カーテンコール(2)
リュウの叫びに応えるよう、ナツミたちが駆けつけた。
シャバーニとユウが先立って、リュウとフリーダの間に入り込む。
それを目視したフリーダは攻撃の姿勢をひっこめた。
「おっと……これはこれは。お仲間が大集合じゃねえか」
「お前がこいつをこんな目に……ッ」
地に伏している青ざめたイーグルを横目に見てユウは歯ぎしりした。
「別にいいだろ? 俺様たちにとっちゃ裏切りもんなんだからよ」
「…………つくづく救えない男だ」
シャバーニが舌打ちする。
周りを見てか、フリーダの足が一歩下がった。
「こりゃあんまり良ねぇな……『幻獣』のデータももらったことだし、引くとするか」
「逃がすかよッ!!」
「…………フンヌッ!!」
背を向けたフリーダを追おうとして二人が動き出そうとした。
しかし、
「あばよ」
フリーダを遮るように分厚いマグマの炎でできた壁が生まれる。
あまりの高熱に二人はたじろいだ。
炎の壁はすぐに消滅した。
その先にフリーダの姿はない。
「…………くそッ、逃がしたか」
「仕方ねえよ。あの壁は突破出来やしない」
「……イーグルッ!!」
敵の姿を見失った二人の耳にリュウの叫びが飛び込んできた。視線をやると、仰向けになったイーグルの手をリュウが握っている。
彼の瞳は月光に反射して蒼く輝いていた。
「もう、よしてよリュウ。これじゃあ……ライオネルのもとに安心していけない」
「……まだ行かなくてもいいじゃねえか! 俺たちにはお前の力が必要なんだよッ!」
「……はは。それも悪くないね」
蒼い瞳はかすんでいた。
そこにリュウの姿は映っていない。
「リュウ……っ」
「ここはそっとしてあげましょう、ナツミ」
リュウの背中に触れようとするナツミをハナが優しく制止する。
その様子をリコを背負ったアールとビイが苦しそうに見ていた。
「ねえ……リュウ」
「……なんだよ、イーグル」
「一つ、頼みごとがあるんだ」
「………………」
「――――僕の託したその『僕たちの瞳』で、『僕たちの世界』を見守ってくれないか?」
あの時、どんな心情でリュウに瞳を渡したのか。
僕たちとは、いったい誰のことを指しているのか。
決まり決まらなかった彼の意思が、固まる。
ユラユラと揺らぐ紅い炎が、冷静な蒼さに変わっていく。
「……わかった。わかったよ、イーグル。『お前たち』の意思は『俺たち』が継ぐ」
「――――――――」
彼を囲む彼らの顔が、彼の背中を押した。
彼の頬が綻ぶ。
彼は、親友のもとへと旅立った。
「……お前たちの意思は、俺たちの中で生きている」
一人、継承者は紡ぐ。
「……この戦いの終わりを、この目で見届けてやるよ」
月夜の下、彼は謳う。
裏口での死闘はこれにて幕を閉じた。




