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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第10章 たどり着いた庭で
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ソウル・オブ・キング(2)

 死の未来を見た。

 少女たちが惨殺される、地獄絵図を。


「まずい……まずいまずいッ!!」


 次の一手は、間違いなく未来を引き起こしたあの黒い渦だ。放たれてしまってはあの未来を迎え入れることになる。

 僕は迷うことなく彼女たちの元へと引き返した。


「コーくんっ?」

「なぜこちらに向かってくるのですか……?」


 女の子たちが首をかしげているが、それどころじゃない。

 間に合え……ッ!!


「アァ……」


 シオンのうめき声が聞こえてくる。

 直後、シオンを中心として黒い爆発が巻き起こった。


「――――ッ!!」

 

 半径百メートルにも及ぶ大爆発。

 それは黒い雨の塊だった。原始的な戦術で用いられる矢の雨に近い。その正体は鋭利な形をした影だ。影は周囲の木々のみきを切り裂き、大地をえぐり、粉塵ふんじんを引き起こす。

 当然、僕たちもその渦中にいた。

 女の子たちをかばうように敵に背中をむける。


氷陣壁ひょうじんへきの術……ッ」


 パキパキパキ……ッ


 術を唱えると同時に周りの空気が凍てつき始めた。空気中の水分が凝固し金属にも劣らない強度で結びついていく。

 最終的にそれは僕たちを守る壁と化した。透明なかまくらといえば分かりやすいかもしれない。


「みんな大丈夫!?」

「ぁ……」

「…………っ」

「な、なんとか大丈夫ですわ……」


 圧倒的な出来事の連続に状況が飲み込めないイッちゃんとヒナタちゃんの代わりにハナちゃんが返事してくれる。確かに茫然としてもしょうがないのかもしれない。かまくらの外はまるで宇宙だ。

 一歩でも踏み出してしまえば死んでしまうような真っ暗闇。

 それはまた、魚の群れにも見えた。数え切れないほどの影が周囲を飛び交っている。


 バキ……ザクっ


 影がかまくらの表面を削り取っていく、が、壊れることはなかった。

 じきに雨はやみ、術を解いて僕たちは外の空気を吸う。


 ――――息を呑んだ。


 影の渦のおさまったその中心に、変わり果てた姿のシオンがたたずんでいたからだ。


「シ、シオンですの……?」


 髪はもはや灰色でなく真っ黒に染め上げられていた。

 黒い忍者服を着ていたら間違いなく僕と瓜二つだろう異なった箇所を挙げるとするならばつり上がった目尻くらいか。たれ目の僕とは違って鋭い印象を与える。


「シ、シオン! お前、本当にどうしたんだ!?」


 ハナちゃんに続いて声をかけてみる。

 すると――――


「dかh9えこいぐえあmだじぇおだl、え」


 理解不能な言語が返ってきた。言語というより音と表現したほうがしっくりくるかもしれない。


「ちっ。どうやらまだ『半覚醒』のようだな」

「クロ……ッ!」


 一つまばたきしただけでその男は黒く染まったシオンの隣に立っていた。

 シオンの様子を一瞥し、期待外れだと言わんばかりに吐き捨てる。


「半覚醒、ですって?」


 彼の言葉を拾ったハナちゃんがクロをにらみつけた。

 しかし彼は気にすることなく再び姿を消す。


「おいッ! 逃げるなッ!!」


 だが、そこに反応はない。

 僕たちの意識は自然とシオンのほうへと向いていた。

 虚ろな瞳には誰の姿も映っていない。

 くそっ! 結局力づくでおさえつけるしかないのか!

 何か別の方法がないのかと模索し始めたところで、


「あっ! やっと見つけたっ!」


 王宮の中から変声期前の少年の声が聞こえてきた。

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