女の子の特権(3)
みなさん、ここで一つ、想像してほしい。
透き通るほどに白いプリンが二つ、お皿の上にのっている。スーパーで売っている普通のものよりも少しサイズは小さめ。
その質は三ツ星シェフがこしらえたもののように上品だ。アクセントをつけるように蜂蜜色のカラメルがかかっていて。飾り付けられたピンクのチェリーが、双丘のてっぺんを強調していた。
そしてなぜか、川上から桃が流れてくる情景が。
「…………女……の…………カラダ?」
強張る唇から自然と言葉を発していた。
「……そんなにジロジロ見ないでください、ウシオさん」
「……へ? ……うわぁぁぁあああごめん…………ッ!!!」
女の子の身体をしているギンの恥じらう姿を見て本能的に顔を手で覆う。
とはいえど指のすきからチラリと垣間見てみる。
しかし、裸体のまま立ち上がったギンは、タオルで胸から下腹部までを隠した……ぁ。
見えなくなったことを少し残念に感じながら、僕は恐る恐る尋ねてみる。
「……ギン……お、女の子だったの?」
「あっ、いえ……その何と言いますか…………」
頬を染め、もじもじと身体をくねらせるギン。そのたびにタオルが揺れて、僕の官能をつかさどる神経が刺激された。鼻血がァァァ……っ。
ぴくぴくする鼻を押さえつつ、僕は意識を保とうと努力する。
「は、はやく答えてくれないかな……っ。僕はもう、もちそうにない…んだ…」
「えっ、あっ、すみません……」
(-"-)こんな渋い顔をしたり、(; ・`д・´)こんなよくわからない顔をしたり、はたまた(=゜ω゜)こんな顔をしたりと。
変幻自在にコロコロと表情を変えてはタオルを揺らす女体のギン。
「はやくしてえぇぇぇぇぇぇぇぇええッ!!」
「ハ、ハイッ!! 実は私、男女どちらの性別にもなれるんです……ッ!!」
僕の苦労を知らないギンがついに隠していた事実を告白した。
途端。
勢いに任せた告白のせいで、ギンの全裸を覆っていたタオルがふわりっと持ち上がり。
瞬間。
僕の頭の中は小ぶりの高級プリンと美しい桃に支配される。
ブシャアアアアアアアアアアアッッッ!!!
「――――あっぱれ」
「ウシオさん……っ!!?」
戦国武将の最期みたいに男前な顔つきで僕は猛烈な鼻血を噴出させた。
慌てて駆け寄ってくるギンの胸の先っちょが僕の腕に触れる。
こぷ……っ
かわいい血の塊が鼻からもれた。
「あれっ。またコーくん鼻血出してるっ?」
「ちょっ!!! そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんじゃない……ッ!!?」
朦朧とする意識の中、女湯の方からそんな会話が聞こえた気がした。