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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第1部【王の目覚め編】 - 第3章 それが日常と化していく
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洗練されゆく精神と技(3)

「いくぞ変態、剣氷けんひょうの術!」

「……変態っていうんじゃねえ!」


 相手が僕たちと同じ忍術を使えると分かった以上、それ以外の特性で勝負をかけようと考えた。

 例えば、僕は忍者でリュウは囚人だ。

 スピードでは勝ると判断し、近接勝負を仕掛けることにした。


「くらえ!」

「……くっ!?」


 キンッ


 氷の剣とステッキがぶつかり合う。


 キンキンッ


 相手の隙を狙い何度も攻撃を仕掛ける。

 しかし、そのすべてに対応され防がれてしまう。

 このままでは形勢が逆転すると判断した僕は、一度距離をとった。


「……どうした、もう終わりか?」

「まだまだ!」


 ヒュンッ


 さっきのような攻撃方法は通じないと判断した僕は別のアプローチを試みる。

 目にもとまらぬスピードで近づき、きつい一撃をかます。

 しかしながら、敵も相当のスピードで対応し防がれてしまった。

 僕は距離をとり、さらにもう一度攻撃を仕掛けた。


 キンキンキンッ


 何度も何度も攻撃するが、ことごとく防がれてしまう。

 いよいよ息が切れ始め、攻撃を中止した。


「はあ、はあ。忍者のスピードについてくるなんてやるじゃんか……っ!」

「……囚人の素早さをなめるなっての。今度はこちらから行くぞ! 瞬風しゅんぷうの術」

「ッ!?」


 キンキンゴッ

 キンキンキンゴッ


 風を身にまとったリュウが先ほど以上のスピードで攻めてくる。

 なんとか対応するが、何回かに一度防げなくなっていった。

 このままではまずいと感じた僕は術を発動する。


「……ぐっ……ひょ、氷陣ひょうじんの術!」

「……!?」


 ピキピキピキッ


 僕の周りが徐々に凍っていく。一方的に攻撃していたリュウは一度手を引いた。

 氷の世界ができた。

 生えていた草草はみんな凍ってしまっている。

 これでもう簡単には近づけない。

 しかし、彼の表情には余裕があった。


「……この程度じゃまだまだ安心できないぞ?」

「なんだって?」

「……炎陣えんじんの術!」


 ゴオオオオオオッ


 彼の周りに炎が生まれていく。

 僕の氷と中和していき、すべて元通りになってしまった。


「……さて、これで思う存分お前をボコボコにできるな」

「くそ、この変態め!」

「……へ、変態じゃねえよ!」


 リュウはステッキを放り投げ、新たな武器を取り出した。

 いわゆる双剣だった。

 彼は僕に接近しようと動きを見せた。

 これ以上近づかれるのはまずい。


爆風烈火(ばくふうれっか)の術!」


 大きな風により威力を増した炎が相手に襲いかかる。

 しかし、何かしらの対処があるのは目に見えていた。

 だから、この一瞬の間に相手の攻撃を防ぐ防御の術を発動する。


氷鎧ひょうがいの術!」


 ピキピキ


 氷が音を立てながら僕の体を包んでいく。


爆水土流ばくすいどりゅうの術!」


 バシャアアアアアアアアアン


 僕の術は予想通り対処されてしまう。

 リュウの視界を遮っていたものが無くなり、彼は僕の姿を目にした。


「……なんだそりゃ? 中世の騎士みたいだな」

「ああ、この鎧で君の攻撃を防ぐ!」


 僕の体は全身くまなく氷の鎧で覆われていた。

 シオンとの闘いで毎回使っていた術だ。

 大変高い防御力を持っているが、その反面スピードは劇的に落ちてしまう。

 しかし、同じスピードをもつ相手ならこの装甲には意味がある。


「……氷でできた鎧だろ? そんなのすぐ壊してやるよ!」

「来い!」


 リュウが双剣を手に攻撃を仕掛けてくる。


 ガキーンッ


