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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第9章 裏口での死闘
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裏切りの幻獣(2)

 全てを呑み込む殺人的な暴風がリュウたちを喰らおうとさし迫った。

 誰もが手を出せない状況の中、一人拳を放った者がいる。


「…………フンヌッ!!!」


 その者はリュウたちの敵であるはずだった。

 しかし彼らの前へと横入り、隆々(りゅうりゅう)とした毛むくじゃらの剛腕をふるう。小さなハリケーンはその衝撃と打ち消し合う形で消滅した。残り風がリュウたちの髪をいたずらになびかせる。

 最初に口をこぼしたのはリュウだった。


「……お前、どうして――――シャバーニ」

「…………」


 背中に声がかかるが、彼は気にするそぶりも見せなかった。

 ただ一言だけ、ポツリとこぼす。


「…………私は『軍人』である前に、一人の『人間』なんだよ」


 直後。

 言葉をかき消すように砂塵が舞い、シャバーニが敵陣へと突っ込んだ。


「なんだテメエッ!? 俺様たちを裏切るつもりかよ、シャバーニッ!!」

「…………子供の命をもてあそぶぶようなやからなど、もはや味方ではないッ!!」


 マグマのようにグツグツと煮えたぎる炎を纏ったフリーダと正面からぶつかり合う。骨肉が衝突しいくつもの鈍い音が大気中に響いた。

 残されたリュウたちは、この状況をいまだ理解できずにいた。


「……どういうことだ? なんでシャバーニがフリーダと戦っているんだ……?」


 あの軍人堅気ぐんじんかたぎのシャバーニが『革命軍』を裏切るなど想像だにできない。

 だが実際、彼は仲間であるはずのフリーダと死闘を繰り広げている。

 そこに姑息なたくらみがあるとは思えない。

 あるのはただ一つ、殺意だけだ。


「なにはともあれ、味方が増えたのは幸いなんじゃねえのか?」

「……かもしれないですね」


 ユウの言葉をむりやりに呑み込み、リュウは目の前の課題を解決することに専念する。

 シャバーニはフリーダの相手をしている。

 残っているのは、『堕天使』の力をもつルン。

 それに何かの『幻獣』の力を手に入れたイーグルの二人だ。

 ライオネルとイーグルを戦わせるのには無理がある。

 そうなれば――――


「……なぁ、ユウさん。アンタとライオネルはルンの相手をしてくれないか? 俺はイーグルと戦う」

「お、おいリュウ。やっぱり俺がイーグルと戦うべきなんじゃねえのか……?」


 そうライオネルが申し出るが、リュウは否定した。


「……ダメだライオネル。お前にはまだ迷いがあるように見える」

「で、でもよッ!」

「……いいかライオネル。中途半端な覚悟じゃ誰も救われないんだ」

「…………ッ」

「……覚悟を持たなければ後悔まみれの人生になるぞ」


 厳しい言葉だということは重々承知していた。

 しかしリュウはこれでいいと思った。

 これ以上、誰かを失うのは嫌だから。

 ライオネルのこともそうであるし――――イーグルだってそうだ。


「……よし。それじゃ各自戦闘に入ってくれ。先制を受けては痛いからな」

「あぁ。死ぬんじゃねえぞ、リュウ」

「……フラグ立てないでくれますか、ユウさん…………」


 苦笑いしつつも、二人はゴッと拳を突き合わせた。その様子をライオネルはただ見ているだけだった。

 覚悟を決め敵に立ち向かおうとする。

 このとき、ふと王宮内にとある人物を探しに行ったライがそろそろ戻ってくるころだと思った。


「……期待してるぜ、ハナ」


 この戦いで勝鬨かちどきをあげるためには人数が必要だ。そのためにライに呼んできてもらっているのがハナだった。

 この世界をRPGに例えるとするなら、ハナはすでにカンスト状態。

 彼女がいれば百人力だ。

 リュウの目標は彼女がくるまで耐えきることだ。


「……イーグル」


 死んだ瞳をした彼を見据える。


「……どうして」


 何を考えたところで現実が変わるわけではない。

 今はただ解決の糸口を見つけることに専念するしかないのだ。

 歯を食いしばって覚悟を決める。



 ――――――ドッッッッ!!!!!!!!!



 ここから離れた、どこか遠くのほうで爆音が鳴り響いた。少し遅れて地面が揺れる。音の震源地からして、ここ裏口から王宮をまたいだところ――つまり王宮の入り口あたりかと推測する。


「……まさかッ!!」


 心当たりがあった。

 とある人物たちがもうじきこの王宮に到着する予定だったから。


「……ウシオ……ッ!!」


 にへらとふざけた笑みを浮かべるバカの顔が脳裏をよぎった。

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