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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第13章 つかんだもの
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カーテンコール(2)


 リュウの叫びに応えるよう、ナツミたちが駆けつけた。

 シャバーニとユウが先立って、リュウとフリーダの間に入り込む。

 それを目視したフリーダは攻撃の姿勢をひっこめた。


「おっと……これはこれは。お仲間が大集合じゃねえか」

「お前がこいつをこんな目に……ッ」


 地に伏している青ざめたイーグルを横目に見てユウは歯ぎしりした。


「別にいいだろ? 俺様たちにとっちゃ裏切りもんなんだからよ」

「…………つくづく救えない男だ」


 シャバーニが舌打ちする。

 周りを見てか、フリーダの足が一歩下がった。


「こりゃあんまり良ねぇな……『幻獣』のデータももらったことだし、引くとするか」

「逃がすかよッ!!」

「…………フンヌッ!!」


 背を向けたフリーダを追おうとして二人が動き出そうとした。

 しかし、


「あばよ」


 フリーダを遮るように分厚いマグマの炎でできた壁が生まれる。

 あまりの高熱に二人はたじろいだ。

 炎の壁はすぐに消滅した。

 その先にフリーダの姿はない。


「…………くそッ、逃がしたか」

「仕方ねえよ。あの壁は突破出来やしない」

「……イーグルッ!!」


 敵の姿を見失った二人の耳にリュウの叫びが飛び込んできた。視線をやると、仰向けになったイーグルの手をリュウが握っている。

 彼の瞳は月光に反射して蒼く輝いていた。


「もう、よしてよリュウ。これじゃあ……ライオネルのもとに安心していけない」

「……まだ行かなくてもいいじゃねえか! 俺たちにはお前の力が必要なんだよッ!」

「……はは。それも悪くないね」


 蒼い瞳はかすんでいた。

 そこにリュウの姿は映っていない。


「リュウ……っ」

「ここはそっとしてあげましょう、ナツミ」


 リュウの背中に触れようとするナツミをハナが優しく制止する。

 その様子をリコを背負ったアールとビイが苦しそうに見ていた。


「ねえ……リュウ」

「……なんだよ、イーグル」

「一つ、頼みごとがあるんだ」

「………………」



「――――僕の託したその『僕たちの瞳』で、『僕たちの世界』を見守ってくれないか?」




 あの時、どんな心情でリュウに瞳を渡したのか。

 僕たちとは、いったい誰のことを指しているのか。

 決まり決まらなかった彼の意思が、固まる。

 ユラユラと揺らぐ紅い炎が、冷静な蒼さに変わっていく。



「……わかった。わかったよ、イーグル。『お前たち』の意思は『俺たち』が継ぐ」

「――――――――」


 彼を囲む彼らの顔が、彼の背中を押した。

 彼の頬がほころぶ。




 彼は、親友のもとへと旅立った。




「……お前たちの意思は、俺たちの中で生きている」


 一人、継承者は紡ぐ。


「……この戦いの終わりを、この目で見届けてやるよ」


 月夜の下、彼は謳う。



 裏口での死闘はこれにて幕を閉じた。

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