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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第1部【王の目覚め編】 - 第3章 それが日常と化していく
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洗練されゆく精神と技(2)

「はあ、はあ、また負けたー!」


 白い忍者服のシオンはごろんと倒れ込み叫んだ。


「オレたちの実力って五分五分なのに、お前の一日に一度回復する能力はずるいよ!」

「あはは……。よくわからない能力だよね」


 レベルアップのおかげなのか、僕は瀕死になると一日に一度だけ回復するという能力を身につけた。

 ここ数日、シオンと試合を行っており毎回相打ちになるのだが、この能力のおかげで最後には僕が勝つ。

 実際ついさっきまで行っていたバトルも相打ちになったが、現在倒れているシオンに対し僕は元気だ。

 まだまだといわんばかりにシオンは話を続ける。


「それにさ、お前の未完成の術も完成したらすごいだろうな」

「うーん、いまだにうまく制御出来ないけどね」


 回復の他に、もう一つだけ僕の強みとなる術を持っている。

 しかしそれは、完全にコントロールできていなかった。

 シオンとの試合の中で何度も使ってみたが、うまく使いこなせずに失敗ばかりを繰り返していた。


「オレも負けないようにもっと頑張るよ」

「うん、また手合わせしようね! じゃあ家に戻ろうか!」


 そう言って手を差し出し、シオンを立ち上がらせる。

 家のある方角に進みだしたときだった。

 前方にある森の中から、一人の青年が姿を現した。


「……よう」

「あれ、リュウ?」


 その青年とは囚人服を身にまとった僕の仲間、リュウだ。


「……ここ最近、お前ら闘っているらしいな」


 どうやら僕たちの闘いを知っているようだった。


「まあね! あの時みたいに何もできないのはもう嫌だから」

 

 僕が弱すぎるあまり、優しいナースのイッちゃんを命の危機にさらしてしまったことを思い出す。


「……今は試合を行った後なんだよな? それにしてはお前は元気そうじゃないか」

「うん、僕の能力で一日に一回だけ全回復できるんだよ」

「……へえ」


 そのとき僕にはリュウが少しだけ笑ったように思えた。


「……じゃあ、ここで俺と勝負しようじゃないか」

「「……はい?」」


 あまりに突然の申し入れだったので、一瞬理解が遅れた。

 シオンも同じように混乱していた。


「僕が今からリュウと勝負?」

「……ああ。体力は十分にあるんだろ? じゃあやろうぜ」


 リュウがにっと口角をつり上げる。

 リュウと勝負か……。


「いいよ、やろうか!」

「マジで!?」

「……よし」


 シオンはとても驚いているが、体力は大丈夫なので問題はなかった。

 むしろ、リュウとは一度闘ってみたかった。

 いや、単にボコボコにしたいだけだ。

 日頃の恨み、晴らさせてもらうぜ!


「よし、じゃあ広いところへ戻ろうか」


 僕たちはさっきまで戦っていた場所へと戻った。


「じゃあオレは審判でもしてるよ」

「……ああ、頼む」

「うん、お願いね」

「ルールは、とどめの寸前にまで追い込むか、相手に参ったと言わせるか。それでいい?」


 シオンが改めて試合のルールを確認した。


「うん!」

「……了解」

「よし、それでは……」


 僕とリュウが返事をした。

 そして――――


「始め!」

「「ッ!」」


 因縁の闘いが始まる。


 バッ


 まずは僕から動き出した。

 素早く印を組み、術を発動する。


水鉄砲みずてっぽうの術!」


 ババババッ


 手を前に突き出し、相手に向けて大量の水玉を放つ。

 リュウはステッキを取り出し、ヘリコプターのプロペラのように回転させ、水玉を防ぐ。


「……ふん、そんなもんか? もっとこいよ!」

「まだまだ! 吹雪ふぶきの術!」


 吹雪を発生させ、相手を凍えさせる。


「……甘い!」


 しかし、これもまたステッキの回転により防がれてしまった。


「……今度はこっちから行かせてもらうぜ!」


 そう言ってリュウが攻撃を仕掛けてこようとする。

 しかし、リュウは動かない。

 いや、動けなくなっていた。


「……なっ、足元が凍って動けねえ!?」

「引っかかったね、これを狙っていたのさ!」


 シオンとの闘いで学んだことがいくつかある。

 そのうちの一つが、術の組み合わせによる効果だ。

 規模の小さい術でも、このように大きな効力をもたらすようになる。

 さらに、エネルギー消費も少ないので一石二鳥だ。


「まずは動きを封じた、それから攻撃だ! 雷槍らいそうの術!」


 電気でできた槍を作りだし、一気に間合いをつめる。


「この勝負もらった!」

「……なッ!?」


 動きの取れない敵に、雷の槍を突き刺した。

 あっけなかったけど、コンボをうまく使いこなした僕の勝ちだ。

 そう油断した時だった。


「……学ばないな、お前は」

「え!?」


 僕の背後からリュウの声が聞こえ、とっさに振り向いた。

 直後、顔面にきつい一撃をあびせられ吹き飛ばされてしまった。


「……うう、くっ」


 くらくらと揺れる視界の中で、彼の姿をとらえた。


「……リュウが二人?」


 視界が歪むせいだろうか、彼が二人いる気がした。


「……!?」


 いや違う、本当に二人いる。

 僕の術のコンボで動けなくなったリュウと、僕を吹き飛ばしたであろうリュウがいた。


「……驚いた顔してるな。俺が二人いるからか?」


 動けるほうが僕に近づきながら話す。


「……お前のコンボは確かにいいものだった。でも俺のほうが一枚上手だったようだな」

「どういうこと……?」


 僕が質問したその直後だった。


 ボンッ


 動けなかったほうが煙と共に消えた。


「まさか……!?」

「……そう、影分身だ」

「どうして忍者でもない君が忍術なんて使えるのさ!」

「……前に言っただろ、俺は他のやつの技を見て真似できるって」

「あっ!」


 そういえば初めての自己紹介のとき、そんなこと言ってたっけ!

 すっかり頭から抜け落ちていた。

 リュウはさらに告白する。


「……ちなみにここ数日間、お前たちの闘いを観察していたから、ほとんどの忍術は使えるぞ?」

「うそ!?」


 僕たちの闘いは見られていたのか。

 しかも数日間ずっとだなんて。

 囚人服が表しているように、こいつはとんでもない変質者らしい。


「変態め、僕が駆除してやる!」

「……いや、ずっと見ていたわけじゃないからな?」

「うるさい変態、ここで死ねええええ!!」

「……このバカ、人の話を聞け!」


 女の子に被害が出る前に、このストーカーをたたきつぶすと決めたのだった。


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