獣娘を誘拐しました(1)
「ロリコン?」
「え?」
僕の姿を見るや否や、部屋にいたアミちゃんがそう口にした。
言われた瞬間何のことだかわからなかったが、僕の背中に注がれる視線で理解する。
「あぁ、ヒナタちゃんのことね! なんなら話は簡単だよ」
「どういうこと?」
「僕が倒して連れて帰ってきたの」
「け、警察……現行犯……!!」
「どしてっ!?」
獣人になったヒナタちゃんを倒して一旦連れて帰ってきただけなのに! なぜロリコン呼ばわりされなくちゃいけないんだ!
「まったく、ウシオさんってば……。誤解してますよ、アミ」
「あっ、ギン……って、その女の人は誰?」
僕に続いて部屋へと入ってきたギンを目にしアミちゃんが疑問を浮かべる。ギンは背中にヒナタちゃんに似た女性をおぶっていた。
ギンと一緒に戻ってきたイッちゃんが代わりに答える。
「この女性はねっ、コーくんがおんぶしてる子のお母さんだよっ」
「――――」
イッちゃんの言葉を聞いた途端、アミちゃんの顔から血の気が引く。
わなわなと身体を震わせていた。
えっ、突然どうしたの?
「ウ、ウシオくん……子供だけでなくママまで誘拐しちゃったんだ……」
「いやだからそうじゃなくて」
「『ロリコン』に『マザコン』とは――――感服ッス……ッ!!!!」
「アミちゃぁぁあああああああああああんッッ!!!」
僕のレッテルに新たなる属性が追加された。『シスコン』に『ロリコン』に『マザコン』、さらには『覗き魔(女湯)』。どこまでいけば許しをもらえるのだろうか。
神さま。どうかこれ以上は追加しないでください。
「そういえばアミ。ウシオさんは私との入浴で興奮していらしたようですが」
「『ホモ属性』も追加だね…………ッ!!」
「もうお婿にいけなぁぁぁぁぁああああい!!」
こういう星のもとに生まれた僕は運命から逃れられないようだ。
「わたしならもらってあげるのに…………っ」
「ん? 何か言ったイッちゃん?」
「ふぇっ!? なななな、なんでもないよっ!?」
「???」
不自然なまでにきょどるイッちゃん。いったい、どうしたんだろう……?
なにはともあれ、僕たちは背中で眠る親子を敷布団に寝かせた。それから隣のへやのテーブルを囲み、四人で話し合いをおこなう。
まず最初の話題となったのはあの親子はいったい誰なのかということだった。
「え? のぞき見した家の見知らぬ親子だよ?」
『覗き魔(女湯)』が、『覗き魔(場所不問)』にグレードアップした。