一心同体(1)
この感覚は……不思議だ。
僕であるのに俺でもある。
僕はリュウ。俺はウシオ。
自分が何者か分からない。
いや、そういうわけでもなさそうだ。
僕は俺だ。俺は僕。
二人で一人。そうだな、オレとでも呼ぶか。
シオンの操る影を呑み込むほどの強い光は収縮してゆき、やがて何事もなかったかのように消える。
光の中から姿を見せたオレを目にして、シオンは顔をしかめた。
「誰だ、お前……ッ」
「オレか? ふぅん……そうだな」
己の手を裏表に返して、全身を見やる。
ふと、戦闘の末に出来た水たまりが反射した。
髪はウシオに似た、センターわけの黒髪。獣人化の影響で白に染まった面影はない。
目つきはリュウの鋭さが反映されていた。顔の左側は三日月型のお面に覆われていて、くり抜かれた穴からは蒼い瞳が覗いている。
服装はウシオの中華風の忍者服をベースにしてあるが細部が少し違う。どこかスーツチックな要素が盛り込まれている。
ウシオとリュウが見事に一心同体となった、その姿。
オレの名は――――
――――直前、オレはシオンの背後に回っていた。
「オレの名はリュウシオだ。覚えておけ」
「ッ!!?」
マヌケと評せるほどに、シオンの表情が崩れた。
シオンでさえ追えない速度だったからだろうな。
いい面だ。
「よっと……」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……ッ!!!
「ぐぼぁ……ッ!?」
影の自動防御が働く前にシオンの横腹に蹴りを入れる。
ようやっと影が現れたところで、次の一手に移った。背中に一発。脇腹に一発。首、背中ふとももふともも、さらに背中。
影が追いつくときには、もう遅い。
一秒間に何十発もの攻撃を叩き込む。
そろそろかわいそうになってきた。
「そぉーらッ」
ドッッッ!!!!
「アアアアア……ッ!!?」
奇声とも取れる叫びをあげながら吹き飛んでいくシオン。
王宮の壁面にぶつかって倒れ込む。
「ふぅ……。疲れるぜ」
一滴垂れる汗を手の甲でふき、一息つく。
正直、ここまで強くなるとは思わなかった。
所詮は即興で作った術だ。貧弱、それか欠陥ありなものだと踏んでいたが……。意外と成功するときはするものだ。
ともあれ、早く倒すに限る。
今のオレはリュウでもあるんだ。『蒼炎の奪盗』だって使えるはず。
この圧倒的速さなら、確実にシオン(悪)の人格を取り除くことが出来る。
「うぅ……テメェ……ッ!!」
「おっ、起き上がってきた」
ちょうどいい。
ここですべてを終わらせるとするか。
オレは指を突き出し、こう宣言してやった。
「これで終幕だ。このニセ――――」
パアァァァ――……
「――――モノやろう!」
「――……モノ野郎!」
…………あれ?
いきなり身体が輝き出したかと思えば、隣から声が聞こえ…………
「「…………なァアアアアアアアッ!!?」」
合体から十秒も経っていないというのに。
僕たちの無敵は、一瞬にして終幕を迎えた。




