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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第1部【王の目覚め編】 - 第3章 それが日常と化していく
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洗練されゆく精神と技(1)

 試合をすることになった僕とシオンは家から少し離れた広い草原に来ていた。


「よし、ここなら思いっきり戦えるな! あとはルールを決めようか!」


 シオンがワクワクしながら言う。


「じゃあさ、相手をとどめの直前にまで追い込むか、参ったと言わせたら勝ちでどう?」

「いいね、そうしよう!」


 僕が簡単に提案し、シオンはすんなりと承諾した。


「「じゃあ……やりますか!」」


 僕とシオンの目つきが変わる。

 白黒の忍者が今、初めて交錯する。


 バッ!


 最初に動きを見せたのはシオンだった。

 彼は僕へと一気に間合いを詰めてきながら印を組み、術を発動する。


猛火もうかの術!」


 ゴウウウウウウウウッ


 シオンの左手から出た炎が激しい音をあげながら襲ってきた。

 僕は瞬時に対応する。


爆水ばくすいの術!」


 右手から大量の水を放ち、襲ってくる炎を打ち消した。

 それと同時に、今度は僕から攻撃を仕掛ける。


雷槍らいそうの術!」

「甘いぜ! 土守壁どしゅへきの術!」


 僕が放った雷の槍はシオンの作った土の壁により消滅した。


「へへ、やるじゃん!」

「シオンこそやっぱり強いね!」


 実力の近い相手を目の前にし、ワクワクが止まらない僕たち。


「「……」」


 一瞬の静寂が訪れる。

 そしてーーーー


「「豪火ごうかの術!!」」


 ゴオオオオオオオオオオオオッ


 同時に術を繰り出し、炎がぶつかり合い均衡する。


「「ぐうううううううう!!」」


 僕は炎を出している腕をもう一方の腕で支える。

 耐えるのに精いっぱいだった。

 一方、余裕のあるシオンは片腕で手裏剣を投げてくる。


「ッ!?」


 僕はとっさになって避けたが、バランスを失ってしまい均衡が崩れる。


「まずい!」

「隙ありだぜ、雷槍らいそうの術!」


 バリバリバリッ


 槍状の電撃が僕を貫く。


「ぐああ!!」


 攻撃をもろに受けた僕は地面に膝をついてしまった。

 そこにシオンが容赦なく襲いかかる。


雷剣らいけんの術。その首もらったぜ!」


 雷の剣を生み出し、膝をついている僕の首めがけて斬りかかる。


 ボンッ


「なに!?」


 煙と共に僕の姿かたちは消えて無くなってしまった。


わりの術さ! 隙あり!」

「なに!?」


 変わり身の術で敵を欺き、頭上から攻撃を仕掛ける。


霧吹きりふきの術!」

「うわっ、目がしみる!」


 口から霧を吹き出し相手の視覚を奪った。

 それからさらに連撃を仕掛ける。


爆風ばくふうの術!」


 ブオオオオオオオオオオオッ


 強烈な風が発生し、入れ替わるような形でシオンが舞いあがり僕が着地する。


「くそ! 目は見えねえし、どっちが上か下か分からねえ!」

「これが僕の修行の成果だ!」


 僕は胸を張り、堂々と言った。


「これで終わりだ! 氷竜ひょうりゅうの術!」


 両手の手のひらを突き出し、必殺沢を発動させる。


 ゴオオオオオオアアアアアアアアアアアッ!!


