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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第3部【ロストライフの入り口編】 - 第5章 赤の主人公は強くあり続ける
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死別


 今日も今日とて人々は彼ら自身の日常生活に勤しむ。

 本を作り、服を売り、旅人からエネルギーを頂戴する旅館の女将もまたしかり。

 みな汗水流してこの世界のために働く。

 苦痛はない理想の世界。

 唯一、獣と化した彼らを除けばの話だが。


 誰も彼の死を知らない。

 誰も涙を流すことはなく笑顔が絶えず盛っている。

 

 初めて慟哭したのはヘビの青年だった。

 次いで空を仰いだのは蒼い瞳の青年。


「――――――――っ」


 涙を見せたのは向日葵の少女だ。

 悲しみはウイルスのように伝播しその場にいた者のほとんどが泣きわめいていた。絶叫とも悲鳴とも怨恨とも思える彼らの声が亡き彼に届くことはない。

 ここは王宮のメイド室。

 居候のウシオたちが暮らす大きな一室だ。

 そこは青一色の世界だった。

 希望も何もない悲しみ一点の冷たい空気。

 抱き合う者がいれば一人肩を震わせる者もいる。



                   シオンが死んだ。



 あまりにも唐突な出来事に現実を見れない者たちもいる。


「どうしてみんな泣いてるですか……?」

「な、なんだか……わたしも……ひっく……ひぐ……っ」

「ヒナタが泣いちゃうとわたしまで……うっ、うぅ……」


 子供たちは輪を作って無意識のうちにその場の雰囲気に耐え忍ぼうとしていた。

 ライだけが現実を理解し唇をかみしめている。


「…………」

「…………」


 ウシオとリュウはそれぞれ涙を流すこともなくただ茫然と窓の外を眺めていた。


「……あいつ、ここから見る景色が好きだとか言ってなかったか?」

「…………」

「……それもまあ、あっちにある温泉が覗けるからだとかほざいてたけどな」

「…………シオンらしいね」

「……まったくだ」


 二人の間にこれほど物静かな空間が生まれたのは初めてかもしれない。

 いつもならもう一人、うるさいやつがいたのだから。


 ガチャリ


 その時、重い金属製の扉が開き、誰かが出ていくのをウシオは見た。


「…………ハナちゃん」


 黄色のふわふわなドレスを身に纏っているのは他でもないハナだ。本人は否定するのだろうけど、シオンと最高に相性がよく、そうして最もそばにいた女の子だ。

 一人になりたい気持ちは痛いほどにわかった。ウシオだってシオンの一番の友人なのだ。思うところは数え切れないほどある。


「……どこに行くんだ?」

「…………なんでもないよ」

「……お、おいっ」


 リュウの制止を無視してウシオはハナのあとに続いて部屋から去っていった。

 悲しみの雲が晴れることは無く、そのまま夜を迎え、篠突く雨が窓を叩く。

 まるでこの別の世界に飛ばされた誰かがノックするように。

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