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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第3部【ロストライフの入り口編】 - 第3章 日常は存在しない
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ラウンド2(1)


 幾度も刃を交える中で変化は突然やってきた。

 唐突に剣の手ごたえが消えたのだ。一瞬、ウシオの体力が尽きてしまったのかと安直に考えてしまった。

 その推測はすぐに否定される。

 氷の鎧が霧散し、ウロコ肌のウシオが姿を見せたからだ。


「……ウシオ、まさかお前……ッ!?」

「ふふっ、鎧同士がダメなら次は獣人さ!!」

「……うおっ!?」


 ヘビの獣人に変身したウシオが黒く鋭利な爪をむき出しにした。

 考える間もなく俺はその攻撃をさける。

 炎の鎧に少しばかりかすった。

 傷ついた部分が黒く腐食し溶けてしまう。


「爪先には猛毒が流れててね、なんでも溶かしちゃうんだ。たとえそれが炎でも」

「……ちっ、やっかいな!!」


 コンマ数秒遅れていたら取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

 瞬時の判断が命取りになる。

 とはいってもヘビの獣人にも弱点はある。

 まず一つ氷竜鎧のときよりもスピードが落ちていることだ。動きにキレがない。今みたいに下手なことをしない限りはウシオの動きに対応できるだろう。

 ただし、動き方がやっかいだった。


 シュルルルルっ


「……くっそ!! 全然あたらねえ!!」

「関節はあるけど、ないに等しいもん。それくらいの攻撃なら見なくても避けれるね」

「……そりゃあ熱器官があるからな!!」

「ばれてたか!」


 ちゃんと四肢があるのにくねくねと揺れる身体のせいで非常に斬りかかりずらい。余計なことをすれば隙をつかれかねない。

 厄介ごとはもう一つ。

 熱器官だ。

 ヘビには熱センサーというものがあり微妙な温度変化を鋭敏に感じ分けることができる。もちろんウシオにもそれがあるわけで文字通り目をつむっていても攻撃が避けれてしまうのだ。


 ブンッ! ブンッ! ブンッ!!


「……はあ、はあッ。一回ぐらいは当たれよッ!!」

「誰が当たるもんか。なんだかリュウ、頭に血がのぼってるよー? 余裕がないなー」

「……るっせえ!!」


 ウシオの挑発を切り刻むようにいっそ剣を握る手に力がこもってしまう。

 正直なところ、ウシオの言うことは正しかった。

 炎竜鎧の術の副作用だ。

 大きな能力を得る代わりに性格が少し変化してしまう。ぶっきらぼうですぐに燃え上がる単調な思考になるのだ。

 このまま続けるのはまずい。どこかで必ずほころびが生まれる。

 ウシオはそれを待っているのだろう。


 ――――だとすれば、打開策は一つ。


 ブンブンズババババッ!!!


「ありゃ? なんだかもっと雑になってきてない? それじゃあ隙だらけだよ?」

「……いいんだよ!! 当たれば勝ちだ!!」

「あっそ」

「……さあ、ラストだ……ッ!!」


 足の裏の炎を爆発させて一気に間合いをつめる。

 腰をまわして大きく振りかぶった。


「……食らいやがれッッ!!!」

「はあ……力を込めすぎて見え見えになってるよ……」


 やれやれと呆れんばかりにウシオはため息をついた。スッと俺の攻撃の軌道を見破り無駄のない動きで回避する。

 同時に両手を引いて一気に突き出した。


「お返しだよリュウッ!!」


 鋭い十の爪が牙のようにむき出しになる。

 隙をつかれた俺は目を見張った。


 ――――かのように演じた。


 フッ


 俺を包んでいた炎の鎧が消える。


「このタイミングで……っ!? だけどもう遅いっ!!」


 ウシオの伸ばす手の勢いは止まらない。

 体勢的に身体をそらしてかわすのはできない。

 必然的に当たってしまう。

 毒牙の餌食だ。

 だが――――、


「……お前の攻撃はあたらねえよ」

「バカっ!! そんなことありえるわけ……」


 スルッ


「うそんっ!!?」


 黒い爪は俺の柔肌を突き刺すことなく、あっけなくすり抜けた。

 まるで俺の姿が幻影であったかのように。

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