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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第4部【斬首塔編】 - 第2章 斬首塔での悲劇
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小さな宿屋で死人は蘇る(2)

 ゾンビのような獣人を操る少女はくすりと笑った。


「いきなさい」


合図を機に血に飢えた猛獣が解き放たれる。背中からショーンの小さな悲鳴が聞こえた。

 ……大丈夫。


ガッ!!!


「……え?」


血肉がぶちまけられることはなかった。


「並みの獣人くらいで負けるなよライ」

「ぐぬぬ……わかってるから!」

「……さすがだね」


俺たちが獣人の攻撃を易々と防いだからだ。

冒険者のユウは素手で、ショーンと同じくらいのライは円状の武器を使って、俺は半獣人となって立ちはだかる。完璧な獣人にならずとも半分くらいで戦えるさ。

拮抗する中、ユウが後ろに向かって声をかけた。


「アミ、頼んだぞ!」

「あいさー!」


俺たちの合間を縫って三体の獣人に光の矢が突き刺さる。それは傷口から体を溶かし、獣人は光のかけらとなって消えていった。

どうやらアミの能力は少女との相性がいいようだ。


「……ちっ。あなたがいたのね、忌々しい」

「今度こそとめるからね、ユーリ」


なにやら二人の間には因縁めいたものがあるらしい。ユーリと呼ばれた少女は苦虫を潰したような表情をしていた。

ユーリは手持ちのステッキをふるい、さらなる獣人を呼び出した。色の異なったカエルの獣人が三体。それもまたゾンビのようないで立ちをしている。

 決着は早かった。

 光の矢が瞬く間に獣人を塵へと化したのだ。


「本当に厄介ね、あなた!!」

「私には勝てないよ」


 状況は圧倒的にこちらのほうが有利だった。

 はずなのに。

 

 ズバッ!!


「きゃあっ!?」

「アミ!」


 目に見えない敵からの攻撃が彼女を襲った。幸いにも軽い傷で済んでいるが……。

 俺たちは背中を合わせて円陣を組んだ。


「カメレオンの獣人だろうな。周りの景色に溶け込むよう体色を自在に変えているんだ」

「また面倒な敵なことだ」


 このままではアミの能力を駆使できず、再びゾンビの獣人を召喚されてしまう。数に制限があるにしたって俺たちの人数などあっという間に超えることだろう。

 下唇をかんだ。やはり完全な獣人に変身して暴れるほかにないのか。カメレオンの獣人を嗅覚頼りで倒すことはできるはずだ。

 だが、一度暴走してしまえばどうなるかわからない。味方を襲うことだって十分にありえる。

 板ばさみの状況に俺は戸惑っていた。

 ……なのに、彼は軽々と言ってのけた。


「面倒な敵でも必ず弱点は存在する」

「え?」

「こいつにも弱点はあるってことだ」


 ユウは一歩前にでた。

 ユーリが妖艶にほほ笑む。


「へえ? 目に見えない敵に何ができるというのかしらあ」

「真の武闘家ってのは相手の気を読めるようになるんだよ。たとえば……こんなふうになあッ!!」


 バキイッ!!


 目をとじたと思った途端、ユウは何もない宙に上段蹴りをかました。鈍い肉と骨のぶつかる音が炸裂する。ユーリのほうに転がった獣人が姿を現した。


「視界をごまかせても殺気を隠せていないようじゃあうちの弟にはかなわないぜ」

「メメメ……ッ」


 目に見えない襲撃者の正体はやはりカメレオンの獣人だ。

 こいつには意識があるようで、ほかのゾンビ獣人と違って生きているようだ。

 ユウの一撃により、さらに形勢は逆転した。


「さあ、チェックメイトだな」

「くうう……っ!」


 ユーリの表情から余裕の文字が一切消える。年齢に見合った悔しそうな顔をしていた。


「まったく。考えなしに行動するからよ」


 空の方から声がしたと思ったら、



 ドグシャアアアアアッ!!!



 ――――黒いワンピースの女性を乗せて、超大型のムカデが宿屋を破壊した。



 衝撃の余波で数メートル吹き飛ばされてしまう。

 すぐに体勢を整えなおしたが待ち受けていたのは絶望だった。

 全長十メートルほどのムカデ。無数の脚はまるで獲物を欲しているナイフのように鋭く、赤い眼光は悪魔のような目をしていた。頑丈そうな黒い鎧。

 化け物とはまさにこのこと。


「なんだよ、こいつ……」


 あのユウでさえ余裕を失っているほどだ。

 ムカデの主人であろうピンク髪の女性はユーリを見下ろした。


「ゾンビが一体もいないようだけど、もしかしてやられちゃったの?」

「うるさい! あんたには関係ないでしょう」

「まあいいわ。私の分はもらっていくから」

「来るぞッ!!」


 ユウが言葉を発したときにはすでに遅かった。その巨大な図体からは想像もできない速度で俺とショーン以外のやつらが連れ去られてしまう。

 嵐はあっという間に過ぎ去り、俺とショーンだけが残された。


「これで邪魔者はいなくなったわねえ」

「……ッ」


 ユーリの口端が裂けるようにつり上がった。

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