悪しき因縁(4)
「……本物の炎、だと……ッ?」
リュウの声に紅蓮の炎を身に纏ったフリーダがニヤリと嘲る。
メラメラと燃えるリュウの炎とは大きく異なり、フリーダの炎はマグマのようにドロドロとしていた。まるで塩分や脂質を取りすぎてしまった血液のようだ。
頬に一筋の汗を流しリュウは気圧されないよう足に力をこめる。
「……それがテメエの能力なのか?」
「ケヘヘヘッ! これが俺様の能力――――炎を自在に操る『炎喰』だッ!!」
「……『炎喰』だと?」
両 腕を天高く広げ、真っ赤な空さえも嗤うように仰いだ。そんなフリーダに対しリュウはギシリッと奥歯をかみ殺す。
意中のフリーダはさも知らず、長い鼠色の髪を振り下ろしてはこう言った。
「ここで問題ですッ。『炎喰』はどういった能力でしょうか?」
「……ふざけるな。炎を自在に操るんじゃねえのかよッ」
「ブッブーッ! それじゃあ半分しか点を与えてやれねえんだよなァ」
胸の前で腕を交差させ、大きなバツ印を作ったフリーダがそれはそれは遊園地のアトラクションで楽しむ子供のように笑う――――アトラクションで人々を殺すテロリストとして、だが。
「俺様の能力の特徴はもう一つあるんだぜ?」
「…………まさかッ!」
リュウには心当たりがあった。
フリーダに対し幾度となく炎を振りかざしていたが、彼に触れた瞬間、炎が消滅したしまったのだ。
それはつまり。
「……テメエの隠された能力ってのは『炎を吸収する』ことだったのかッ!!」
「イグザクトリー」
人差し指をつきたててリュウを指さすフリーダ。
相性が悪すぎるとリュウは思わず悪態をついた。
リュウは誰かの技をまねる能力と、それの進化形態である『奪盗』を所有している。しかし『奪盗』はエネルギーの消耗が激しいため、残り数回程度でしか使用できない。
つまり、ウシオたちの忍術で戦うしかないのだ。
とはいえど、そこが問題となってくる。
多種多様な忍術ではあるが、人によって得意となる忍術の分野がある。ウシオなら氷、シオンなら雷、リュウなら炎といったような感じだ。
炎を吸収し、自身の力へと変換させるフリーダは炎を得意とするリュウのにとって最大の敵だった。
落ち着けよ、俺。必ず突破口があるはずだ。
こう心に言い聞かせるが、どうにも落ち着くことが出来ない。
『炎竜鎧』の副作用なのか。メラメラと燃える竜の鎧だけがリュウの焦りに反比例するかのように燃えさかる。
「隙だらけじゃねえか?」
いつの間にか手の届く範囲にフリーダが近寄っていた。
右手の中でグツグツと炎が煮立っている。
「……しまっ――――」
「おせェよ」
炎の塊が、リュウの腹部を抉りこもうと迫りくる。
今度こそ、本当にヤバイ。
――――だが、神はリュウを加護した。
「うォおおりやァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
雄叫びが聞こえる。