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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第1部【王の目覚め編】 - 第3章 それが日常と化していく
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ようやっと隠れ家(2)

「では、第二回くじ引き部屋割り大会を開催いたしますわ~!」

「「「「……えっ?」」」」


 ハナちゃんの突然の宣言に焦りだす僕たち。

 部屋割りにいい思い出を持たない僕たちは、あまり乗り気にはなれなかった。


「……?」


 唯一、イッちゃんだけは気にしていないのだった。


「ハナ~、普通に部屋決めしたらいいんじゃな~い?」


 ナツミちゃんが提案する。

 しかし、ハナちゃんは譲らない。


「ダメです! 普通に決めたら男女で分かれちゃうじゃないですか!」

「それでいいじゃ~ん。私たちでガールズトークしようよ~」


 ハナちゃんがおされ、ナツミちゃんが優勢になる。

 いい流れだ、このままいけば平穏な睡眠を得ることができる!


「それもすごく魅力的ではありますが……。それだと好きな人にアタックできないではありませんか!」

「っ」


 ナツミちゃんの動きが止まる。


「す、好きな人に……?」

「そうです!自分から行動を起こさないままでは何も変わりません!」


 雷が落ちたような衝撃を受けるナツミちゃん。


「じ、自分から……」


 ちらっとリュウのほうに目を向けた。

 それからしばらく考え込んだ後、ナツミちゃんが口を開いた。


「やっぱりくじ引きで部屋を決めよっか!」

「「「えええ!?」」」


 男どもが悲鳴を上げる。


「では多数決をとりますわ!」

「あの! あたしは今晩も出かけますので参加できないです」


 リコちゃんが申し訳なさそうに言う。


「仕方ありませんわ、お仕事ですもの」

「ありがとうございます!」


 リコちゃんがハナちゃんの気遣いにお礼を言う。


「では、多数決をとります! くじ引きに賛成の方は挙手を!」


 女の子たちがみんな手をあげる。

 一方で男たちは黙り込んだままだ。


「では殿方は反対というわけですね?」

「うん」


 男性陣がみんな頷く。


「困りましたわ~」


 そう呟きながら、何か考え込むハナちゃん。

 そして何か思いついたようで、ハナちゃんはシオンを指さしこう言った。


「シオン、わたくしと寝ることができる可能性もありましてよ!」

「ッ!?」


 シオンに衝撃が走り、うつむきだした。

 まずい、こいつ僕たちを裏切ろうとしている!

 ここは説得してなんとか引き留めるしかない。


「ねえシオン、僕たちを裏切るの!?僕たちは親友じゃないか!」

「……そうだぜシオン、唯一信頼できるのはお前だけなんだからな!」


 珍しいことにリュウまで必死になっている。

 シオンの肩が震えている。

 きっと心の中で葛藤しているんだ。


「頼むよシオン!」

「……ああ、俺からも頼む!」


 僕たちはシオンの肩を掴んだ。

 そうして彼は顔を上げる。

 満面の笑みだった。


「「……シオンっ!」」


 僕たちの絆が勝ったんだ。

 男同士の友情に乾杯!


「オレは女の子たちに賛成かな!」


 シオンは笑顔のまま僕たちを裏切りやがった。


「……お前、己の欲に屈しやがったな!」


 リュウが裏切り者を罵倒する。

 しかし、シオンも負けていない。


「仕方ないじゃないか、オレだって男なんだ! 好きな人にアタックしないで何が男だ!」

「……っ」


 リュウの動きが止まる。

 それからナツミちゃんのほうをちらっと見た。

 あれ、なんかデジャヴを感じるんですけど……。


「なあリュウ、お前も変わってみないか?」

「……」


 リュウが黙り込む。

 これはまずい!


「ねえ、リュウ、僕たちこそ本物の親友だよね! 僕たちの絆はダイヤモンドより硬いよね!」

「……は? そんなものねえよバカ」


 この野郎……ッ!!

 リュウは僕のことなんか微塵も気にせずに考え込む。

 そしてついに。


「……シオンがそこまで言うなら俺もくじ引きにしてやるよ」


 最後の希望が消え去った。

 ダメだ、ここで信じられるのは自分自身だけなんだ。

 僕の心は邪悪に染まった。


「……悪いな、ウシオ」

「オレたちは男だから」

「貴様らあああああああああ!!」


 眼から血の涙が噴き出す勢いで叫び声をあげた。


「それではくじ引きで決定ですわ!」

「くうううううう!!」


 こうなったら仕方ない。

 腹をくくって勝負に出るしかないだろう。

 ペアに男子がきたら僕の勝ちだ。

 その時はそいつをコケにして笑ってやろう。

 邪悪に染まった僕の心の中で誓いを立てた。


「ではくじをつかんでください!」


 ハナちゃんが番号の書かれた割りばしを差し出し、各自がつかみ取る。


「それでは行きますわ! せ~の!」

「「「えい!」」」


 ハナちゃんの合図で全員が一斉に割りばしを抜き取る。

 みんなが自分の番号を確認する。


「わたしは1ですっ!」「私は2!」「わたくしは3ですわ!」


 まずは女の子たちが発表した。


「あっ、1だ!」「……俺は2」「オレは3だ!」


 一方で男性陣のほうも宣言した。


「「「ッ!!?」」」


 その場に電撃が走り抜けた。

 それぞれがシンキングタイムに入る。


 ナンバー1ペア

(イッちゃんとかあ……温泉でのこと、ちゃんともう一度謝っとこうかな)

(コーくんとっ……ハナちゃんに負けないように、わたし頑張りますっ!)


 ナンバー2ペア

(……ナツミとペアか……しゃあねえ男らしくいくか!)

(ほんとにリュウとなっちゃったよ~、どうしよ~!)


 ナンバー3ペア

(やった、ついにハナと寝られるんだ! いい夢見れそう!)

(まさかシオンと当たるなんて……! 夜にこっそりコーさまの部屋に忍び込みましょう!)


 各々がバラバラの想いを胸に抱く。

 そしてハナちゃんが指揮を執ってくれた。


「で、では各部屋に移りましょうか!」

「「「……はい」」」


 みんな緊張した声色だった。

 それぞれがそれぞれの部屋へと向かい出す。


「ではあたしはこれで失礼します!」


 その一方で、リコちゃんは何も見えない闇の向こうへと消えていったのだった。


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