ソウル・オブ・キング(3)
「あっ! やっと見つけた!」
そんな少年の声が聞こえてきたので、みんなそちらのほうへ視線をやった。
とげとげしい金髪に碧い瞳は美少年と呼んでもいいほどだった。身体は幼いながらもどこか引き締まっている。スポーツ少年ともいえるその男の子からはリコちゃんを連想させた。
「はぁはぁ……。王宮になんかいないじゃんかぁー……」
少年は息を切らして僕らのそばにたどり着く。
「だ、誰なのかなっ?」
「わたくしにもさっぱりですわ……?」
イッちゃんとハナちゃんが顔を見合わせて首をかしげた。
どうも二人の知り合いでもないらしい。
「ともすれば……ヒナタちゃん?」
「わ、わたしもしらない……っ」
わたわたと手を振って自分ではないことを伝える。
当然、僕にも心当たりはなかった。いったい誰を探していたんだ、この子は……?
この間、シオンが僕らを攻撃することは不思議なことになかった。どうも金髪の少年を凝視して停止している。
息の整った少年はビシッとある人物を指さして確認した。
「あんたがハナってやつだな! オレンジの髪をしたアゲハ蝶のかんざしをつけてる」
「は、はぁ……。確かにわたくしがハナですが……」
指さされて困り果てるハナちゃん。
金髪の少年の言動からするに、彼もハナちゃんとは初対面のようだ。なのに、ハナちゃんの名前を知っていた……?
「君はいったい……」
「え、俺?」
彼は親指を自分に向け白い歯をむき出しにしてこう名乗った。
「俺はライ。リュウってやつにハナを連れてこいって頼まれたんだ」
「「リュウっ!?」」
思ってもみなかった名前が飛び出し僕たちは仰天する。
この子はあのバカのことを知ってる?
謎が謎を呼ぶ展開に僕の頭はパンク寸前だ。
しかし、心当たりがあるようでハナちゃんは妙に唸っていた。
「なぜ、リュウがわたくしを呼んでいるのですか?」
物事の核心をつく質問にライ君の表情が一転して変わる。
彼はまくしたてるようにこう告げた。
「王宮の裏口で『革命軍』との交戦が始まってるんだ。援護が欲しい」
「――――っ」
信じたくない言葉だった。
どういった経緯かはわからないが、離れ離れになったリュウが今、どうも戦っているらしい。しかも、この王宮の建物をはさんだ裏口でだ。
すぐにでも駆けつけたいとの衝動に駆られるが自身の状況を顧みる。
少し距離のある場所で執事のギンと妖精ドレスのアミちゃんが必死になって刃を交わしている。
どちらの相手も強敵。戦力なんて一つもさけられる余裕はない。それに目の前には底の知れないシオンが立ちはだかっている。
けれど、それではリュウたちが危ない。
まさに板挟みの状態。片道を行けば崖が待ちもう一方の道を行けば果てしない海が広がっている。
では、どうするか。
――――僕がなんとかすればいい。
「ハナちゃん」
「なんですの、コーさま?」
「ハナちゃんはリュウのところへ駆けつけてくれないかな?」
僕は、僕が得た解答をハナちゃんに提示した。
ハナちゃんは何かもの言いたげな様子だったが、それを遮って指示を続ける。
「イッちゃんはギンのサポートをお願い」
「わ、わたしがっ?」
「うん」
「わかったっ」
ハナちゃんとは対照的にイッちゃんからは積極性を感じられた。きっと、みんなの力になれるのが嬉しいのだと思う。いつかの時に、そんな小言をもらしていたようだから。
あとは……っと。
「ライ君。もしかして、戦えたりする?」
「まぁ、それなりには力になれるだろうぜ」
「よし。それじゃライ君はここに残って僕たちと戦ってくれないかな?」
「いや……まぁ俺が向こうに行っても変わらないだろうし、それでもいいけど……」
ライ君の力がどの程度のかは知らないけど、今は藁にでもすがりたい状況なんだ。
これで布陣はそろった。と、僕が一息ついた時ちょんちょんと背中をつつかれているのに気が付いた。
その指はフワフワの毛に包まれている。
「ヒナタちゃん?」
「わたしも……たたかいますっ」
その瞳はいつもおどおどした彼女ではなかった。