悪しき因縁(3)
「……炎竜鎧の術…………ッ!!!」
ゴオオオオオオアアアアアアアアアアアッ!!!
リュウを囲むようにして円状の豪炎が生じる。
轟ッ!! っと二つの首を持つ双炎竜が夕焼けに咆哮をあげた。ヘビが獲物にくらいつくようにシュルルルと炎竜がリュウを包み込んでいき、
「……炭にしてやるよ、クソヤロウ」
炎竜の特徴がところどころに見られる炎の鎧を身に纏ったリュウが姿をあらわす。
多量の火花越しにリュウの姿を目にして、フリーダの表情がニヤリと歪んだ。
「イイネェ……。その態度、その炎――――最高じゃねえか」
「……やってやるッ!!」
リュウは身をかがめて音速のごとく走り出した。風の抵抗に炎の先から火花がメラメラと桜のようにこぼれる。
瞬きする間のなく、リュウはフリーダの一歩手前まで距離を詰めた。
「……くれてやるよッ!!」
「おっ?」
アッパーを浴びせられたお礼にボディーブローを仕掛ける。
燃えさかる炎が拳にさらなる力と速度を与えた。
「……ちっ!」
受け止めきれないと判断したフリーダが左の手のひらでリュウの拳をはじいた。
すると、例のごとく拳の炎が消滅した。
――――やはりな、とリュウは推測が間違っていなかったと確信を得る。
より確実な証拠を得るためリュウは追撃を試みた。軽く跳びはね空中で一回転し勢いを加えてかかとを振りかざす。竜のごとき三本指の足がフリーダの脳天めがけて落ちた。
「……この勢いは止められねェだろッ!!」
何があってもこの攻撃を防ぐことはできない。
「甘えよ」
フリーダは頭上から迫りくるかかと落としを腕を交差させて受け止める。
かかとの炎がシュボゥっと消滅した。
「……これも予想通りだぜ、フリーダァッ!!」
炎が消えたからといっても攻撃の威力はすさまじい。人力で止められるほどリュウの炎竜鎧は弱っていなかった。
「……もらったァッ!!」
ググッ! と足に力をこめて腕のクロスを崩しにかかる。
しかし。
「だから甘えって言ってんだよ」
フリーダの余裕の笑みは崩れない。
次の瞬間ッ。
ボォオッッ!!!
「……なッ!!?」
フリーダの腕の交差部分からマグマに似た炎が爆発し、リュウの足は押し返されてしまった。
バッ!! と後方へと下がり、何が起こったのかその目で確認する。
「ケヘヘッ!」
フリーダは炎に身を包んでいた。リュウの炎が衣服に燃え移ったわけではない。
明らかにリュウとは違う炎。
彼の炎より紅蓮味が強い、ドス黒い血のような炎だった。
「これが俺様の、本物の炎だ」
手の中に炎を生み出し、フリーダが嗤う。