 彼の攻撃は氷の鎧に傷一つつけることもできなかった。


「……っ、やるじゃん」

「まあね!」


 今度は僕から攻撃を仕掛けた。

 しかし、氷の剣を振りかざすが相手には当たらない。


「くっ、当たれ!」

「……この程度のスピードなら避けられるな。」


 このことは十分に承知していた。

 シオンとの闘いでもそうだったからだ。

 あまりエネルギーを使いたくないから試してみたんだけど、やっぱりダメかあ。

 僕はシオンのときと同じように闘うことにした。

 彼から距離を取り、遠距離の術を発動する。


氷砲ひょうほうの術!」


 大きな氷塊を放つ。

 しかしながら、彼は迅速なスピードで避けては近づいてくる。


「くっ! 雷連弾らいれんだんの術!」


 無数の電撃の玉を撃つ。

 けれど、これもまた双剣で打ち消されてゆく。


「……そんなもんかよ。今度はこっちからいくぜ!」


 リュウの移動速度がさらに加速する。

 一瞬で目の前まで近づかれてしまった。

 でもこの鎧を着ているので問題ない。


 ガキンッ


 案の定、僕の鎧に傷一つつかなかった。


「リュウ! この鎧をなんとかしなきゃ僕には勝てないよ!」

「……そんなの分かってるっての! 風加ふうかの術!」


 ヒュルルル


 双剣が鋭い風を纏う。

 まさか、これはまずいかも‥‥…っ!


 ガキンッ


 今まで傷一つつかなかった鎧に、傷がついた。


「……っ! これに威力を追加すれば! 炎追えんづいの術!」


 さらに炎も追加され、双剣は鋭く威力のある武器へと進化した。


 ガガガガガガッ


 リュウが連続で攻撃した。

 僕の氷の鎧にひびが生じる。


「……はっ、これならすぐ壊せそうだな!」

「くっそう・…っ!」


 このままではすぐに壊されてしまい負けてしまうだろう。

 だからって、鎧を脱いだところで状況はあまり変わりない。


(……仕方ない……やるか)


 リュウに勝つために残された最後の方法。

 未完成ではあるが、ここで使う他に手はないだろう。

 僕は、必殺技とも呼べる最後の術を使うことに決めた。

 とりあえず、この状況から抜け出すのが先だった。


氷陣ひょうじんの術!」

「……ちっ、またか!」


 僕の周りが凍り始めたので、リュウは一旦退しりぞいた。


「……その術を使ってもすぐに打ち消されるだけだぞ?」

「ああ、分かってるよ」


 一瞬の時間さえあればよかった。

 僕は気合いを込め、術を発動する。


氷竜ひょうりゅうの術!!」


 ゴオオオオオオアアアアアアアアアアアッ!!


 氷から生まれた竜が姿を現す。


「……それが例の必殺技か? これくらいならなんとか対処できる。炎竜えんりゅうのーー」

「違う、これが僕の奥手じゃない!」

「……なんだと?」


 氷竜が動き出し、そして――――


 ――――僕を丸ごと飲み込んだ。


「……なに!?」


 リュウが驚きの声をあげた。

 当然だ、自分の術に食われるなんてありえない。


 しかし、僕は食べられたわけではなかった。


 ピキピキピキパリーンッ


 僕を飲み込んだ氷竜がはじける。


「……なっ!?」


 中から出てきた僕は、まったく異なった姿をしていた。

 先ほどは、中世の騎士のような全身を守る鎧を着ていた。

 けれど今は、胴体や額、すねや手の甲にしか装着されていない。

 氷の密度はさらに増し、まさにダイヤモンドのようだ。


「……竜の鎧?」


 そう、今の僕はまさに人型の竜のように見える。

 氷竜の鎧を身にまとったのだ。


「……くそ、炎連弾えんれんだんの術!」


 たくさんの火の玉が襲いかかるが、素早く氷の剣ですべてを切り裂いた。


「……ちっ、厄介じゃねえか。」


 リュウが忌々しそうに言う。

 氷竜の鎧の影響なのか、冷静な思考の僕は一言だけつぶやいた。


「さあ、始めよう」


 戦いはさらに激しさを増す。


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