獅子は葛藤する(2)
翼を広げ、ジェット機のように加速するイーグル。
「……急かしやがってッ。作戦くらいたてさせろよな……ッ!!」
「ふせろッ!!」
ライオネルの必死の声が鼓膜を激しく揺らす。
リュウとハナは瞬時に地面へと身を伏せた。
――――ギュンン……ンッ!!
風の斬り裂く音を認識した次の瞬間に吹き飛ばされてしまうほどの轟風が訪れる。それはリュウたちの髪をかき乱し、伏せた身体を強制的に起き上がらせた。経験のない事態に足もとがおぼつかない。
危機一髪ではあったが、一撃必殺の攻撃を何とか免れることができた。
しかし、これを連続で回避するには無理がある。
「……ハナ! ライオネル! 作戦があるッ」
「待っていましたわ!」
「よっ、キャプテン!」
「……うるせぇ! 早く集まれ!」
リュウのもとへ集まった二人にこれから行う作戦を話す。とはいってもそれは作戦と呼べるほど難しいものではなかった。
簡潔にまとめればリュウの能力でイーグルの『幻獣』の力を切除するということ。ナツミたちにも説明した、ルンの『堕天使』の力を取り除く作業と同じ内容だ。
「そんなことできんのかよ!?」
案の定ライオネルが疑念を抱く。
リュウは包むことなく正直に答えた。
「……できるかどうかは分からねえ。ただ、やってみるしかねえだろ」
「イ、イーグルをもとの姿に戻せるかもしれないんだな……?」
「……あぁ」
目と目が合う。視線が交差した。
数秒経ったところで、
「第二波が来ますわ!」
月の照る夜空を旋回し、イーグルが再び襲い来る。それはまるで、一つの流れ星のようであった。願い事ではなく死を運ぶ流れ星。
そんなもの、叩き壊してやる。
「……いいかお前らッ! チャンスは一度きりだッ!」
「俺が隙を作って」
「わたくしが動きを止めます!」
「……十分だ。あとは俺に任せな……ッ!」
バケモノに変わり果てたイーグルを助ける。
いや、離れていった彼の心を取り戻すんだ。




