獅子がいれば百人力(1)
「うォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「ぐお……ッ!?」
雄叫びをあげた人物がフリーダの脇腹へと突進する。おかげでリュウは絶体絶命の状況からまぬがれることが出来た。
リュウをピンチから救い出した人物とは、
「……ライオネルッ!!」
「おうよッ! 久しぶりだなリュウッ!!」
焼けた肌に隆々とした筋肉が特徴のライオネルだった。
牢屋でリュウと別れてから、彼は王宮内を調査していたはずだ。そのライオネルがここにいるということは何か情報をつかんだということだろう。
「……ライオネル。何か収穫があったか?」
「それはあとで詳しく話す。それに、質問したいのはオレの方だぜ」
飛んでいったフリーダから目をそらさず背をむけたままライオネルが言う。
「この状況はいったいどういうことなんだ? 向こうで戦ってるやつも仲間なのか?」
離れたところで激闘を繰り広げているシャバーニとユウを指さし問う。
フリーダに意識が向きすぎていてすっかり頭から抜け落ちていた。
ユウは大丈夫なのだろうか。ゴリラの獣人と化したシャバーニはあまりにも強敵だ。
見る限り、形勢は均衡していた。いや、ユウが一方的に守りに入っているようだ。幻覚なのか、ユウが赤いオーラに包まれている気がする。
しかし、リュウは問題ないと判断した。
よく目を凝らせばユウの表情には余裕が見られる。もしかすると彼はいまだ能力を隠しているのかもしれない。
「……アイツはウシオの兄のユウってやつだ。実力は相当だから問題ないと思うぞ」
「ウシオのやつに兄貴なんていたのかっ! 驚いたもんだなッ!」
話を聞いて顔だけこちらに向ける。
が、すぐにフリーダのほうへと戻った。
「まぁ、なんだっていいぜ。俺たちはヤツを倒さなくちゃいけねえからな」
「……もう少しで他にも増援が来る。それまでの辛抱だ」
さきほどまでライがいた場所を確認してそう口にする。彼はもうここにはいない。
とある人物を呼びに行ってもらったのだ。
ちなみに、ナツミはリコを抱えるアールとビイのそばに立ち位置を変えていた。
「バーカ。増援なんて必要ねえよ」
「……ケッ。大層な自信だな」
「ガハハっ、まあなってあぢいッ!?」
炎の鎧をバンバンと叩いたライオネルがふうふうと息を吹きかけて熱を冷ます。
「……そんな調子で大丈夫か」
「大丈夫だ、問題ない」
フラグ立てるなよとリュウは心で突っ込んでおいた。
なにはともあれ、今は目の前の敵に集中しなくてはいけない。
「ケハハハハハッ!! 二人がかりで俺様にたてつこうってか!? おもしれェッ!!」
「気に食わねえ野郎だな」
「……同感だ」
全身に紅蓮の炎をまとわせたフリーダがケタケタと肩を揺らす。
ライオネル・リュウの二人が拳を握りなおした。
「……いくぜ、ライオネルッ!!」
「任せなッ!!」