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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第10章 たどり着いた庭で
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忍者と影の衝突(2)


「……今油断したよなァ、お前?」


 隙をついてシオンの腹部へと拳を叩き込もうとしたところでそんな声が耳に入った。

 ぞくりと背筋が凍り攻撃を中断して緊急回避する。

 コンマ一秒。

 僕が身体をのけぞったその部分に何本もの黒い針のようなものが左右から交差した。


「…………ッ!」


 もしあのまま攻撃していたらと思うと額に冷や汗が浮かぶ。

 無数の針の正体は実体を伴った『影』。シオンが『王』としての記憶を取り戻した時に得た新しい能力だ。修行の時、彼の影を操る能力には相当苦戦した。

 それにしても……と僕は距離を置いた位置でシオンを見据える。

 くすんだ灰色の髪になったシオンに意思はなかった。交戦する前は確かに魂の抜けた人の抜け殻だったのだ。

 今の一瞬。

 誰かがシオンの身体の中にいた気がした。

 それも、シオンとは全く別の異なった誰かが。

 たまらなくなった僕は気づけば再び彼の名を呼んでいた。


「シオン! お前、本当にシオンなのか!?」


 もしかするとシオンの姿に化けた『革命軍』のメンバーなのかもしれない。

 僕たちを不利にさせる相手の作戦。

 そう疑いの意味をこめた呼びかけたのだが、


「………………」


 彼の返答は何一つなかった。前と同じ抜け殻のようなままだ。それではますます懐疑かいぎの念を抱いてしまう。

 顔をしかめて様子をうかがっていると僕のそばにバラバラになっていたみんなが集まってきた。

 ギンとアミちゃんは僕の両隣に並びシオンをにらみつけた。

 イッちゃんとヒナタちゃんは僕の後ろに隠れている。イッちゃんの服の裾をつかんでいるヒナタちゃんを横目にして、怖いのを必死になって我慢してくれているんだと気づく。

 ここで僕が迷っていては余計な心配をかけるだけかもしれない。

 僕は再び拳に力を込め歯を食いしばる。

 ギンが状況を確認してきた。


「ウシオさん。遠目から見ていて疑問に感じたのですが、彼は本当に王なのですか……?」

「僕にもわからない……。ただこの鎧の上からでも感じたことがある」

「それはなに、ウシオくん?」


 反対側のアミちゃんが尋ねてくる。

 僕は氷の鎧に包まれた胸の辺りを手でおさえ、震えそうになる唇で言葉を紡いだ。


「早急にことを片付けないと、取り返しのつかないことになる」


 誰の手も声も届かない遠いところに行ってしまう。

 そんな気がしてならなかった。

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