子猫のお目覚め(2)
「リュウ、あんたってばもぅ~……っ!」
「……返す言葉もないです、はい」
アールの話を聞き終え、ナツミは腰に手をやり頬をふくらませた。こっそり逃げようとしていたリュウが引きつった笑みを浮かべ冷や汗を流している。
「よしわかった! 今度からは私とお風呂に入ろう!!」
「……ぶぅぅぅぅぅうッ!!?」
突拍子もないナツミの提案にリュウは思わず吹き出してしまった。その場にいたリコやアールも固まっている。
自分の言葉の意味を今頃理解したのか、ナツミはぷしゅぅ~っと頭を沸騰させ言い訳を並べた。
「やっ、だってリュウ一人じゃ迷っちゃうだろうし背中とかも流してあげられるじゃん!? それに裸の付き合いって大切だしっ!!」
「ナツミ何言っちゃってるの!?」
わなわなと自我を失ったリュウに代わりアールがツッコミをいれる。
二人のやりとりをながめ、リコがはいっと小学校の授業のように挙手した。
「じゃああたしがリュウお兄ちゃんと一緒に入るです!」
「ダメよリコちゃん! この人はロリコンらしいから!」
「ろりこんです?」
「そう、ロリコンなのよ!」
「……余計なことを教えるなっての!」
アールとリュウ、さらにナツミの口論はさらにヒートアップしていく。
その様子をはたから見ているハナと二人のメイドさんが口々に話す。
「まったく……忙しい人たちですわね」
「いいじゃない。楽しい人たちですわ」
額に手をやりため息をつくハナに姉のリンが肯定した。
一方、青髪のビイは一人でぼーっとしている。
「お姉さま。わたくしはこの子のことがいまだによくわかりませんわ……」
「ふふっ。ビイちゃんは個性的ですからね」
ハナが眠そうにするビイを見下ろしながら言う。
彼女が王宮に仕えていた頃、メイドはここにいる三人だけだった。そのときアールはまだメイドになっていない。
当時からハナはビイのことがよくわからなかった。
悪い子ではないと知っていたのだが。
「――――――」
「え?」
「どうしたのですか、ビイちゃん?」
もごりと独り言をこぼしたビイの口元に、姉妹そろって耳を近づける。
「……ハーレムが目の前で広がっている…………」
な、何の話ですか……。
ハナとリンは二人して思った。
「確かに……私たちを含めると六人の女の子に囲まれる男の子ですものねぇ」
リンが感心するように頬に手をあてた。
ハナは再びため息をつき、頭を垂らす。
「少なくともわたくしは他にもっとハーレムを作りそうな殿方を二人知っていますわ…………」
脳裏に白黒と対照的な二人の忍者の姿を思い浮かべたのだった。