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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第5部【モノカラーの神編】 - 第3章 新たな神の生誕
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冷たい生の誕生(3)

 私は一度、自由を失った。

 お母さんお父さんと大自然の中で自由にのびのびと暮らしていた。もうずいぶんと昔の記憶だ。本当に私の記憶か実感がないくらいには。

 死にたいと思った。

 いいや、死にたいとすら思っていなかったかもしれない。生きる意味がないから自然と死ぬことを選択していたのだ。

 きたいと願ったのは彼のおかげ。

 彼が私に希望をくれたから、この先も不自由な世界の中で生きていたいと願うようになった。

 希望といえばキラキラなイメージがあるけれど、彼のくれた希望は色味一つない、黒一色の花だった。

 彼は黒い花を綺麗だと言った。

 私も素直に綺麗だと思えた。

 そして彼はこの黒い花は私だと言ってくれた。

 今思うと、なんだか馬鹿みたいに思える。

 けれど、あの頃の私にとっては『希望』だった。


「……それが誰かから盗んだ『希望』だってことも分かってた」


 空腹で口から唾液を垂らすアミに向かって語りかける。目の前の彼女はきっと理解していないだろう。

 だからこそ、もとの彼女を取り戻して、ちゃんと謝りたい。

 ちゃんと言葉を交わしたい。


「あなたからもらった『希望』を返すときが来たの。遅くなってごめんね」

「――――」

「いくよ、アミ」


 バッ――――


 アミのもとへ向けて直線的に駆け出す。


「何考えてンだテメエ! あいつの近くに寄れねエことは分かり切ってんだろうが!」


 檻の中のフリーダが叫んでいる。

 たしかに彼の言う通りだ。

『生』の神となったアミの身体には絶対零度の冷気が漂っている。彼女には触れるどころか、近づくだけで私の身体は凍ってしまうだろう。

 けれど、これでいい。


「……ナツミも馬鹿じゃない。何か考えがあってのことだろう」

「なめんじゃねェ。あの野郎の力を侮り過ぎだッ!」

「…………クソっ。今の俺にはナツミを信じることしか……」


 私を信じる、ね。

 そういえば、リュウにはこれまで何度助けられてきただろうか。数えるのが馬鹿馬鹿しくなるくらいには多いんだろうな。

 逆に、私はリュウを助けたことが何回あるんだろう。何かフォローしても結局彼の迷惑をかけるばかりの私。それこそ考えるのは馬鹿馬鹿しい。


 シュルルルル……っ


 アミの背後から数本の触手が伸びてくる。

 大地の神見習いのハナも触手を操るけれど、神さまって触手が好きなのかな。なんて変な考えが頭をよぎる。


「斜陽・蜘蛛の糸っ」


 ズオオ……っ


 触手を相手取るのはお手のもの。ラフレシアの怪物も触手を使ってきたが、この『斜陽・蜘蛛の糸』ですべて絡めとった。

 これで触手は封殺した。

 ……と、思ったのも束の間、


「網が凍り始めてやがる……ッ」

「……気をつけろナツミ! その触手にも冷気が纏わりついてるぞ」


 彼らの言うように、触手との接触部分が白い霜に侵食されつつあった。

 なるほど……これは思ったよりも手ごわそうだ。


「……距離を取れナツミ! 網が壊されるぞ!」

「新たな触手は出さねェ……。一度に操れる本数には限界があるのか」

「……ナツミ! 触手の本数には限界がある! もっと強力な術式で動きを封じれば自由に仕掛けられるぞ!」

「テメエ、俺様の言ったことをまるパクリするんじゃねェ!」

「……お前の声が小さいんだろうが!」


 ……それにしても、外野がうるさすぎる。

 力づくで檻の中から出ようとしてないところをみると、私のことを信じてくれているのが分かる。本人たちは否定するだろうけど。

 なんだか不思議な気分だ。

 二人には『感謝』の気持ちでいっぱいだ。

 できるものならありがとうと伝えたいけれど・

 覚悟・・を決めた今、それを言うなら無粋というものだろう。


「…………ナツミ?」


 リュウが何かを勘付いたのか、私のほうを様子をうかがっている。

 まったく……普段は鈍感のくせして、こういうときだけ鋭いんだから。


 バギィ……ンッ


 凍り付いた蜘蛛の糸が砕け、再び触手が放たれる。

 だが、もう遅い。

 そろそろ頃合いだ。


 ズズズズズ……っ


「……この音はいったいなにかしら……?」


 大地の中で蠢くような不気味な気配。

 異変に気づいたのはデスパイアだった。はじめて怪訝な顔に変わった。


「昔、ハナちゃんに聞いたことがあるんだよね。神クラスの強敵が現れたら、どう戦えばいいのかなって」

「……あなた、何を言って……」

「ハナちゃんは言った。神さまに勝てるのは神さまだけだって。でも勝つ方法にもいくつか種類があってさ、その一つに力を封じて込めるってのがあるらしいんだけど」

「まさか――ッ」



「私、成長すると神さまを『封印』できる『巫女』になれるらしいよ」



 ガギンっ、ガギンっ、ガギン――――っ‼



 デスパイアが動き出す、直前で。

 地中から朱色の柱が飛び出しアミの両方の羽を突き刺した。二つの柱はお互いを求めあうように垂直の柱を生み出す。

 それはまるで神さまをまつる鳥居だった。


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