獅子は葛藤する(3)
鳥類と恐竜の入り混じったような鳴き声が夜空に響く。またたく星々は怯えて泣いているようだった。
怪獣となったイーグルが風を切り裂き急降下してくる。
「かかってこい、イーグル……ッ!!」
その真正面にライオネルが立ちはだかった。
約三倍もの大きさの相手を目の前にしてもひるむことは無い。
「はぁあああああああ……ッッ」
上腕二頭筋、胸筋、背筋、ふともも、足の指先まで。ありとあらゆる身体の部位に力を込める。
メリメリメリと肉が音をたて体が一回り大きくなった。筋肉が膨張して血管が浮かび上がっている。
「キシャアアアアアッ!! キシャアアアアアッ!!」
耳をふさぎたくなるような金切り声が鼓膜をつんざく。
「ォおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
距離が近づくにつれ相手の速度が上がったような錯覚を受ける。
ライオネルは雄叫びをあげ、
ド……ッッッ!!!
「ぐぅぬぉおおおおおおおおお……ッ!?」
直撃の寸前で身体を翻し相手の首に腕を回した。肉塊のぶつかる鈍い音が響きライオネルの身体に衝撃が駆け巡る。
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ――――ッッ
凄まじい砂煙があがるが徐々に速度は落ちていった。
「キシャア! キシャア!」
「力比べは俺の勝ちだな、イーグルッ!!」
ギリギリとはいえ、ライオネルは飛び回るイーグルの動きを制止させることに成功した。
次は、
「わたくしの出番ですわ!」
ハナがメイド服の裾をまくりあげ大地に手を伏せる。
「森の精霊たちよ。我の命を順守したまえ」
彼女がつぶやくとほぼ同時に、森の木々が触手のように伸び始めた。地面に入った亀裂からも根っこが飛び出している。
それらはいっせいにイーグルのもとへと向かった。
翼、首、足、腕、腹、胸、間接。
ありとあらゆる箇所に巻き付いていく。
「これでお仕事はおしまいですわね」
あっという間にイーグルの動きを奪ったハナはパンパンと手に付いた土を払い落とした。
その所作には、まだまだ余裕がある。
「キシャアアアアアッ!!」
「……チェックメイトだぜ、イーグル」
奇声を発する彼の前に佇むリュウ。
彼の右手には、淡く蒼い炎が灯っていた。風の影響を受けて、ゆらゆらと揺らいでいる。
彼は、静かに告げた。
「…………『蒼炎の奪盗』」
炎と一体化した半透明な腕がイーグルの胸を貫いた。




