包帯水着褐色少女(3)
「お前すげえな! 修行とかもしてねえんだろ!?」
「え、うん……で、でもこれは『獣人』の力のおかげ」
チーターの獣人を一撃で仕留めたライくんとヒナタちゃんはお互いに顔を見合わせていた。
この二人……けっこうお似合いだったりして……。
「……むふふ」
「どうかしたかアミさん?」
「べっつにぃ~」
「んむ……?」
これまた二人合わせて小首をかしげている。
年下ってかわいいですね。
戦場に似つかわしくないニヤケ顔を浮かべる一方で、
「……あ、あなた、『獣人』なの…………?」
青ざめたユーリが恐る恐る尋ねてきた。
もちろん、けも耳モフモフ尻尾のヒナタちゃんにだ。当の本人はびくっと肩を揺らしてわたしの後ろに隠れた。
こっそりと覗きながら、
「そ、そうだよ…………」
人見知り全開だった。
妹に欲しい。
「ばっか! 敵にそんなこと言ってどうすんだ!」
「あっ、そっか……っ! わたしついうっかり……」
そんな二人の仲睦まじいやりとりを眺めているとついほっこりしてしまう。
ただ、ここは死地だ。気を抜いたら、そこで最後となる。
でも、どうにもユーリの様子がおかしい。
彼女の握るステッキがカタカタと小刻みに震えている。前髪は額にびっしょりと張り付いていた。
ついには……、
「……わたしと同じような子が……獣人? クロ様……あなたはいったい…………」
こんな小言をこぼしていた。
………………。
「ねえ、ユーリ。一つだけ、聞いてもいい?」
「…………敵であるあなたに答える必要なんてないのだけれど」
「いいから。ね?」
「……何よ」
ぶすりと頬をふくらませながら視線をそらして承諾してくれる。
やっぱりまだ子供なんだよね、この子も。
私は、私個人の聞きたいことを、包むことなく、尋ねかけた。
「あなたは――――誰かのために戦っているの?」
彼女の目が一瞬だけ大きくなる。
しかし、それを境にして表情は消えた。
「――――そうよ」
……そっか。
だったら、もう、引くことはできないな。
「ライくん。ヒナタちゃん」
「ん?」
「なんですか……?」
隣の二人が、そろって見上げてくる。
「あの子――――ユーリは敵なんかじゃない。彼女のこと、助けてあげよう」
「「りょうかいです!」」
その声に、嫌悪はいっさい見られなかった。
純粋な白さが、そこにある。
引くことはできない。
だから前に進んで、黒く染まってしまった鎖を解いてあげるんだ。




