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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第6章 白い街で子犬を拾う
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子犬の少女(3)

 公園で倒れ込んでいるヒナタちゃんのそばに、二人の男女がたたずんでいた。

 黒のタンクトップを着た二十代くらいの男は服の上からでもわかるくらいに引き締まった肉体をしている。ねずみ色のボサボサの髪型がオオカミの印象を与えた。

 一方でピンクの髪色をした女性は黒いワンピースに白い手袋という奇妙な服装だ。ウエーブのかかった髪を後ろでわえていて、妙な大人の色気がする。


「おい、メンデレ。検査はまだ終わんねえのかよ」

「うるさいわね。黙って待ちなさい」


 検査、だって……?

 メンデレと呼ばれた女性は男を適当にあしらって、倒れている獣人のヒナタちゃんに手を伸ばす。

 僕は瞬時に声をあげた。


「あんたたち、いったい何やってん――――」

「フリーダ」

「あいよ」


 僕の声をさえぎり、フリーダと呼ばれた男が即座に襲いかかってくる。


「な……っ!?」


『忍者』である僕以上のスピードで距離をつめてくる。

 無駄のないモーションで、彼の拳がとんできた。

 術を出してる暇がないッ!

 そう判断した僕は両腕を交差させて相手の拳をうけとめた。

 ゴッ!!と鈍い音が骨に響く。


「ひゅぅっ、お前やるじゃん」


 拳をもどして一旦距離をとるフリーダ。

 リコちゃんをさらったあの大男ほどではないが、こいつも相当手強てごわそうだ。


「………………っ」


 ジリジリと睨み合い、間合いをとる。

 ザッザッと、公園の砂が音を立てた。

 ふわっと、木枯らしが舞う。


 ――――今だ……ッ!!


 足のばねを爆発させ、先手を取ろうと計った。

 しかし、


「ワオォォォオオオンンンッ!!!」

「ヒナタちゃん……っ!?」


 僕は攻撃を中断せざるを得なかった。

 ヒナタちゃんが目を覚まし、雄叫びをあげたからだ。

 その姿を一目見たメンデレがため息をつく。


「はぁ、こいつも失敗のようね」


 ……失敗だと?

 そういえば僕とフリーダとかいう男が対峙しているとき何かしていたような。


「お前、ヒナタちゃんに何をした!?」

「べつにィ。あなたに教える必要はないでしょう?」


 まるで楽しみにしていた本の内容が期待外れだったときのようにメンデレが気だるげに舌打ちする。

 その態度が僕の怒りをさらに煮えたぎらせた。


「ヒナタちゃんに何をしたんだ!? 答えろよ!!」

「うるさいわねェ。ただ確認しただけでしょうが。こいつが私たちの探し求めてるやつかどうかを」

「そのために極悪非道な薬を打ったんだよなぁ、メンデレ。自我を失っちゃうくらいの激しいやつ♪」

「……ッ!! ふざんけんな…………ッッ!!!!」


 パキパキパキ……っ!


 僕の怒りに呼応して肌が割れていくのがわかる。

 コイツらは……半殺しにシナクチャ……。

 脳内で、もう一人の僕がささやきかけてくる。


「うぐッ。出てくんなッ」


 ひどい頭痛に思わず頭をおさえる。

 そうしていると、メンデレたちに動きがあった。


「さて、それじゃあ退却ね」

「おい、メンデレ! 俺様をあの野郎と戦わせろよ!」

「声がでかい。暴走する獣人に殺されるわよ?」

「ケヘヘ、俺様が逆に殺してやる!」


 フリーダが舌を出し下品に笑う。

 一瞥したメンデレはそれはそれは嫌そうに顔を背けた。


「クロ様に罰を下されてもいいの?」

「うひゃっ! そいつは勘弁だわ」

「でしょう。それじゃいくわよ」


 僕に背を向けヤツラはこの場を去ろうとする。

 ニガスカヨ……。

 その背中を食いちぎろうと、僕は息をひそめたが。


「あなた、その子を放っておくつもり?」


 首だけをまわし、メンデレがそうニヤリと忠告する。


「……チッ!!」

「フフっ。それじゃあね」


 そう言い残して彼らは姿を消した。


「くそっ……」


 アイツらが何者かだったかはわからない。

 だけど、アイツらのせいでヒナタちゃんの意識が完全に失われてしまった。

 もう、戦って拘束するしか方法はない。


「とりあえずは様子を確認して――――――」


 そうやってヒナタちゃんのほうへと振り向いた瞬間、



 ガブリッ



「あぐぁ……ッ!?」


 獣人と化した彼女に飛びつかれ、首元に牙を突きつけられた。

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