表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第10章 たどり着いた庭で
176/505

はじめての王宮(1)

「いやぁ。急がないと日が暮れちゃいそうだよね」

「そうだねっ。はやく王宮に向かわないとっ」


 晴れ晴れと広がる青空が夕焼けに差し掛かろうとする奇妙な時間帯。

 僕はイッちゃんたちと共に急ぎ足で王宮に向かっていた。


「わ、わたしが王宮なんてところに……いいのかな……?」


 僕の隣できゅっと裾をつまむヒナタちゃんがそう不安そうにこぼした。

 大丈夫ですよと執事のギン(今の性別は男)が優しく微笑みかける。


「ふぁ……お兄ちゃん、かっこいい」

「そ、そんなことありませんよ」

「まったく……こうやって女の子を仕留めていくんだねギンは」

「変な言い方はよしてくれないかアミ!?」


 ふくれっつらしながら彼を横目で流し見るアミちゃん。

 いや待って、アミちゃんひそかに悪い顔してる。完全にからかってるな。

 ようし。


「ねぇ、ギン」

「なんですか、ウシオさん」

「男の僕でさえも、君にほれちゃいそうだよ」

「……え、ホられたいですって? 変態ですねウシオさんは」

「僕は一言もそんなこと言ってないっ!」


 なんつー聞き間違いをするんだ!

 僕にアーッされる趣味はこれっぽっちもないというのに!


「ふふっ。楽しそうだね、ヒナタちゃんっ」

「うん!」


 ぴょこぴょこと獣耳を動かすヒナタちゃんの頭をイッちゃんはお母さんの様に柔らかくなでた。

 僕たちが王宮に向かう理由はまず一つ。

 リュウやシオンたちと合流し、『革命軍』を倒すこと。

 それとこの旅の途中で、もう一つ理由のが増えた。


「もふもふだね~ヒナタちゃんの尻尾は!」

「く、くすぐったいよアミお姉ちゃん……っ」


 半分獣人と化してしまったヒナタちゃんを治す薬を見つけることだ。

 この事実を彼女の母親に伝えたところ、泣きながらにお願いしますと頭を下げられた。どうしようもなかった獣人の症状を治す希望を見出したことに涙を流したのか。それとも、娘との別れに、なのか。

 本当の真意をはかることはできないが、僕たちの戦うべき理由がまた一つ増えたのだ。

 やるしかない。


「おっ、あれは」


 何かに気づいたようで、ギンが手を眉の上あたりにかざして遠くを眺めた。もしかしてという高揚感がひ弱な心臓を刺激する。

 僕の推測は現実のものとなった。


「見えましたよ。王宮の入り口です!」


 この言葉を聞いた瞬間、僕たちはいっせいに歓喜の声をあげた。ひとまずの目標が達成される喜びだ。

 リュウたちと別れてから色々なことがあった。

 獣人となったヒナタちゃんと知り合い、一緒に旅することになった。

 少し前に会ったアミちゃんや話に聞いていたギンと仲間になることもできた。

 そして、赤く染まったハナちゃんの本当の姿を、垣間見た。

 彼女には聞きたいことがたくさんある。リュウたちに話したい土産話みやげばなしも数え切れないほどにあった。

 それがようやく成就するんだ。


「それでは入城の許可を得てきますね」

「あっ、そんなのがいるんだ」

「もちろんです。私は執事ですから、顔パスでいけますけどね」


 ここにきて初めてギンが王宮に仕える凄い人なんだなという感想をもった。

 手続きは一瞬にして終わり、僕たちは王宮へと続く大きな城門をくぐり抜ける。


「……うわぁっ!」


 その先で広がる光景に僕たちは息を呑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