすかのように、つま先を前方へ突き出す。


 ドッッッ‼


 女の能力は『吸収』し『吐き出す』もの。石ころであれば粉々に砕けるようなつま先蹴り。俺はそれを――――片手・・で受け止めた。

 女の白い顔がよりいっそう青ざめる。


「なんでワタクシの力が……」

「『神』に『神』の力は効かねえ……いや、同等と言ったほうが正しいか。まあ、同じやり取りをフリーダのときにもしていたがな。さすが表裏一体の存在ってことか」

「ぐう……っ! なら、火力を底上げすればいいだけの話よ」


 女の俊敏さに磨きがかかる。察するに、吸収していた何かしらの力を解放したといったところだろう。

 そうこなくちゃ面白くない。


「リュウ、後ろだっ‼」


 フリーダの呼びかけの直後、零コンマ数秒前にいた俺の位置に鋭い手刀が空を切った。白い女ではなく、黒い女だった。

 どうやらシャルラたちをあしらってこちらに加戦するつもりらしい。


「取り返しがつかなくなる前に、こいつだけは始末するわよ」

「それはこちらのワタクシの台詞だわ」


 モノカラーの二人の神が全霊を持って俺の命を刈り取りにかかる。

 現世と彼岸を管轄する死神、ね。

 それがどうした。


「死なんてものは、とっくの昔に克服しているッ‼」


 前世のあのとき――――炎に焼かれたあの瞬間の苦痛。

 今思えばちっぽけなだった。

 死を乗り越えたからこそ、俺はあいつの手を握りしめることができた。ぬくもりを感じることができた。

 そばにいることができた‼

 だから、今度だって乗り越えてみせる。次こそは必ず、隣に並んで同じを景色を見渡しながら未来を歩み続ける。

 約束だ、ナツミ。


「この蒼炎に、天に向かって誓いを立てる!」


 始まりの印を結ぼう。

 俺の『生』はここから幕を開ける。


「産声よ、空へと届け……ッ」



蒼竜そうりゅうの術ッッッツ‼‼‼」


 ゴおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼‼


 生まれし蒼竜の雄たけびに大地が震え、天が怯える。

 翼を持たない、蒼き竜。

 遠く遠く、天まで飛び立つ力はまだない。

 だが、今はそれでいい。

 いつかは必ず、この手で掴んでみせるから。


「ううううぐうううううううッッ⁉⁉‼ ワタクシたち二人の力を以てしても『吸収』しきれないというのッ⁉⁉」

「成り損ないの神ごときに――――ワタクシたちがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ‼‼‼」


 二人の神は蒼竜を相手取るのに精いっぱいだ。

 今この瞬間しかない。

 走れ、走れ!

 たとえこの炎が燃え尽きようとも。

 この身が真っ黒な灰に成り果てようとも。

 託された希望を次へと繋げ‼


 右手の代わりを成す蒼炎の色が変わる。

 虹色の光。

 これこそが、希望を灯す松明となろう。

 終幕のときだ。

 捕らわれた『生』の神の核たるものへ――――ッ‼




蒼空ジャッジ奪盗メント……ッツ‼‼‼」




 繋ぎ続けた『熱』が今。



 孤独な少女の呪いを晴らす。


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