久しぶりの日常風景(2)
王宮での戦いが終わり目を覚ました僕とシオンはここで仕えるメイドさんの部屋に居座っていた。
「王様! ほんとに王様なのねっ!」
腰まである長い赤髪のツインテールに威勢のいい声。
王様に仕える三人のメイドの一人、名前はアールというらしい。
「ひ、ひさしぶりアール……っむごっ」
ベッドの上のシオンが息をできないほどに抱きしめられている。羨ましいといえば羨ましいけど……お胸がないからそこまでかな。
「今誰か私の胸が薄いとか言わなかった……?」
「(プルプル……)」
首を横にふる。
なんでわかるんですか……っ。イッちゃんたちみたいに、怒らせると怖いやつやで……。
関係のないシオンまでも青ざめて首をふっている。……いや、シオンのことだ。あいつも彼女の小さな胸のなかで『胸があればなぁ』とか思ったのかもしれない。
「ちょっとシオンっ! なにデレデレしてるんですの!(バシイッ)」
「なんかデジャブッ!?」
ハナちゃんがいつものようにシオンの頬をしとめた。
この感じ、久しぶりぃ……。
しかし、ことはそれで終わらない。
「ハナっ!? あなた王様になんてことしてるの!?」
「こんなやつ、王様なんかでもないですわ!」
「それはわかってるけど、仮にも一応は王様なのよ!」
「まぁ、まぁお二人とも。王はしょせん王ですし……」
「なんでオレそこまで罵倒されてるの? いじめなの?」
シオンのやつ、王様だった時代もこんな扱いだったのか……。
執事のギンにまで言われちゃってるよ。
「ねぇウシオ! お前からなんか言ってくれよ!」
「女の子に囲まれたやつなど仲間でも何でもない」
「この裏切り者……ッ!」
「それはこちらの台詞だァアアアアッ!!」
ハーレムハーレムするやつには鉄拳制裁が必要。いや、それすら生ぬるいわ……ッ!!
僕とシオンが胸倉をつかみあい、いざ殴り合いが始まろうとしたその瞬間、僕らの間にひょっこりと青い頭が割り込んだ。
小柄な体にメイド服を身に纏ったその少女は眠そうな瞳で一言、
「……あたしのために争わないで」
「「…………」」
そんなことをのたまわれた。
僕とシオンは手を止め、思わず息を呑む。彼女の発した言葉にではない。
その、富士山をも思わせる、壮大で、偉大で、ビッグで、ばり大きか、その双丘に目を奪われたからだ。要するにOPPAI大きい。
……タラーッ
僕とシオンの鼻の穴から生暖かい赤いものが垂れる。
「「「この変態…………ッ!!!」」」
「「ぐぼああああああっ!!?」」
ドシャアアアアアアアアアア!!
僕はギンに、シオンはハナちゃんとアールちゃんにビッグな一撃をかまされた。
ドッ!! ゴロゴロ……っ
「……あたしはみんなのもの」
青髪メイドさんのそんな小言を耳にしながら敷かれた高級じゅうたんの上に転がったのであった。




