地下での仮説(2)
「シオンが処刑だって!? おまっちょっ! まじふざけるんじゃないわよ!?」
「……お前はオネエにでも目覚めたのかッ!?」
鉄格子越しに、リュウたちがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。
それを横から楽しんでいるナツミがフォローした。
「落ち着いてライオネルさん。今のはあくまでも仮説だから! でしょ、リュウ?」
「……あ、あぁ。さっきも言ったろ? これは俺個人の推測だって」
「そ、そういえばそうだったな……すまんすまんっ!」
ガハハっと、ライオネルは誤魔化すように無理やり笑う。彼の笑い声が地下室内に虚しく響いたのはきっと気のせいではないだろう。
「……こんな調子でイーグルはよく一緒にいられるよな……」
やれやれとため息をついたと同時に、リュウは吐いた息を呑んだ。
「……お、おいライオネルっ! イーグルのやつはいったいどうしたんだよ!?」
ふと思えば、ライオネルといつも行動を共にしているイーグルの姿がどこにも見当たらない。奇しくも、リュウの声は空虚な地下室の闇の中へと消えていった。
ライオネルが難しい顔をして、こう言う。
「一つ確認しておきたいことがあるんだが……」
「……な、なんだ? イーグルのことと何か関係があるのか……?」
「まぁな」
ライオネルがあぐらをかいたまま腕を組んだ。
「それで何を確認したいの?」
ナツミが何気なしに催促すると、意外にも、ライオネルは簡単に口を開いた。
「何も変なことを聞くわけじゃない。ただ、お前さんたちにこの牢屋を脱出する術があるのかと思ったもんでな」
ガチャッ
キィ……っ
「開けたよ?」
「……手際がいいな、ナツミ」
「えへへ~」
「………………は?」
まるで泥棒の不法侵入を目撃してしまったかのように、ライオネルはあごを落とした。
言葉も出ないライオネルに、リュウが説明してやる。
「……別に驚くことは無いぞ? ナツミは『警官』兼『探偵』だからな。鍵をつくるなんて卵かけご飯をこしらえるようなもんだ」
「えへへ~。ほらっ、ライオネルさんの分も」
「あ、ありがとうございます……」
自信満々なナツミに、恐縮するライオネル。なんとも対照的な画だった。
ナツミに続いて牢屋から出たリュウが、のっそりと同じように出るライオネルに尋ねかける。
「……確認したところで、結局何を言いたかったんだ?」
「そうだな……俺たちにも色々なことがあったんだが、かいつまんで言うと――――――」
「イーグルは自ら進んで『革命軍』に入っていった。あいつはもう、俺たちの味方じゃない」