神をも欺くキマイラ(1)
ロブスターとタランチュラが混ざった奇異な生き物。
キマイラと化した獣人が襲い来る。
「……くっ……」
身を構えたのが間違いだった。
砂浜という足場の違いが俺の感覚を鈍らせる。
「シュラッッ!!」
蜘蛛特有の素早さを活かし一気に距離を縮められた。
猛毒のしたたる爪が突き出される。
――――避けられない……ッ!!
全身から血の気が引く。
ブォオッ!!
じじいの操る風が俺を横からなぎ倒したおかげで間一髪を免れた。
「弱すぎでしょ、マジマンジ」
「……ちっ、癪にさわるが何も言い返せねえな」
「シュラッ!!」
俺たちが言葉を交わす時間を与えることなく突然変異した獣人は猛攻を重ねた。
先ほどとは比べ物にならないほどの速度。だがこれまでの歴戦に比べればそうでもない。
「……風加の術」
風を身に纏い身体速度を上昇させる。
俺には攻撃を見極めるだけの眼がある。あとは身体がついてくればなんてことはない。
「シュラララッ!!」
何度も毒牙にさらされるがすべてを見切って避けていく。
「ほう、あんちゃんも風の力を使うノネ」
「……俺の場合は借り物の忍術だけどな」
「ワッツ?」
「……傍から見てねえでお前も手伝えや!」
見知らぬ顔をする真夏のサンタクロースにいらっときた。
わざとじじいのほうに攻撃をよけて誘導してやる。
「ちょちょっ、なんでこっちにくるのさ!」
「……お前へのあてつけだ!」
「ひどいぞあんちゃんっ!」
見た目からは考えられない俊敏な動きで獣人の攻撃をかわすじじい。
俺は好機を見たとばかりにイーグルの眼に集中した。
「何やってるのさこっちが大変な時に!」
「……うるせえ今見極めてんだよッ!」
「何を!?」
「……獣人をだよバカッ!!」
ウシオに似たバカは放っておいて目の前のことに集中する。
蒼い瞳を通して見ると獣人の心臓部分に黒い塊のようなものが見えた。
あれが獣人の発症源だろう。
「……なんだあれ」
通常の獣人ならそれだけなのだが他にも妙なものが見える。
黒い塊に半透明なゼリー状のものが寄生しているのだ。
「……もしかして……あれが突然変異の正体か?」
「なんだってえーっ!?」
「……だとすれば……それさえ取り除けば」
「おーいってばッ!!」
「……うるせえなじじい! こちとら取り込み中だッ!!」
「はやくしてよー、ギリギリなんだからー」
それにしては余裕のある口ぶりだった。適当な足払いを見て、腐っても神なのだと改める。
やることは決まった。
俺の能力でゼリーに寄生された塊ごともぎ取ればいい。
「……聞こえるかじじい!」
「ポセちゃんって呼んでッ!」
「……クソじじい!! 頼みたいことがあるっ!!」
「なんでもこーいッ!!」
「……犠牲になってもらうぞーッ!!」
「エッ!!?」
その時のじじいの驚きっぷりときたら本当に笑える。
目を見張るじじいはさておいて俺は炎竜の鎧を身に纏った。
――――紅蓮が潮風に踊る。
「……さあて、やるぜッ!!」




