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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第5章 王宮へ触れていく
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地下での仮説(3)

「イーグルは自ら進んで『革命軍』に入っていった」


 リュウとナツミが絶句する。

 ライオネルによると黒装束の男・クロを追いかけて王宮に来たライオネルたちは、地下の『ある部屋』へとたどり着いたらしい。

 そこに入るや否や、イーグルが血相を変えたそうだ。


「その後俺たちはゴリラの獣人に倒されてこの牢屋にぶち込められた。毎日毎日拷問のフルコースさ」

「そんな……」


 クリスマスやらなにやらで楽しんでいた間に、彼らが過酷な目に遭っていたことを知る。話を聞くナツミの手が震え、リュウは歯を食いしばり何かにこらえていた。

 ライオネルの話は続く。


「ある日のことだ。イーグルの檻の前にあの黒装束の男が現れてな、なんか話し込んでるだよ」

「……クロがイーグルをそそのかしたってことか?」

「断定はできない。だが、それが決め手で決心したのは間違いなさそうだ」


 イーグルがライオネルを裏切って革命軍に加勢する。

 リュウはそのことが信じられなかった。太陽と月のような関係。誰の目から見ても、ライオネルとイーグルは十年来の友だった。イーグルが離れたのには、きっと何かしらの理由があるに違いない。

 リュウが深く考え込んでいると、ライオネルが慌てて付け加えた。


「勘違いはしないでくれよ? 俺が言いたいのはそこじゃない。イーグルのことは今でも信じてるからな」


 ガハハっと、ライオネルは高らかに笑う。


「……じゃあ、お前は何が言いたいんだ…………?」

「前置きが長すぎたな、すまんすまん! 俺が言いたかったことはな、ただのアドバイスなんだ」

「アドバイス?」


 ナツミがコクリと首をかしげる。


「お前ら、これから王宮内を捜索するんだろ? だったら、ここの階にある『ある部屋』から調べたほうがいいぜ」

「……『ある部屋』? それって、イーグルの顔が青ざめたっていう、アレのことか?」


 リュウの問いかけに、ライオネルはそうだと頷いた。


「『革命軍』のことを知るにはちょうどいい。おっと、俺の口からは喋らねえがな」

「……なんでだよ?」

「直接見たほうがいいからだ。精神的に多少キツイかもしれねえが、『革命軍』と戦う覚悟を決めるにはもってこいだ」


 意味深なセリフに、リュウとナツミを顔を合わせて首をかしげる。


「そう不思議そうな顔をすることはない。その部屋はこの道をまっすぐいって右に曲がったところにあるからな」

「……まっすぐからの右だな?」

「リュウは方向音痴なんだから。間違えないでよね~」


 ナツミの言葉に、リュウは思わず明後日の方角を向く。

 とここで、ライオネルがナツミの顔をじっと見つめた。


「ん? なになに?」

「あっ、いや別に……」

「ちょっと、気になるじゃ~ん。今私の顔見つめてたでしょ~?」

「……ああん!? ライオネルテメエ……ッ!」

「お、おいリュウ! ものすごい形相で睨み付けてくんなって!?」


 ナツミのことになったら我を失うリュウ。

 陰でナツミが照れていた。


「だからいやらしい目で見てたわけじゃねえよ!? ただ、急に明るくなったなと思って……」

「……ばっ、おいっ!」


 リュウに注意され、ライオネルがしまったと後悔した。

 ナツミは一瞬、何を言われているか分からない顔になる。

 が、すぐにはにかんだ。


「……ふふっ。私はもうオッケーだよ?」

「……い、いや。でもお前、過去のトラウマが……」


珍しく狼狽するリュウに、ナツミは笑顔を向ける。

フンっと、ちっちゃな力こぶをつくって私は大丈夫だとアピールした。


「私だって子供じゃないんだもんっ。っていうか、お礼を言うのはこちらのほうだよ」

「……は、はぁ……?」

「私、リュウからいつもすっごい勇気をもらってる…………だから――――」



「――――ありがとうね、リュウ。そして、これからもよろしくお願いします」



 ぺこりと、探偵らしい帽子を取って丁寧に頭を下げる。


「……ん? ……んん???」

「ガハハハハハッ! こいつもウシオたちと一緒だな」

「まったくだよ~……。類は友を呼ぶなんてよく言ったもんだね……」


 ついていけない事態に、リュウは目を白黒させる。

 と、ライオネルが二人に背中を向けた。


「んじゃお熱い仲を見せてもらったところで、俺はおさらばさせてもらうぜ」

「……俺たちと一緒に行動しないのか?」

「ちょっと気になることがあるからな。まぁ王宮内で調べるつもりだから、またあとで合流しようぜ」


 ライオネルはそう言い残し、手を振って闇の向こう側へと姿を消していった。

 姿が見えなくなったところで、不意に声が飛んでくる。


「…………”誓いのキス”とかは、もうちょっとロマンチックな所でしろよー」

「「するかバカァァァァァァァァァァアアアアアァァっ!!!」」


 息ぴったりな二人の叫びとともに、ライオネルの気配は完全に消えた。


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