表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第9章 裏口での死闘
170/505

小さな幻獣(1)

 術の負荷があまりにも大きく口から吐血したリュウ。

 そんな彼を嘲笑したフリーダにライオネルは拳をぶち放った。


「……はぁ、はぁ」

「大丈夫か、リュウ?」


 真っ青な顔で息絶えだえとするリュウは今にもひざから崩れ落ちてしまいそうだ。心配するライオネルが肩をまわして支えようとするが、リュウはそれをさえぎる。


「……わ、わりい、ライオネル。俺はいけるぜ……」


 彼は歯を食いしばって背筋を伸ばし忌まわしき宿敵に向き直った。

 ライオネルはその強がりな背中に一抹の不安を覚える。

 誰かを守ろうとして立ち上がるのはいい。

 向こう見ずな気概きがいも悪くない。

 ただ、自らを犠牲にして誰かを救おうとするのは、エゴでしかない。

 もしも、その時が訪れたとするなら――――


「……その時は、俺が軌道修正してやる」


 とライオネルは誰にも聞こえないような声で呟いた。


「クソッタレ……ッ! なかなか面白くなってきたじゃねえかよオイ!」

「チッ。俺の一撃をくらってもピンピンしてやがる。タフな野郎だな」

「……それがやつの厄介なところだ」


 まるでずっと前から知っているガキ大将の愚痴をこぼすように言う。

 実際、リュウとフリーダは因縁めいた繋がりを持っていた。

 それは現実の世界で命を失ったときよりもはるか前の話。

 ウシオやイネ、ユウがお米だったように、リュウにも同じような時期があった。

 つまり――――女の子に食べられる前までは、現実世界で『生きていた』のだ。

 リュウとナツミはその頃からの付き合いで。

 フリーダとも腐れ縁のようなものだった。

 本当に、『腐った縁』だ。

 だからこそ、ここで断ち切らねばならないとリュウは決意していた。

 彼はみにくい運命にむかって激昂げきこうする。


「……フリィダァァあああああああああああああッ!!!」

「クソオモシレエぜ、リュウゥゥうううううううううううううううううッ!!!」


 同時に対照的な性質を帯びた炎を身に纏う二人。

 互いの名を叫び、大地を疾走する。


 ――――直後。



 ビリ……――――ッ




 肌に伝わる空気の質が一変した。


「やっているな、君たち」


 二人からちょうど同じ距離に一人の人物が姿をあらわした。線で結び合わせれば三角形が浮かび上がるような位置取りだ。

 黒装束を身に纏いフードを深くかぶった男を知らぬ者などいない。


「……クロッ!!」

「あの野郎……ッ!!!」


 革命軍の幹部もしくは総司令官にあたいする、『革命』の中心にいる人物・クロだ。

 しかし、リュウは違和感を感じていた。

 この異様な空気は、この男から発せられているのではない。

 他に誰かいる、と。

 次の瞬間――――それはいた。


「…………ッ」


 息を呑む。

 いや、息することを忘れるくらい圧倒的な存在感だった。

 それはちゅうに浮いていた。

 外見はリコやライたちと同じくらいだ。

 クロとお揃いの黒装束を身に纏った小学生くらいの男の子。ただし、瞳に光はやどっておらず、虹色の闇が支配している。背中からは自身の身体よりも大きな黒翼こくよくが生えていた。

 触れてしまえばそこから侵されてしまうような、禍々しい黒。

 誰も、目を離すことができなかった。

 ただ一人、クロの声だけがその空間に響き渡る。


「これぞ、私たちの最高傑作――――」




「――――『堕天使』の獣人だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