獅子がいれば百人力(2)
炎竜の鎧をまとったリュウは合流したライオネルとともに駆け出した。
大地を強く踏み出しフリーダとの距離を一気に詰める。
「リュウっ! 作戦はあるのかッ!?」
「……とにかくぶっ倒せればそれでいいッ!!」
「いい作戦だッ!!」
並走していた二人が軌道を変えた。
リュウが先走り、ライオネルがその背中に続く。
「ケハハハハハっ! いいねいいねェッ! 最高に面白そうだ……ッ!!」
禍々しい炎を身に纏った銀髪のフリーダが高笑いする。
彼はボールを掴むような手の形をして前に突き出し炎の塊を放とうとした。
「おせぇぜェえええええええええッ!!」
「おっ?」
炎の塊が噴出されるまでにライオネルは猛スピードでフリーダの懐へと飛び込んだ。その姿はすでにライオンのように変化している。獣人の力を解放し、足の力を飛躍的に爆発させたのだ。
「オラぁッ!!」
「よっとっ」
ライオネルが太く鋭い爪をつきたてて右手を振り下ろす。
しかしフリーダはバックステップをとり軽々と避けた。
「甘ェぜ」
「……テメエがなッ!!」
「あんっ!?」
後方へと下がったフリーダの背中にリュウの声がかかる。
振り向いたその先には雷剣を手にしたリュウがちょうど切っ先を突き刺そうとしてた。
ドゴウッッ!!
だが、雷剣による一撃はフリーダの炎の盾によって阻まれてしまう。
「あっぶねェ……」
「……チッ」
奇襲に失敗したリュウはフリーダから距離をとりながらライオネルの隣へと回った。
今の一瞬で得た情報を即座に共有する。
「……どうやらあの炎はフリーダと別の意思を持っているようだ」
「なるほどな。いわゆる自動防御ってやつか」
つくづく相性の悪い敵だとリュウは悪態をついた。隙をついて攻撃をしかけても自動防御が発動する。
かといってリュウの得意とする炎で威力のある術を使っても吸収されてしまうだけだ。さきの奇襲で雷剣を使ったのにもそういった理由があった。
どうやって攻略するか。
懸命になって頭を働かせる――――しかしそれは突如としてやってきた。
「……ゲボ……っ」
「お、おいっ!? どうした!?」
変な音が鳴るのと同時にリュウが口元に手をあてたのだ。
指のすき間からはどす黒い血がポトポトと垂れ流れていた。