 氷からできた竜が牙をむき出しにしながら、獲物へと襲いかかる。

 視界を取り戻したシオンが術の規模に驚く。


「なにこれ、やべえ! 負けっちまう!」

「僕の勝ちだ!」

「うわああああああああ!?」


 雄叫びをあげながら氷の竜に食われてしまった。


「やった、勝った!」


 シオンが竜に食べられたところを見て勝利を確信した。

 術の効力が切れ、竜の姿が消える。

 竜の腹の中にいるシオンが落ちてくる姿を探す。


「……あれ? いない?」


 いくら目を細めて探してみてもシオンの姿は見当たらない。

 僕が不思議に思い、気を緩めたその瞬間。


「……甘いよ」


 ザクッ


 背後から何かに刺されたような感覚を感じた。

 そのまま力が抜け倒れる。


「……え?」


 地に伏している僕の目の前には、竜に食われ姿を消したシオンが立っていた。

 シオンは僕を見下ろしている。


「忍者ってのは、相手を油断させたところで背中から刺すもんなのさ」

「……どうやって竜の攻撃から逃れたの?」

影分身かげぶんしんの術だよ。忍者の基本だろ?」


 シオンは当たり前のように答える。


「くうう……惜しかったなあ」

「そうだな。じゃあオレ、イネちゃん呼んでくるからじっとしてるんだぞ?」

「……はーい」


 大きな傷のせいで僕は動けない。

 重症の僕を回復させるために、シオンがイッちゃんを呼びに行こうとする。



 彼が僕に、背を向けた。

 忍者とは、相手を油断させたところで背中から刺すもの……ね。



 ……パキパキパキ



 氷の音が鳴る。




 *



「はあはあ。参った!」


 地面に転がっている一人の忍者が負けを認める。

 しかし、先ほどとは異なり、白い忍者が倒れていた。


「あの術はなんだよ! 反則級に強いぜ!」

「あはは~、思い通りにいく術ではないんだけどね」


 大きな傷を受けていたはずの僕は、今現在きょとんとして立っている。

 傷が無くなっているのだ。


「っていうか、なんであの傷が治ってるんだよ?」


 シオンが疑問に持った。

 しかしながら、当の本人にもよく分かっていなかった。


「一日に一回くらいなら、大きな傷を受けても治るらしいです」


 以前、修行中に大きな怪我をしたのだが、みるみるうちに治ってしまったことがあった。

 きっとレベルが上がったことに関係があるのだろう。

 そんなふうに思っていた。


「ふう、悔しいけど今日は完敗だよ。一本取られた」

「ありがとうシオン!」

「まあ、明日は負けないがな!」

「え、明日もやるの!?」

「当たり前!」


 げんなりする僕とは対照的にシオンはにっこりとした笑顔だった。


「はあ。じゃあ明日もよろしくね」

「おうよ!」


 ガシッ


 固い握手を交わし、隠れ家へと帰宅したのだった。



 *



「……」


 僕は今、脱衣所の扉の前にいる。


「すううう、はああ」


 ガラッ


 深呼吸してから扉を開ける。


「……」


 脱衣所には誰もいない。


「……」


 ヌギヌギ

 バサッ

 ガラッ


 衣服を脱ぎ捨て浴室に入る。


 シャー

 キュッ

 ポチャン


 シャワーで体を洗ってから湯船に浸かる。


「……」


 ジー


 脱衣所と浴室を区切るドアをひたすら見つめる。

 だが、誰もドアを開けることはなかった。


「……」


 チャポン

 シャー

 キュッ


 浴槽から出てシャワーを浴びる。


 ガラッ

 バタン


 浴室から出て脱衣所で着替える。


「……」


 ガラッ

 バタン


「……なんにもなかった」


 ラッキースケベを期待していたが、現実そんなもんですよね。

 な、泣いてなんかないんだからね?



 *



「よし、今日もやろうぜ!」

「うん!」


 翌日を迎えた僕たちは、昨日と同じ草原に来ていた。


「「……いくよ!!」」


 忍者の戦いは、不意に始まる。



 *



 どこからか戦闘音が聞こえる。

 彼は気になり、音源へと急行した。


「「爆風烈火ばくふうれっかの術!!」」


 そこが目にしたものは、白黒の忍者が互いの術をぶつけあっているところだった。


「……へえ、おもしろそうなことしてるじゃん」


 囚人服の男は口端をつり上げた。


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