地下での仮説(1)
「ところでリュウ」
「……ん?」
ライオネルが尋ねた。
「お前ら全員シャバーニとかいうやつに負けてここに連れてこられたんだろ? だったらなんでシオンがいないんだよ」
「……シオンは俺たちとは別のところに連れていかれた。きっと、あいつが王様だからなんじゃないか」
「お、王様……?」
「……ああ。王様」
オウム返しのようなやりとりが続く。
不思議そうにしているリュウとは裏腹、ライオネルはぱちくりと瞬きを繰り返していた。
「えェェェェェェェェェェエエエエエエッ!? あいつが王様だとォォォォォォッ!!?」
「……いッ!?」
トンネルの中で爆発でもあったのかと疑ってしまうほどの声量に、リュウはあわてて耳をふさぐ。
黙り込んでいたナツミも目を見開いてライオネルのほうを見た。
しかしながら、当の本人はそれどころではない。
「おまっ、ちょっ! 嘘つくんじゃねぇぞ! 俺は騙されないんだからねっ!?」
「……本当だバカ、大声出すんじゃねえよ! ってか驚きすぎて口調変わってんだけど!?」
とち狂ったライオネルがツンデレ風に逆ギレする。
ゴリゴリマッチョなおっさんのツンデレポイントなど、メーターを振り切ってマイナスだ。
――――と。
「……ぷふっ。今のは面白かったかも」
「「…………!」」
ふさぎこんでいたナツミに、少しばかりの生気が戻ったのを二人は見た。
彼らもつられて笑みをこぼす。
少しばかり穏やかな雰囲気になったところで、リュウがあっと思い出す。
「……そういえば。シオンが王様だったころの記憶を取り戻したのって、ライオネルたちと別れた後だっけか」
「そうだね~。赤鬼の化け物と戦った時以降だよ」
ナツミが三角座りから四つん這いのまま、四足歩行でリュウに近づいていく。
探偵服の胸元から放たれる刺激に目を背けながら、リュウはライオネルにシオンの過去を詳しく説明した。
ライオネルは話の途中で何度もポカンと口を開ける。
それぐらいショッキングだったようだ。
「あの白い忍者が俺たちの王様だとはなぁ…………」
顎のチョビ髭をいじりながらライオネルは感嘆の声をもらす。そうして、なぜシオンが別の場所に連れていかれたのかという疑問が解消された。
だが、そうなると別の問題が浮上してくる。
「王様をつれていったところでよ。なんかいいことでもあんのか?」
「……それについてなんだが、俺はこんな風に考えてる」
「……聞かせてくれ」
ライオネルの催促で、リュウは自分の考えを提示する。
「……『革命』って言ってもいろんな意味があるが、この場合は『国の政権』を変えるってことだ」
「――――つまり。この王宮のどこかに潜む『革命軍』は、王様であるシオンを処刑するつもりなんじゃないか」