久しぶりの日常風景(3)
「改めまして、ごあいさつをさせていただきますわ」
「いえーいっ!」
「よっ、待ってました!」
僕とシオンが目を覚ましたということで王宮のメイドさんが一同に集った。とはいっても、ここにいるのは王様直属の三人だけだ。
仕切っているのは一番歳が上のように思われる緑髪のメイドさん。
「まずはじめに、わたくしはリンと申します。よろしくお願いいたしますわ」
お腹に手を添えて丁寧にお辞儀するリンさん。
すごい大人びた女性だ。なんというか、ハナちゃんにどことなく似ているような……。
「ちなみに、そこにいるハナの姉になります」
「えぇ……ッ!? ハナちゃんのお姉さんなんだッ!」
「ハナの姉ちゃんだっただと…………なるほど、心がうずくわけだ」
「シオンっ! 変なことは想像しないでくださいまし!」
顔を真っ赤にして怒るハナちゃん。
リンさんはハナちゃんの第一印象にそっくりだけど、今のハナちゃんとは結構違いがあるかもしれない。こうやって僕の目の前でシオンが羽交い締めにされてるわけだし……。
姉妹とはいってもやっぱり違う。僕とユウ兄さんみたいなもんだ。
「ぐぎぎっ!? ひひたいからはにゃっ!」
「反省してください、シオン」
「オレが何かしたんですか…………?」
「ふんっ!」
「まぁまぁ、ハナ」
でも、さすがはお姉さん。暴れん坊の妹ちゃんをなだめている。
ハナちゃんに落ち着きが戻ったところで紹介は青髪メイドさんに移った。
「……あたしがナンバーワン美少女、ビイです」
「ビイちゃんっ!」
「よっ、おっぱいっ!」
僕とシオンがおじさんのようなヤジを飛ばす。シオン、いい掛け声じゃないか(ドシャア!!)――――ハナちゃんにまた殴られてるけど……。
低身長なわりに爆弾のようなお胸。さっき僕たちが鼻血を我慢できなかったわけだ。
これが世にいうロリ爆弾というやつか。世にいうのかはわからないけど。まぁ、僕はイッちゃんのようにバランスのとれた女性らしさがいいかな。
「……ちなみにあたしはFカップ」
ブシュッ
……あぶない。鼻血が噴き出しそうになった。
「ちょっとビイちゃん! それもう決まり文句になってない!?」
「……あたしは事実を述べただけ。真実はいつも一つだから」
「どっかの名探偵っぽく言わないで!」
ボケまくるビイちゃんに対してツッコミを入れまくる赤髪のメイドさん。なるほど、自分の胸が薄いから過剰反応してしまうわけだね。
さしずめ、
「おっぱいアレルギーってとこか」
「ウシオ! それはうますぎる!!」
「でしょ!? 僕もたまにはうまいことを言うもんだよ」
「「アハハハハハハハハハッ!!」」
僕たち、もう爆笑。
「「………………」」
彼女たち、もう嘲笑。
ヘビに睨まれたカエルとはまさにこのこと。
「「調子乗り過ぎました」」
「「さようなら」」
ドゴォォオ……ッ!!
赤髪メイドさんとハナちゃんの右が僕たちをとらえた。
お星さまがいっぱい。
「まったく……王様はいつまでたっても変わらないわね」
「シオンはずっとこの調子ですわ」
赤髪メイドさんとハナちゃんがそろってため息をつく。
「二人とも、その辺にして。こちら食事担当メイドのアールですわ」
「そっ、私がアールよ。ウシオくん、だっけ? よろしくね」
「あ、うん。よろしくねアールちゃん」
腰まである長いツインテールに紅葉のような髪色。すらりと伸びた手脚は白くて綺麗の一言に尽きる。気が強そうな女の子だけど、悪い子ではなさそうだ。
なんというか、ナツミちゃんとハナちゃんを足して二で割った感じ、かな?
「それじゃさっそくご飯にでもしましょ!」
「ゲッ!? ご飯ってあのドリンクのことか? オレはもうこりごりなんだけど……」
「違うわよ! あれから食べやすいように改良に改良を重ねたんだから!」
「わたくしも口にしましたが、絶品ですわよ」
「ほんとかよハナ! ちょっと怖い気もするけど、ハナが言うなら……」
「なんで私のことは信じなくてハナのことは信用するのよ!」
「それは”愛”ゆえ、かな」
「愛!? あ、あ、あ、あんたたち付き合ってるワケ!?」
「ちょ、ちょっとやめてくださいな! わたくしがシオンとお付き合いだなんて……っ!」
……なんだろう。なんか、めちゃくちゃ仲良さげだね。
微笑ましい気持ちになりながらも、どこか寂しさを覚える。
そんなとき、
ガチャリ
と、音を立てて部屋の大きな扉が開いた。
「となると、クロを含めなりを潜めていた革命軍のやつらは王宮から姿を消したわけか」
「…………そうなるでごわすな」
「王宮にはもう用がない、ってことなのか……?」
入ってきたのは軍服姿のシャバーニと青色の道着を着た青年だった。
シャバーニが僕たちの仲間になったのは本当に驚いた。詳しいことは、あとでリュウにでも聞くとしよう。
……それにしても、あの道着の人はいったい誰なんだろう。オールバックに知的な顔つきにはどこか見覚えがあるような……。
少し考え込む中、僕のほうに視線を向けた青年が歩み寄ってきた。
「よう、久しぶりだな。元気してたか?」
「へ……?」
この青道着の人、僕のことを知っている……?




