サバイバルケイドロ(4)
次々と流れ込んでくる文字の津波に頭の処理がおいつかない。
ただ悪い感覚ではなかった。むしろ欠けていたピースを取り戻していくようで心地いい。
一冊の本を閉じ、二冊目へとうつる。絶え間なく、三冊目、四冊目と流れるように進んでいった。
ちょうど十冊目に差し掛かった時、
……コツコツコツっ
「そろそろ反省されましたか?」
遠くのほうからそんな声がやってきた。
まずい、ギンがきた!
本棚に戻し、僕はあわてて部屋から飛び出した。都合のいいことに秘密の部屋の扉が勝手に閉まってくれる。ギンが姿をみせたときにはすっかり元通りだった。
「や、やあギン。そろそろ出してくれるのかな?」
「やけにあわただしいですね……まさかまた悪だくみでもしてるのですか……?」
「そんなわけないじゃん! 僕は反省したよ? めちゃくちゃしたよ?」
「小さな子供みたいな言い訳ですが……まあいいでしょう」
はあっとため息をついて牢屋の鍵をあけてくれる。
「もう覗いてはダメですよ?」
「もちろんだよ!! じゃあねギン!!」
「あっ! 釈放された途端にこれですか!!」
そんなこといわれたって僕には泥棒をつかまえるという義務があるんだ。
こんなところでもたもたしてられない。
王宮内へとつづく階段をひた走り、光のさしこむ出口を抜ける。
「……さて、ここからが本番だ」
今がどういう状況なのかわからない。
ナツミちゃんたちが奮闘して泥棒をみんな捕まえたかもしれないし、逆に誰一人として捕まえられていないかもしれない。
それにイッちゃんたちも参加すると言っていた。
「まずは人を探して聞かなくちゃ」
タイムリミットは刻一刻とせまっているんだ。
絶対に捕まえきってやる……!!
「あっ、ウシオくん!」
向こうの陰からアミちゃんが姿をみせた。
この様子だとやはりアミちゃんも参加してるようだ。
「ウシオくんって警察側なんだよね?」
「そうだよ。もしかしてアミちゃんも……」
「警察!」
グッドタイミングだ。
「アミちゃん、現在の状況を教えてくれると嬉しいんだけど」
「おっけー」
アミちゃんが言うにはこうだった。
僕がいなくなってから、警察側は苦戦していたらしい。
だけどアミちゃんとイッちゃんが途中参戦してからはガラッと戦況が変わり、泥棒諸君を追い詰めていったそうだ。
「私とナツミの協力プレイのおかげなのさ!」
「へ、へえ……」
二人はリュウを奪い合う恋敵のようなものだと思っていたのに意外と仲良かったりするんだ……。
「それでね、今は最後の一人を探してるところ」
「それってやっぱり……」
「リュウだよ!」
…………なんとなくわかっていた。
あいつなら最後まで生き残るだろうなとは思っていた。
正直に言って、僕以外にあいつを仕留められるとは思えない。
だからこそ僕は戻ってきた。
あいつに負けるのも癪だからね。
「ありがとうアミちゃん。でも、もう大丈夫だよ」
「え、大丈夫って?」
「僕がきたからには安心してってことさ」
パキキ……ッ
僕の肌が割れる。
もうこの変身にはすっかり慣れていた。
最初は振り回されたこの力だけど今はもう自分のものだ。
「……ほわぉ……っ。なんかすごい……っ」
口をぽっかり開けてアミちゃんがこぼす。
「やりますか」
ヘビの獣人となった僕が始動する。




